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山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
目次

愛していた


「国姫、無事か?」
「う、うん。擦り傷くらいだよ」

「主、大広間にて祟り神と遭遇した!」
山姥切が端末で主と連絡を取っている。
皆も戦闘ができるように刀を抜いた。
「あぁ、あぁ、わかった。皆、こいつを逃がさないように時間を稼ぐぞ!」
「おう!」
「はい!」
私も刀を抜いてスライムのような物体へ向ける。
すると驚くことが起こった。
何がきっかけなのかわからないがスライムのような物体が形を変えていき山姥切長義の姿を形作る。
「なんだって?!」
「まさか自我を残ってるのか?」
私は闇色をした山姥切長義から目を離せなかった。
なぜなら山姥切長義も私を見ていたからだ。
その口が開く。

「……く、にひ……ろ……」

彼は私を山姥切国広だと認識している?
思わず刀を下ろして一歩近づいてしまった。
「国姫!」
「っ!!」
長義に呼ばれて慌てて距離を取り直す。
そうだ、目の前にいるのは山姥切長義じゃない。祟り神なんだ。
不用意に近づいたら危ない。

「どこだ……くにひろ……どこ、にいる……?」

「なんだ?山姥切国広を探しているのか?」
視線が彷徨うようにあたりを見回し始める。
どうやら私を見つけたわけではないようだ。
でも、言葉を発しているのなら対話も可能なのでは?と思ってしまう。
「長義……俺だ。国広だ!わからないのか?」
思わず声をかけてしまった。
山姥切長義の視線が再び私を見る。
「……ちがう……くにひろ、ちがう……」
その言葉にドキリとした。
確かに中身と外見は違う。でも魂は半分彼のものだ。
「違くない!俺は国広だ!長義!!」
「ちがう!ちがうちがうちがうぅうう!!」
狂ったように違うと連呼し始める。
やっぱり対話は無理なんだろうか。
山姥切長義は闇色に染まった刀を抜いて斬りかかってきた。
「っ!!」
とっさに刀を横にすることで受け止める。
でも練度の違いか男女の力の差かすぐに圧され始めた。
「俺は覚えているぞ。お前が手入れ用の資材を持って帰ってきてくれた時の事を!!」
「?!」
息をのむような音が聞こえて力が緩んだ。
その隙を逃さず私は刀ごと山姥切長義を弾き飛ばす。
「……くにひ、ろ……?」
まだ信じ切れていないようなのでもう一つ、長義にも話してない事を言う事にする。
「たまたま手に入った酒で酔った勢いで俺に好きだと言ったのはお前じゃないか!」
「う、そだ……なんで、それは、国広は俺が折ったはず……!」
だいぶ意識がはっきりとしてきたのかしっかりと話だした。
「でも俺は良い縁に恵まれてここにいる。お前を助けるためにここにいるんだ!」
「そう、か……」
私の姿を見て満足でもしたのか山姥切長義は刀を落とす。

ピシリと嫌な音が聞こえる。

「?!」
まるで陶器のように山姥切長義の体にヒビが入っていく。
「長義!!」
「お前が無事、とは言い切れないかもしれないけど無事でよかった……」
「おいばか、これを止めろ!!もうすぐ主たちが助けに来てくれるから!!」
私が何を言っても聞く気が無いようで山姥切長義は微笑んでみせた。
その視線が私から長義に向く。
「俺の代わりに、守ってくれ」
「言われなくても守るし、この子は俺のものだ」
「は?!」
「そうか、なるほどな」
「待って待って、私を抜きに話をしないでくれないかな???」
すごい事を言われている気がするんですが。
というか私まだ返事してないよね長義?!
二人は何か通じ合ったりでもしたのか。
同じ山姥切国広を好きになるってあたりは一緒だな!
しかし、困った私の目の前で山姥切長義のヒビ割れは広がっていく。
「やだ、いやだ……!長義!!」
思わず隣の長義に縋りついて叫ぶ。
「しょうがないだろう?むしろ俺が自我を取り戻せたことが奇跡だったんだ」
「でも……」
「でもは無しだ国広」
諭すように言う山姥切長義は優しい目をしていた。

「あの時は酒の勢いを借りたが、今は違う。愛していた。幸せになれ国広」

パキンと刀の折れる音がする。

同時に私から何かが抜けていくような感じがして体の力が抜けた。
慌てたように長義が支えてくれたから膝から崩れずに済む。
すると山姥切長義は目を見開いて宙を見て嬉しそうに
「そこにいたのか。国広」
そう言って砕けて消えてしまった。
私の中にある喪失感はもしかしたら山姥切国広の魂が出て行ってしまったのかもしれないと気付く。
山姥切長義と一緒に消えてしまったのだと。
きっとこれが彼のもっとも叶えたい望みだったのだ。
「大丈夫か国姫?」
「だい、じょうぶ……」
「大丈夫には見えないな。祟り神も消えたことだし一足先に帰ろう」
「え、でも……」

「ひぃ……はぁ……はぁ……」
「?!」
微かに聞こえた吐息に全員が警戒する。
何事かと思ったら山姥切長義が消えた跡に傷だらけの審神者が転がっていた。
どうみても瀕死の重傷だ。
このままにしておけば助かるまいと誰もが思った。
「こいつが全ての元凶か……」
長義がそう言った。
すると声に反応したのか審神者がどこにそんな体力が残っていたのかと言うくらい暴れ始める。
「ひぃいいい!長義!長義ぃいいいい!!!」
そう言って何かの印を結んだ。
途端にバチリと音がして私から少し離れた長義の体が吹き飛ぶ。
「長義?!」
「ひゃはは!死ね!死ねぇええええ!!!ごふっ!」
狂ったように叫んでいた審神者は血を吐いて動かなくなる。
そんなことより長義は大丈夫なのだろうか。
私は慌てて長義の元へ駆け寄る。
地面に倒れた長義の意識は無くて、掛けられた術の効果なのだろうか首もとに赤黒い痣ができていた。
苦しそうに息をしている。
「長義!長義!!」
「国姫!落ち着け!!」
「でも山姥切、長義が!」
いくらゆすっても目を覚ます様子が無い。
怖い。

私は長義まで失ってしまうの?
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