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真選組の女の子

原作: 銀魂 作者: 神崎しおり
目次

疑惑


「嫌だな、自分を助けてくれた人を捕まえるわけないじゃないですか」

アリスがにこりと笑うと、自然に桂も笑い出した。

「ところで桂さん。どうしてここに?」

「ああ、動物が好きなのでな。特に肉球がたまらない・・・・・・」

桂が動物好きを語りだそうとした瞬間

「アリスー!どこだー!?」

というタケルの声がした。


「あ、タケルさんが。私、そろそろ行くね。さようなら」

「タケルさん・・・・・・?」

「北条タケル、私のお父さんです。では桂さん。よければまたお会いしましょう」

にこやかに手を振りタケルのもとへ向かうアリスを桂は見送った。

「アリス!ここにいないから心配したじゃないか」

「ごめんねお父さん、ジュース、ありがと」

アリスはさりげなくタケルさんではなく、お父さんと呼んだ。

自分が忘れてるからお父さんと呼べないなんてつまらない意地はってたら、タケルさん、可哀相だし。と思っての言葉なのだろうか。

そんな2人の様子を静かに見守っていた桂だが、

「初めて会った時よりもすっかり可愛いらしくなったものだな」

と、揺れるツインテールの後ろ姿を見ながらほんのりと頬を染めた後、

「あの男、見覚えがあるな・・・・・・」

と静かに呟いた。


「そろそろ家に帰ろうか」

そうタケルさんが言ったので、私達は家へと向かうことにした。家にはすぐに到着し、中に入った。

「げほっ」

1人暮らしにしては広い部屋。でも、埃っぽい。思わず咳き込んでしまった。

「汚いところですまない。どれ、アリス。何かしたいことはあるか?」

「んー・・・・・・じゃあ、スポーツしたいな!」

「お、いいな。キャッチボールでもするか?」

キャッチボール・・・・・・なんだかしっくりこなくて、周りをきょろきょろすると、ミントンセットがあった。

「ミントンしたい!」

とアリスが言うので、もう1度2人は外に出ることにした。

外に出た瞬間、男に声をかけられた。


「あれ?ヅラさんじゃないですか。奇遇ですね」

「ヅラじゃない、桂だ。アリス殿。少しこの方を借りてもいいだろうか」

「え、別にいいですけど」

よくわからないけど、どうぞ。といったアリスの表情。

「待て!なんだいきなり!俺はお前なんか知らないぞ、何の用だ」

そんなアリスの表情とは裏腹に焦ったような顔をするタケル。

「まあ落ち着け」

そう言い桂は、アリスに聞こえないようにタケルを連れて場所を移動した。

「ん?待てよ。さっき桂と言ったか?お前まさか。あの桂か!?桂小太郎か!?」

「そうだと言ったらどうする?」


タケルは言葉が出せずにいる。

「なぜ貴様は、北条という偽名を使っている?本名じゃなかろう」

「そりゃ、攘夷浪士だから、偽名もひつよ・・・・・・」

「それは本当の理由ではなかろう。我々攘夷党を裏切った貴様が、攘夷浪士を名乗るな」

と桂が睨み、その表情に一瞬怯え、観念したようにタケルは喋った。

「・・・・・・あの小娘を、騙すためだ。真選組に記憶を失った女がいると耳にしてな。それで、記憶喪失を利用して、いたずらしようって寸法さぁ。桂さぁん、あんたも加勢する?」

けたけたとタケルは笑い出した。

「貴様、何を・・・・・・!そうはさせん」

「おっと、ここで邪魔なんかしたらどうなるかわかってるよな?周りの目もあの娘の目もある。すぐにでも幕府の犬が嗅ぎつけてくるかもなあ。それにあの娘は俺のことを信用しきっている」

「タケルさーん?早くミントンしましょうよー!」

娘が呼んでるんで行きますね、嫌な笑みを桂に向け、タケルはアリスの方へ向かった。

「あぁ、あと。爆弾なんかしかけようと考えてるのかもしれないが、そんなことしたらあの娘ごとおじゃんだ」

何もかも見通されてるような発言に桂は苦い顔をして、一旦その場を立ち去った。


「タケルさん?桂さんと知り合いだったんですか?何の話を?」

無垢な顔でアリスが聞いてくる。

「ああ、ちょっとな。さ、ミントンするか!」

というわけで2人はミントンを始めた。

何も知らないアリスは楽しそうにミントンをしている。タケルの思惑など知る由もなく。

「アリス、こうやってミントンしてると、昔みたいだなー」

ミントンなんてこんな小娘としたことがない、むしろ今日初めて会った。適当なことを言って、父親のふりをする。

出会い頭にあの日がどうのこうの言ったけど、もちろんあの日なんてない。

「んー、私は覚えてないんだけど、きっと楽しかったんだろうな」

アリスは笑顔でミントンをしながら答える。

しかしこの小娘、疑うということを知らないのか・・・・・・?アリスのあまりの素直さ、無邪気さにそう思い始めるタケル。


そしてこちらは真選組屯所内。

「なぁ総悟」

「なんですかィ土方さん」

「あいつが、北条アリスがここに来たのっていつ頃だ」

「もうだいぶ経ちますねィ」

「・・・・・・親父さんが探しに来たそうだが、本当に探してたってなら、捜索願の1つや2つきててもおかしくないと思わねぇか」

「そうですねィ」

「どうも怪しくないか、あの男」

「ですねィ」
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