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全部賭けようか

原作: その他 (原作:あんさんぶるスターズ!) 作者: RAMU
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愛していてね

零の運営するカジノで働き始めてから数ヶ月が経った頃だった。
「ねえ、わんちゃん、朔間さんって彼女いるって話、ほんとなの?」
「は?」
「最近もっぱら噂になってるんだよね。なんでも黒髪ロングの清楚系美女らしくって、俺も一目お目にかかりたいよ〜。」
それはこの数ヶ月で零のことが好きになった自分にとって、衝撃的なひと言だった。
「え、でも、噂なんだろ?それに俺もあいつが女と歩いてるところなんて見たことねえし……。」
「わんちゃんも見たことないのか〜。でも今日女の子たちがさあ、昨日ホテルから出てきたところを見たって言ってたからこれは確実だと思うんだよね。」
なんだかとてつもなく嫌な気持ちになって、下を向いて立ち尽くしていると、羽風センパイが慌てたように俺の肩を揺さぶった。
「ちょっとわんちゃん!?なんで泣いてんの!?……バックヤード行くよ。」
そうか、俺は泣いてたのか。クラクラとまとまってくれない頭で腕を引かれながらバックヤードに連れられる。ソファに座らされて、羽風センパイにハンカチを差し出された。
「もしかしてわんちゃん、朔間さんのこと好きなの?」
あまりにストレートな質問に、心臓が音を立てて早くなる。
「…そうだよ、俺は、朔間先輩が好き。…わりいな、羽風センパイこういうの嫌いだろ。いつもゲロゲロって言ってるし。気持ち悪かったら今後俺に近づかなくていい。仕事もだいぶ覚えてきたし、これからは独学でどうにかするよ。」
はあ、と大きな声でため息をつかれて、ビクリと肩を揺らす。やはり気持ち悪かったのだろうか。
「ちょっと、最近は俺これでも後輩のこと可愛いな〜なんて思い始めて来たんだよ?アドニスくんだって、晃牙くんだって。ごめんね、辛い話しちゃって。噂話だったのに、俺も言い過ぎちゃった。」
「…いや、羽風センパイは別に悪くねーよ。それに、朔間先輩だってどうせ女が好きで、男になんて興味ないだろ。俺様が勝手に不毛な恋をしてるだけだから、あんたは気にしなくていい。」
「わんちゃん、そうやって朔間さんの気持ち決めつけて、諦めちゃっていいの?こんなに泣くくらい、朔間さんのこと好きなんでしょ?」
「…っ、よくねえ、よくねえけど……!でも、俺にはどうしようもできない、告白して、お前みたいなホモとはもう一緒に住めないなんて言われるかもしれない、そんななら、言わないで一緒にいる方がいい……女ができたって、そいつとほんとに一緒になるまでは、俺の傍にいてくれるだろ……。」
すんすん鼻を鳴らして羽風センパイの腕に縋り付く。センパイは俺の背中をさすってくれて、少しずつ落ち着いてきた、その時だった。
ノックも無しに突然扉が開かれて、思わず羽風センパイの後ろに隠れる。
こんなにみっともない泣き顔を見られるのなんてごめんだった。
「……は?晃牙、なにしてんだよ。…ちょっとこっちにこい。」
聞こえてきた声は、朔間先輩の声で。なんだか喋り方もいつもとは違う高圧的なものになっていて、指先から冷えていくような感覚。
もしかして、さっきまでの話が聞こえていたのだろうか。気持ち悪いと、もう俺に近づくなと、朔間先輩に言われてしまうのだろうか。
「……やだ、行きたくない。羽風センパイといる。」
「ちょ、ちょっと晃牙くん……!」
「あ?そんなに薫くんのことが好きなのかよ、お前。…ってか顔ぐらい見せて、ちゃんと俺の方向いて話せ。」
「……やだ。」
「わ、わんちゃん、俺ちょっとそろそろ戻らなきゃ行けないから。朔間さんもそんなんじゃないってばそんなに睨まないで……!…とにかく、1回話し合ってみるといいよ、晃牙くん。じゃあね!」
俺の腕を勢いよく振りほどいて、羽風センパイは逃げ出してしまった。ちくしょう、可愛い後輩だって言ってたじゃねーか。俺様と朔間先輩だけ残して逃げるんじゃねえよ。
心の中で悪態をつきながら、自分の腕で必死に顔を隠していると、朔間先輩に無理やり開かされる。
「や、やだやめて、見んな……っ!」
「晃牙、泣いてたの?薫くんに何かされたとか?」
「ちっ、ちがう……!羽風センパイは何もしてなくて、えっと、おれが、俺が悪いから!」
「なに?薫くんに抱いて欲しくて泣いてせがんでたとか?わんこ、俺がいるのによくそんな真似できたなあ。」
「は……?違う、違うって……!朔間先輩勘違いしてるっ……!」
「何が勘違いなんだよ、腕まで抱いて。」
「だって、俺が好きなの、……朔間先輩、だもん…。」
「は?」
俺の腕を掴んでいた手から力が抜けて、ようやく自由になる。あまりに強い力で掴まれていたせいで、腕がジンジン痺れた。
「……気持ち悪いだろ、ごめん、忘れて。家も出てくし、ここで働いてるのも嫌なら辞める。」
「いや、は?ちょっと待てよ。え、わんこ、我輩のこと好きなの?」
「……今そう言ったじゃねえか。」
「我輩も、わんこのこと……いや、晃牙のことが好き。」
「え……。」
「我輩たち、どうやらすれ違っていたようじゃのう。」
とんだハッピーエンドだ。
お互い勘違いして、一人で歩いてた。
「は、はは……なんだよそれ。黒髪ロングの美女とやらはどうしたんだよ。」
「あ、それ、噂になっとるようじゃが、お主にも以前会わせた役者の日々樹くんじゃよ。今度の役の練習に付き合わされておってのう。」
「……俺、朔間先輩と付き合っていいの?」
「当たり前じゃよ。」

結局その日はそのまま二人で愛し合って、後日羽風センパイにそのことを報告したら笑われてしまった。

きっとこれから、もっとお互いのことをしって、俺たちは恋人らしくなっていけるのだろう。
願わくば、永遠に愛してほしい。
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