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ここではないどこかで神をしのぐ謀

原作: その他 (原作:PSYCHO-PASS サイコパス) 作者: 十五穀米
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「この階のトイレは一カ所です。一番奥、そしてあるのは女性トイレですね。地下は男性と女性のトイレが交互に設置されています」
「さすがに俺が女子トイレっていうのはな」
「今日は休館日ですから、問題ないです。私がといいたいところですが、私には関知できませんので。秀ちゃんを連れていれば、もし誰か……警備の人などと接触してもごまかせるのでは?」
「わかった。その策でいこうか」
 地下駐車場を突っ切りトイレがある入り口へと向かう。
 入り口で朱は待機、征陸が秀ちゃんを連れ中に入った。
 ふたりはそう時間をかけずに出てくる。
「ここじゃない。次にいこう」
「次はこの真上の男性トイレですね」
 しかしそこも空振り、次の女性トイレ、男性トイレと確認すると駐車場区域が終わり、売場のあるフロアへと進む。するとだいたい三カ所から四カ所にトイレがあり、それをひとつひとつ確認する。
 その数カ所も男女ともにあり、階によっては子供用のトイレもある。
 普段意識しないが、こうして改めてトイレ巡りをしていると、かなりの数があることを思い知る。

 一方、宜野座たちは……

「ギノ、どっちが当たりを引いたと思う?」
 エレベーターで屋上まで向かう最中、狡噛が訪ねる。
 あえて聞かなくてもいいことを聞いてくるということは、間が持たないのだろう。
「どっちもどっちじゃないか? 屋上も地下も時間帯によっては人が集中する」
「逆をいえば、人のこない時間帯もあるってことだな」
「わかっているなら聞くな」
「だが、あっちには秀ちゃんがいる分、もっと正確な時間帯がわかるかもしれない」
「じゃあ、こっちがハズレだな」
「だが、こっちがハズレでは困る。ギノ、あの監視官を危険な目に晒したくはないだろう?」
「当然だ。おまえ、なにか隠しているだろう? 吐け」
「吐けっていわれて、はいそうですかって吐けるか。ただな、警察もまだ握っていない情報を俺は持っている」
「刑事と連携するんじゃなかったのか?」
「それはする。だが、情報開示のタイミングは今じゃない。いや、打ち明けてもよかったんだが、どうもきな臭くてな。ネックは縢秀星だ。俺は、あの子がすべてを握っているように感じる」
「感じるって子供だろ」
「だからだ、ギノ。子供だから気を許す。子供だから対象から外す。人の心理っていうものはそういうものだ。それを逆手にとれば、これほど安全な隠れ蓑はないって、思わないか?」
「じゃあなんだ、おまえはずっとあの子を疑っていたのか?」
「そうではないが、まあ、今の話を聞いちゃ、そうは思わないか。まあ、あんたたちに迷惑はかからないよう動くから、その辺は安心していいぜ、ギノ」
「どうだかな。……っと、着いたか。屋上のトイレは一カ所だ。俺は外で見張っている。中の確認を頼む」
「ああ……といいたいところだが、女性トイレもか?」
「女装ホロなんだ、問題はない。あるとしたら、男性トイレだな」
「ホロ、はずしていいか?」
「ダメだ。休館日だ、なんの問題もない」

 宜野座たちが屋上から捜査をはじめた頃には、朱たちは地下食品フロアの捜索にはいっていた。
 問題もなく終え、次は地上一階のフロアを調べるために移動する。
 かなりの階を捜索、地上四階のこのショッピングモールの半分を終えたことになる。
「コウたちも屋上を終え、四階フロアの捜査に入っている頃だな。かなり確認したが形跡はない。こりゃ、別の想定も考え直さなくてはならないかもしれないな」
 征陸が最悪な結末を迎えた時のことを考えなくてはと言うと、朱はふとなにかを思いだし、案内図を確認した。
「征陸さん。このショッピングモールには別館があります」
「別館?」
「はい。隣接しているのですが、経営管轄が違うようですが、集客イベントなどは共同でやっているようです。別館、映画館です。映画館のトイレなら……」
「ああ、そうだ。上映時間は使用される頻度が少なく、途中で出て行く人もいる、上映時間も作品によって違い、いくつもの上映が時間差で……可能性はあるな。どうする、嬢ちゃん」
「行きましょう。宜野座さんたちが四階フロアを確認しているのなら残りの三階・二階もお願いして、私たちで別館を。移動と確認時間を足して、同じくらいかと思います。一度外にでないといけないので、移動時間がかかります」
「かまわない。それでいこう」
「移動しながら私が宜野座さんに報告します。急ぎましょう」
 朱は秀ちゃんの手を征陸に託し、先行しながら宜野座に連絡をいれた。
 秀ちゃんのいる方が当たりかもしれないと思っている宜野座たちは自分たちが追いつくまで待てという。
 しかし、効率が悪いという理由で押し切った。
 代わりに、朱は須郷と落ち合うことにする。

「自分が加わって大丈夫ですか?」
 合流した須郷は開口一番、そんなことを言う。
「私だけでは征陸さんと秀ちゃんを守れる自信がないから。向こうの捜査が空振りだったら、こっちに合流しないで車で待つように指示を出しました」
「そうですか。宜野座さんは守るでしょうが、もうひとりは聞き入れそうにもないですね」
「そこは、宜野座さんに頑張ってもらうしかないわ。急ぎましょう」
 もう視界には別館が見えているが、休館日ということもあって通り抜けができないようになっている。
 迂回しなくてはならず、思った以上に時間がかかってしまった。
 別館の映画館は三階と四階に位置している。
 一階は映画館専用の駐車スペース、二階には商業スペースとなっていたが、朱はそれらを無視して映画館を目指した。

「映画館は休館ではないんですね。どうしますか、監視官」
 体力が一番ある須郷が先行して様子を見て戻る。
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