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全部賭けようか

原作: その他 (原作:あんさんぶるスターズ!) 作者: RAMU
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拾われわんこ


「おお!やる気になってくれてよかったぞい。」
嬉しそうに手を叩く男を見て、気が抜けそうになる。先程から思っていたのだが、こいつのこの奇妙な話し方も相手を油断させる手法のひとつだったりするのだろうか。
「やるならさっさとやろうぜ。」
それならば翻弄される前に勝負してしまう方がいいだろう。その方がイカサマもしにくくなる。
「ふふ、随分自信があるようで我輩嬉しいぞい。さ、テーブルについておくれ。」
「……いや、さっきイカサマがどうとか言ってたし、そのテーブルでやるのはフェアじゃねえだろ?そっちの一番奥のテーブルはどうだ?」
「おや、案外疑り深いんじゃのう。お主、賭け事の才能あるぞい。」
「そりゃどーも。」
周りの男たちを押し退け、一番奥のテーブルにつく。
「では、はじめようか。」


結果から言うと、俺は朔間零にボロ負けした。それはもう、完璧な敗北だった。
圧倒的な強さだった。まるで、神様みたいにどんどん揃っていく手札にゾッとした。
「さて、我輩の勝ちじゃのう。これで晃牙には我輩の言うことをひとつ聞いてもらうぞい。」
今のうちにトンズラしてしまおうかとも思ったが、生憎選んだのは店の一番奥のテーブルだ。屈強な男たちが何人もゲームを見守っていたから、逃げるのには分が悪い。
「…分かったよ。それで、何すればいいんだよ。」
「我輩の店で、ディーラーとして働け、晃牙。」
「…我輩の店?ディーラー?」
てっきり奴隷にされたり不当な扱いを受けることになるだろうと思っていたから、ディーラーという言葉に目が点になる。
「そうじゃ。我輩少し離れた街でカジノを経営していての。…晃牙には才能がある。住むところは用意するし、教育は全て我輩の部下が施そう。我輩の店で働いて欲しいのじゃ。勿論給料はそれなりに出すぞい。」
願ってもないことだった。カジノディーラーなんてかなりの高給取りだ。恐らく自分が普段手にしているお金の5倍以上がひと月で手に入る。
それに、この男は晃牙の住むところまで用意すると言った。今以上の暮らしと給料、これで孤児院を救えると思えば、悩む必要などなかった。
「分かった、お前のところでやってやんよ、ディーラー。」
「ふふ、では早速行こうか。荷物をまとめにゆくぞ。」
「いや、俺に荷物なんてね〜よ。このままでいい。」
「おや、そうなのかえ?では1から用意しなければならぬのう。まずはその身なりをどうにかしたいところじゃの。」
腕を掴まれて店の外に出ると、この辺りじゃ見たことも無いような黒塗りの高級車がいつの間にか止まっている。
車と同じ色のスーツを纏った男がドアを開けると、零に後ろから押し込まれる。とてつもなく広い車内にどうすればいいか分からず突っ立っていると、零に座れと促される。
「斎宮くんの店まで頼む。」
直ぐに車は出発して、零が隣に腰掛ける。
「……あのさ」
無言の空間が気まずくて、零に話しかけた。
「なんじゃ?」
「なんで俺に声掛けたの」
「あの中で一番、晃牙が綺麗じゃったからじゃよ。」
「なっ……」
まさかそんなことを言われるとは思っておらず、顔が熱くなる。
「それに、我輩の好みじゃったしのう。わんこみたいで。」
「は?犬扱いするんじゃねーよ!」
「ふふ、そうやってキャンキャン吠えるとこ、犬っぽいぞい。ほれ、よーしよし。」
「だああ!頭撫でんな!ガルル」
それからも店に到着するまで、零には散々からかわれた。主に犬扱いされるといったことで。
車から降りると、ピンクの髪の麗人が待ち構えていた。
「零!10分遅刻だよ。全く君はすぐ遅れるんだから。ほら、そっちの銀髪の子の服を仕立てればいいんだろう?ふむ、なかなかの容貌じゃないか。はやくしたまえ。」
「すまんすまん、少し道が混んどったんじゃよ。良いじゃろう、わんこと言うんじゃ。男前にしてやっておくれ。」
「誰がわんこだ!俺様は大・神・晃・牙だ!!!」
「ふむ、美しいのは容姿だけで中身はまるで昔の君みたいじゃないか、零。」
「な、何を言っとるんじゃ斎宮くん。ほれ、我輩ちょっと店に電話してくるから、わんこのこと頼んだぞい。」
「ふん、時間に遅れた腹いせだよ。では晃牙とやら、こちらで採寸をするから来るんだよ。」
「あ、はい……。」
突然初対面の人間、それもなんだか気難しそうな男と二人きりにされて緊張してしまう。
隅から隅まで採寸されて、解放されたのは1時間以上経った後だった。
「ふむ、衣装のデザインは大体決まったから、後は零に確認させてこれでよければ一週間後には出来上がるよ。」
「ありがとうございます。」
「わんこ〜〜いい子にしておったかえ?おお、もう採寸は終わったみたいじゃの。」
「随分長電話じゃないか。ほら、デザインができたから確認してくれたまえ。」
「ふむ、さすが斎宮くんじゃのう。わんこにぴったりじゃ。ではこれで頼む。」
「分かった。一週間後には完成するから、取りに来てくれたまえ。」
「了解したぞい。さて、次は我輩の店に挨拶に行こうか、わんこ。」
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