ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
目次

3人の面談の模様… その5

「それで私の希望ですが、ペラムと同じように、4年に1回でいいので1か月の休暇をいただけるようにして欲しいと思っています。もしも可能でしたら、1年に1度1週間の休暇か、4年に1度1か月の休暇か、選択できるとなお嬉しいのですが」

(うう…この人もこの案を推してきたわ…)
(これは参りましたね…)
(1か月もの長期休暇はザラリーマンの憧れではありますが…)

ペラムは3人の顔をざっと見回した。
「ペラムは、一月の休暇を希望する理由を皆さまにお話ししたでしょうか?」
「え…」
「理由?」
人事担当者達はちょっと戸惑った。理由など深く考えもしなかったが…。

ペラムは静かに話し出した。
「一週間の休暇で、インペルダウンから行ける所となると、マリージョアからもそんなに離れていない所ということになります。それだと静かに休暇を過ごすのが難しい場合もあるのです」

「静かに過ごすのが、難しい…?」
「ぞれはどういう意味でずか?」
人事担当者達は、意味が分からなかったようだ。バーティは続きを話した。

「ペラムは、マリージョア周辺には近寄らないほうがいいと考えています。どこか遠くの目立たないところに別荘を借りて、会いたい人を内緒で呼んで、こっそりと休暇を過ごすのが一番良いだろうと思っているのですが、そうするには一週間では足りないのです」

これはペラムがさっきカスターとバーティに話したことだった。

先日のことがあったので、休暇がもらえたとしても、マリージョアの自分の家には近寄らないほうがいいだろう。だから、母上と会いたいなら、他の家族に知られないようにして、どこかで落ち合うしかない。
それには、できれば遠いところのほうがいい。実際には、距離はたいした問題ではないかもしれないが、マリージョアやインペルダウン周辺では、やはり近すぎる。

「そうだったんですか…」
「私達は…、ペラムさんの本当の希望を全く汲み取れていませんでした…」
「人事担当者としで…し、失格です…」

ペラムが一月の休暇を提案した時、自分達はその意味を何も考えなかった。単に贅沢を言っているだけだと思ったのだ。同時にされた囚人を休暇に連れて行くという提案に面食らったせいもあったかもしれない。

そして、大事なことを見落とした。それこそが自分達が聞き取ろうとしていたことだったのに…。
人事担当者は、全員うつむいてしまった。

「いいえ、ペラムもはっきりと言えば良かったのです。でも、こういうことはあまり話したくないようでして…」
バーティはこの時、人事担当者達の説得にほぼ成功しただろうと思った。しかし…。

「しかし」担当者1は厳しい顔を上げた。

「お気持ちは理解できましたが、やはり一月もの休暇となると業務に支障が出ます」

敵は思ったよりも感情に流されないらしい性格らしい。バーティは唇を噛んだ。

「…問題となっているのは、誰かが休暇に入っている間の、特別室の監視でしょうか」
「はい。看守が3人しかいないのに、長期間で1人抜けるとなると…。囚人を休暇に同行させるという提案はもってのほかです」

担当者2が、迷いながらも思っていることを口に出した。
「収監されている囚人がいない時でしたら、認められたかもしれませんが…」

ドフラミンゴが収監されたのは、ほんの2~3か月前である。それまでインペルダウンの特別室は、約50年もの間、空だった。
監獄に囚人がいない時でも、3人の看守は毎日のタイムスケジュールにのっとって、形だけの監視業務をきちんとこなしていた。あの毎日が今も続いていたら、休暇なんか一月でもそれ以上でも認められたかもしれない。

(う~ん…、ドフラミンゴさんが悪いわけじゃないけど、タイミングが悪すぎ…)
バーティはかすかに眉間に皺を寄せた。

(囚人がいなければいいんなら、いっそのこと脱獄させてしまおうか。でなければ殺してしまうとか…。いやいやいやそれは良くない。仮にもインペルダウンの看守ともあろう者が、こんなことを考えてはいけない…)

バーティが過去にやったことを考えると、今考えていることには多少の矛盾がある。しかし、今バーティは懸命に策を考えていた。
なぜなら、一月の休暇を希望しているのはバーティも同じだったからである。

バーティの家は、インペルダウンから一週間では行って帰ってこられないところにある。郵便が月に一度しか届かないような辺鄙なところだ。
あの親族間抗争からずいぶん時間が経っているが、生き延びたバーティの家族は、当時争った者達がしつこく残党の行方を探し続けている可能性を、今も危惧していた。

(一月の休暇が実現しても、本当は家には帰らないほうがいいのかもしれない。でも、慎重に行動すれば見つかる可能性は低いはずだ)

今までは退職まで家には帰れないだろうと思っていた。そしてその時になっても、家族にまた会えるという保証はなかった。なにせバーティが退職する年齢になった時、両親は90歳以上だ。

しかし、長期休暇制度という、今まで全く予想していなかったものが作られることになった。
さらにペラムが一月という長期間を人事に提案した。バーティは、休暇で家に帰ることが実現するかもしれないと、秘かに心を躍らせていたのだ。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。