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全部賭けようか

原作: その他 (原作:あんさんぶるスターズ!) 作者: RAMU
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惹かれる心

「ほら、ここが我輩の店じゃよ。」
「おい…ここって…この国で1番でけえカジノじゃね〜か!!!!!」
車から降ろされると、ネオンが煌々と照らす店の名前が目に入って驚愕する。
「なんじゃ急に…隣で突然叫ぶでない。そうじゃよ。このカジノ『ヴァンパイア』は、ありがたいことにこの国一のカジノとして名を馳せて貰っておる。」
「お前、こんなとこで俺様にディーラーさせようって?馬鹿じゃねーのか?!」
「いや、わんこならできるよ。ほれ、わんこにディーラーの仕事を教えてくれる先輩が出てきたぞい。」
零が指さした方向を見ると、キラキラとした金髪を靡かせながら、女の腰を抱いた男が前方から歩いてくる。
「朔間さ〜ん。遅いってば。俺忙しいんだよ?今夜はこの子と遊ぶ予定だったのにそれもおじゃんだし。ごめんね、また今度埋め合わせさせて?」
女の手のひらにキスをして手を振った男がこちらを興味無さそうに振り返る。
「で、俺が面倒見るのはこの子?君、名前は?読み書きはできる?」
「大神晃牙。読み書きは日常生活で困らないくらいにはできる。」
「ふーん、それなら良かった。読み書きからわかんないなんて言われたら、流石の俺もお手上げだし。あ、俺は羽風薫ね。カジノがどんな場所かも分かってるだろうし、まずは明日、簡単な仕事から教えてあげる。今日は顔合わせと簡単な業務の説明だけって約束だし。ほんとは野郎の相手なんてゲロゲロなんだけど、これも仕事だしね〜。」
このチャラチャラした、どうやら男嫌いであろう男に明日から仕事を教わるのかと思うと少し不安な気もするが、取り敢えず先程から零と軽口を言い合って仲良さそうにしているところを見る限り、悪いやつではないのだろう。
「挨拶はすんだかや?では家に行こうか。あ、言っておらんかったが、わんこには我輩の家に一緒に住んでもらうからの。」
「は?」
住むところは用意してくれると言ったが、まさかそれがこの男の家だとは思っていなかった。
屋根があるところに住めるだけありがたいが、この人を惑わすような目をした男と毎日共にいることになるなんて。
「一人暮らしのがよかったかや?しかし一人暮らしさせて、技術だけ盗んで逃げられてしまったりしてはかなわんからのう。わんこには我輩の店で、ディーラーをして欲しいからの。」
「分かってるよ、ただ予想してなかっただけ。屋根があるところに住めるんならなんでもいい。」
「おお、そうかえ。では我輩とわんこの愛の巣に帰ろうかのう。明日からよろしく頼むぞい、薫くん。」
「ゲロっゲロ、なんなの、わんちゃんって朔間さんの愛人だった訳?まあどうでもいいけど。はやく帰った帰った。」
「ちっげ〜よチャラ男!!!!!お前マジで覚えとけよ!!!!!???」
「こらこら、そう怒るでないよ。」
「うるせ〜!!!元はと言えばてめえが紛らわしい嘘つくからだろうが!!!!!」
怒りながら再び車に乗り込むと、零の住むマンションへと向かう。
辿り着いてカジノの時と同じく唖然としてしまった。なんでも最上階のワンフロアが丸々朔間零の所有物だと言うではないか。
何やら説明されているが、全く頭に入らないままふかふかの絨毯の上を歩かされて、零の住まうフロアに向かう。
エレベーターが到着して、自分の部屋に案内される。
「わんこの部屋はここじゃよ。特に使っとらんし、定期的にお手伝いさんに掃除して貰っておるから綺麗じゃとは思う。好きに使って構わんからの。ただし、我輩が家にいる時は外出する時必ず許可を取りに来ることじゃ。分かったかえ。」
「あ、ああ……。」
「ん?どうかしたのかえ?」
「いや、こんなにでけえ部屋、っていうか、一人で住む部屋とか初めてでびっくりした。」
「わんこ、一人部屋に住んだことないのかや?」
「…俺様、孤児院の出身だから、いつも弟や妹達と寝てたんだよ。」
「……もしかして我輩、わんこの柔らかい部分に土足で踏み入ってしまったかえ?…すまんかった。」
「……別に、気にしてねえよ。」
ふわりと抱きしめられて、背中をポンポンと優しく叩かれると、少し低い体温が伝わってきて、なんだか無性に泣きそうになった。
「お前との賭けに応じたのだって、俺、孤児院に仕送りするお金が欲しかったからで、……っ」
「そうかそうか、わんこはいい子じゃのう。大変じゃったろうに、家族想いのいい子じゃ。これからは我輩のところで稼いだお金を、孤児院に送っておやり。」
しばらく抱きしめられたまま、零の胸で涙をこぼし続けた。
やがてそっと低い体温が離れて、なんだかそれが少し寂しく感じた。
「どれ、落ち着いたかえ?取り敢えず我輩はお風呂の準備をしてくるからの、わんこはソファにでも座って待っていておくれ。必要な家具とかもあとで教えてくれたら調達するぞい。」
熱くなった頬を隠しながら、零を見送る。
なんだかここへ来る前にチャラ男に言われたからか、余計に零のことを意識してしまう。
俺は、この人に惹かれているのだ。
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