チャプター2:壊れゆく日常
桃奈は危機感を感じていたとはいえ、1キロほど逃げたのだから安心していた節があった。
たとえ巨大ダコとはいえ、千切って投げた鉄片がここまで飛んでくるわけないと思っていたのだが、巨大ダコが一筋縄ではいかないことを今思い知らされた。
奴は桃奈のいる場所までコンクリート片を投げてきたのだ。もし人間ならオリンピックで砲丸投げをやるべきだ。
桃奈はあまりの恐怖と疲労でその場に崩れ落ちる。泣き出してしまいたいほどの恐怖で、もうどうにかなってしまいそうな精神状態だった。
さらに運の悪いことに、巨大ダコはかなりの回数鉄片を投げていたためか行動に慣れてしまい、さっきまで触手1本でやっていたことを今度は触手を2本も3本も使ってやり始めた。当然そんな事になると、ペースも速くなり陸の被害は瞬く間に拡大する。
桃奈はそんな巨大ダコの手際の良さに引いた。そして、自分の人生の終わりを覚悟した。
しかし、そんな手際の良い行動もすぐに終わってしまった。巨大ダコの行動の効率が上がったがために辺りのコンクリート片や鉄片の減りが早く、すぐさまなくなってしまったのだ。
巨大ダコは一時は困ったが、すぐさま別の行動に移した。なんと、海深くまで触手を伸ばし何か投げられるものを探し始めたのだ。
数秒ほど探っていたところ、何か見つけたらしく2本の触手で巨大な物体を引っ張り上げ、陸へ投げた。
物体は巨大な音を上げ、桃奈の20メートルほど先の民家に激突した。土煙が辺りを包む。桃奈はあまりにも巨大な物体が何だったのか、土煙を我慢しながら、近づいてみる。
銀色に光るそれはまるで人間のようだった。もっと目を凝らしてみるとその正体が何なのか理解できた。
巨大ロボットだ。男の子が見るようなアニメでやっているのを見かけた事がある。
四角い顔で目と思わしき部分が緑色のラインななっている。
桃奈はこんなハイテクロボットが実在していることに驚きを隠せなかった。
そう驚いたという事はつまりこの巨大な鉄片がモニュメントや像なんかではなくロボットである事に確証を持てたということであるが、何故あの鉄片が本物のロボットである事に桃奈は気が付いたのか。
理由は簡単、投げられる時にロボットの関節が動いたのを偶然目撃したからだ。
本来このロボットが像であるならばポーズが変わらないはずであるし、今自分が見ているロボットのポーズは像にしてはダサすぎる。ぐったりと足を組んで座っているのロボットのモニュメントなんてはっきり言ってダサい。
桃奈はこのロボットなら巨大ダコを退治する事ができるのではないかと考えた。
いつもの桃奈なら考え付かない常識外れの考えであるが、パニックに陥っていた桃奈に常識は関係なかった。
桃奈は早速ロボットに駆け寄ってみる。すると、胸が操縦席になっていることに気付いた。さらに運良く操縦席の扉が開いている。
桃奈はロボットによじ登って操縦席に辿り着くと何も迷わず乗り込んだ。
ロボットはコンパクトな作りになっているため、操縦席も当然狭い。ただそんな事はお構いなしだ。
とにかく今はさっさとロボットを起動させて巨大ダコを退治するのが先だ。
桃奈は起動スイッチがどこか探す。スマホなど電子機器の起動スイッチは決まって果実を想起させるような、丸の上にアンテナが刺さったようなマークである事を覚えていたので案外早く見つける事ができた。
起動スイッチを押してみる。すると、自動的に操縦席の扉が閉まり、桃奈の目の前にあるモニターが点灯する。
「ブレガイザーシステムを起動します」
突然、女性の声が聞えた。アナウンスの電子音声である。
「初期起動のためパイロットの情報を登録します」
桃奈は電子音声に従う。すると白いレーザーが桃奈を舐めるように照らす。
「情報登録完了。続いて、ブレガイザーの操縦知識を直接脳内に書き込みます」
桃奈は焦る。今からとんでもない事が始まるのではないかと思うたびに冷や汗が出る。
次の瞬間、今まで感じた事のないような頭痛を感じ、悶え始める。そして体感時間およそ5分。ようやく頭痛が引いた。
痛みがなくなった瞬間、桃奈は自分は頭がおかしくなったのかと思った。操縦席にあるスイッチの全てが名前や役割と共に思い浮かぶのが最大の理由だ。
「最後にブレガイザーを操縦するためのエネルギーをパイロットの身体に充填します」
桃奈は何を言っているのか全部理解できる。ブレガイザーというのはこのロボットの名前。そして、そのブレガイザーを操縦するためにはミレニウムと呼ばれるエネルギー物質を身体に充填する必要がある。
その知識が頭に浮かび出てきた時に、桃奈は顔が真っ青になった。エネルギー充填の概要と同時に出てきた嫌なデータが桃奈を震え上がらせる。
なんと、このエネルギー充填の過程で試した人が皆死んだそうだ。自殺行為だ。死にたくない。
桃奈はブレガイザーを強制終了しようとするが、次の瞬間、強制終了できないという情報が頭に浮かび、涙を流す。
桃奈は知識どおりに操縦レバーを手に握る。するとチクッと針に刺されたような痛みが走り、何かが身体に入ってくる。これがミレニウムである。
桃奈は断末魔のような叫びを上げる。本当に死んでしまうのではないかという思いで悶え続けた。
さらに自分の中の何かがボロボロと崩れ去るような気がする。そして目の前の景色に段々色が付いてくるような妙な感覚になった。
エネルギーを充填されるうちに自分の中で崩れ去ったものがなんなのか分かった桃奈は、突如言葉を放った。
「これが自信……! 今ならアイツを退治できる! 行くぞ無敵超人ブレガイザァァァァッ!」
たとえ巨大ダコとはいえ、千切って投げた鉄片がここまで飛んでくるわけないと思っていたのだが、巨大ダコが一筋縄ではいかないことを今思い知らされた。
奴は桃奈のいる場所までコンクリート片を投げてきたのだ。もし人間ならオリンピックで砲丸投げをやるべきだ。
桃奈はあまりの恐怖と疲労でその場に崩れ落ちる。泣き出してしまいたいほどの恐怖で、もうどうにかなってしまいそうな精神状態だった。
さらに運の悪いことに、巨大ダコはかなりの回数鉄片を投げていたためか行動に慣れてしまい、さっきまで触手1本でやっていたことを今度は触手を2本も3本も使ってやり始めた。当然そんな事になると、ペースも速くなり陸の被害は瞬く間に拡大する。
桃奈はそんな巨大ダコの手際の良さに引いた。そして、自分の人生の終わりを覚悟した。
しかし、そんな手際の良い行動もすぐに終わってしまった。巨大ダコの行動の効率が上がったがために辺りのコンクリート片や鉄片の減りが早く、すぐさまなくなってしまったのだ。
巨大ダコは一時は困ったが、すぐさま別の行動に移した。なんと、海深くまで触手を伸ばし何か投げられるものを探し始めたのだ。
数秒ほど探っていたところ、何か見つけたらしく2本の触手で巨大な物体を引っ張り上げ、陸へ投げた。
物体は巨大な音を上げ、桃奈の20メートルほど先の民家に激突した。土煙が辺りを包む。桃奈はあまりにも巨大な物体が何だったのか、土煙を我慢しながら、近づいてみる。
銀色に光るそれはまるで人間のようだった。もっと目を凝らしてみるとその正体が何なのか理解できた。
巨大ロボットだ。男の子が見るようなアニメでやっているのを見かけた事がある。
四角い顔で目と思わしき部分が緑色のラインななっている。
桃奈はこんなハイテクロボットが実在していることに驚きを隠せなかった。
そう驚いたという事はつまりこの巨大な鉄片がモニュメントや像なんかではなくロボットである事に確証を持てたということであるが、何故あの鉄片が本物のロボットである事に桃奈は気が付いたのか。
理由は簡単、投げられる時にロボットの関節が動いたのを偶然目撃したからだ。
本来このロボットが像であるならばポーズが変わらないはずであるし、今自分が見ているロボットのポーズは像にしてはダサすぎる。ぐったりと足を組んで座っているのロボットのモニュメントなんてはっきり言ってダサい。
桃奈はこのロボットなら巨大ダコを退治する事ができるのではないかと考えた。
いつもの桃奈なら考え付かない常識外れの考えであるが、パニックに陥っていた桃奈に常識は関係なかった。
桃奈は早速ロボットに駆け寄ってみる。すると、胸が操縦席になっていることに気付いた。さらに運良く操縦席の扉が開いている。
桃奈はロボットによじ登って操縦席に辿り着くと何も迷わず乗り込んだ。
ロボットはコンパクトな作りになっているため、操縦席も当然狭い。ただそんな事はお構いなしだ。
とにかく今はさっさとロボットを起動させて巨大ダコを退治するのが先だ。
桃奈は起動スイッチがどこか探す。スマホなど電子機器の起動スイッチは決まって果実を想起させるような、丸の上にアンテナが刺さったようなマークである事を覚えていたので案外早く見つける事ができた。
起動スイッチを押してみる。すると、自動的に操縦席の扉が閉まり、桃奈の目の前にあるモニターが点灯する。
「ブレガイザーシステムを起動します」
突然、女性の声が聞えた。アナウンスの電子音声である。
「初期起動のためパイロットの情報を登録します」
桃奈は電子音声に従う。すると白いレーザーが桃奈を舐めるように照らす。
「情報登録完了。続いて、ブレガイザーの操縦知識を直接脳内に書き込みます」
桃奈は焦る。今からとんでもない事が始まるのではないかと思うたびに冷や汗が出る。
次の瞬間、今まで感じた事のないような頭痛を感じ、悶え始める。そして体感時間およそ5分。ようやく頭痛が引いた。
痛みがなくなった瞬間、桃奈は自分は頭がおかしくなったのかと思った。操縦席にあるスイッチの全てが名前や役割と共に思い浮かぶのが最大の理由だ。
「最後にブレガイザーを操縦するためのエネルギーをパイロットの身体に充填します」
桃奈は何を言っているのか全部理解できる。ブレガイザーというのはこのロボットの名前。そして、そのブレガイザーを操縦するためにはミレニウムと呼ばれるエネルギー物質を身体に充填する必要がある。
その知識が頭に浮かび出てきた時に、桃奈は顔が真っ青になった。エネルギー充填の概要と同時に出てきた嫌なデータが桃奈を震え上がらせる。
なんと、このエネルギー充填の過程で試した人が皆死んだそうだ。自殺行為だ。死にたくない。
桃奈はブレガイザーを強制終了しようとするが、次の瞬間、強制終了できないという情報が頭に浮かび、涙を流す。
桃奈は知識どおりに操縦レバーを手に握る。するとチクッと針に刺されたような痛みが走り、何かが身体に入ってくる。これがミレニウムである。
桃奈は断末魔のような叫びを上げる。本当に死んでしまうのではないかという思いで悶え続けた。
さらに自分の中の何かがボロボロと崩れ去るような気がする。そして目の前の景色に段々色が付いてくるような妙な感覚になった。
エネルギーを充填されるうちに自分の中で崩れ去ったものがなんなのか分かった桃奈は、突如言葉を放った。
「これが自信……! 今ならアイツを退治できる! 行くぞ無敵超人ブレガイザァァァァッ!」
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