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無敵超人ブレガイザー

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: プリズムの使者
目次

チャプター3:守り抜く日常

「これが自信……! 今ならアイツを退治できる! 行くぞ無敵超人ブレガイザァァァァッ!」

 桃奈はエネルギーの充填が完了したのを確認したのと同時にレバーを前に押した。

「ブレガイザー、戦闘体勢に入ります」

 電子音声が鳴り響くとともに、ブレガイザーはその場に立ち上がる。頭の中の情報によるとブレガイザーは全長10メートルらしい。



 ブレガイザーは大きくジャンプをして巨大ダコに跳び蹴りを決めた。

 巨大ダコは突然の攻撃にうろたえる。桃奈は蹴りがしっかり入ったことを確認すると、続いてレバーから手を放し、隣のテンキーで番号入力する。

「武器を出すときは番号を指定! 今一番有効なのは近距離用のアイアンロッド!」

 桃奈は頭の知識を頼りに、武器を出すための手順を踏む。

 4番を指定するとブレガイザーは右太ももから小さな円柱状の物体を取り出してスイッチを入れた。

 すると物体のの円の面から鉄の棒が出現し棒状の武器になる。

「こんな感じになるんだね……! とりあえずこれで殴る!」

 ブレガイザーは棒で巨大ダコの頭部を叩く。それに応戦するように触手がブレガイザーを襲うが、間一髪のところで避ける。

 しかし、触手に棒は取られてしまう。

「次の武器! レーザーシューター!」

 桃奈は1番を入力すると、腕から銃口が現れる。

「よ~く狙って……行くぞっ!」

 桃奈はレバーに手を戻し、レバーに付いていた引き金を引くと赤いレーザー光が巨大ダコを直撃した。

 桃奈はレーザーが遠距離でも十分力が発揮できる事に気付くと、巨大ダコから距離を取る。

 そして再びレーザーを放った。しかしレーザーは当たるのだが、なかなか巨大ダコは倒せない。



「どこか弱点なんだろう……チェックだ」

 桃奈はテンキーで0番を指定。0番はレーザーシューターのモードをデータ解析モードに移行できるのが特徴である。

 数秒かかってレーザー光で解析完了。桃奈は驚きを隠せなかった。

 なんと、ブレガイザーが巨大ダコのデータを既にあるものとして提示してきたのだ。

 ブレガイザーのデータによると、あの巨大ダコの名前は「テンタクロイド」。ブレガイザーを製造していた防衛組織ARTSが、長年地球への飛来を予測していた外来の巨大生物である。

 テンタクロイドは長らく太陽系の色んな惑星を飛び回ってはミレニウムを吸収して生き続けており、その繋がりで地球に飛来したのである。

 さらに、この町にあったブレガイザー製造工場でもあるARTSの基地にミレニウムが密集していた事もあってか、テンタクロイドはこれを狙ってこの町にやってきたと見れる。

「まったくいい迷惑だよ……テンタクロイドには悪いけど、私たちが生きるためにこの地球から出て行ってもらうよ!」



 桃奈はテンキーで9番を選択し、背中からジェットブースターを出す。そして、テンタクロイドの頭を掴み、ジェットブースターを点火する。

 ブレガイザーは初期状態で宇宙空間での戦闘も可能であること、そして大気圏突破も3回くらいなら耐えられる装甲であることを知っていた桃奈は宇宙へテンタクロイドを投げ飛ばす作戦を思いついた。

 5分ほどでテンタクロイドを持ち上げたブレガイザーは大気圏に突入。とてつもない負荷がかかり、桃奈は苦しむ。

「耐えろ……私……! ブレガイザーっ!」



 十数分かかってようやく大気圏を抜け出し、宇宙にやって来たブレガイザーはテンタクロイドを投げ飛ばす。

 するとテンタクロイドの触手の吸盤にブレガイザーがくっついていたためか、逆にブレガイザーが投げ飛ばされる。飛ばされる時に吸盤から離れたブレガイザーは体勢を整えた。

「くそっ! だったらこれで!」

 桃奈はテンキーで3番を選択し、かぎ爪付きロープをブレガイザーの左太ももから取り出させる。

 ブレガイザーは自分の手のひらにロープをくくりつけ、勢いよくかぎ爪をテンタクロイドにぶつける。

 すると、かぎ爪からジェットエンジンが出現し、自然とテンタクロイドに爪が結びついた。

 桃奈はレバーを動かす。すると、ブレガイザーの身体は回転を始めた。それに従ってテンタクロイドも回りだす。

 桃奈はハンマー投げの要領でテンタクロイドを地球からどこか遠くへ離そうと試みたのだ。

「吹っ飛べぇぇぇぇぇッ!」

 桃奈の叫び声と共に、ロープが自動的に切れ、テンタクロイドは地球の逆方向に吹っ飛ばされた。作戦成功である。

 桃奈はせっかく宇宙に来た記念に地球を眺める。そしてあまりの鮮やかさに涙した。

「さーて、帰るか!」

 ブレガイザーはジェットブースターを点火させ、再び大気圏へ突入した。





 また苦しい大気圏を乗り越え、自分の家のある町の海へ着陸した。町の惨状は酷いものであったが、それでも桃奈はテンタクロイドの脅威からこの地球を守った達成感でいっぱいだった。



 街の人々が手を振る。桃奈もコクピットの扉を開け、それに応じるように手を振り返す。

 桃奈は戦いを通して自分に自信を持つことができた。そして、これからこの町の人と関わり合い、テンタクロイドによる被害を受けた町の復興を目指す。

 それが今の桃奈の夢である。



 桃奈は空を見上げた。青く澄んだ空を見たのは何年ぶりだろうか。自分の心の中の曇りがスーッと消えた気がした。

 熱の篭った鉄の部屋の中で、桃奈は汗を垂れ流しながら外の鮮やかな景色に涙する。

 ほんの一瞬の出来事だった。その時から、桃奈は全くの別人になった気がした。





 これは、彼女が「変身」した物語。
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