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若様の優雅なインペルダウン生活

原作: ONE PIECE 作者: 茶木代とら
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3人の面談の模様… その6

バーティは穏やかな対応を心掛けつつ、人事担当者達に食い下がった。このままではせっかくの一月の案が却下されてしまう。
「個人的には、一人が1か月間休暇でいなくても、そんなに業務に影響がある訳ではないと思いますが…。マゼラン副署長も特別室の監視に入ってくださるそうですし」

しかし、人事担当者達の反応は、バーティにとって真っ当過ぎるものだった。
「いいえ、マゼラン副署長は一日に4時間しか働けませんし、そうなると誰かが休暇を取っている最中の1か月間、残っている人達はかなりのハードワークになります。人事として、それは許可できません」

バーティは諦められなかった。自分の発言に説得力がないのは分かっていたが、自信があるふりを装って言った。
「それでは、やはり囚人を休暇に同行させることを了承していただけませんでしょうか。私の両親の家には座敷牢がありますので、滞在中はそこに閉じ込めておけば…」

「先程も申し上げましたが、囚人を監獄の外に連れ出すことは法律に反します」
人事担当者1は申し訳なさそうではあるが、毅然とした態度でバーティの提案を断った。

人事担当者達は、バーティの様子に気付いていた。どうやら、バーティもペラムと同様に、一月の長期休暇を希望しているらしい。

よって担当者1が次の質問をした。
「バーティさん自身も一月の休暇を希望しているということですね?よろしければ、理由を教えてくださいませんか。ペラムさんの理由は先ほど伺いましたが…」

しかし次の瞬間、人事担当者達はこの質問をしたことを後悔した。

さっきまでにこやかだったバーティが、この質問を聞いたとたんに驚いたように目を見開き、次に一瞬だけ眉をしかめたが、その表情はすぐに悲しそうなものに変わって、最終的には打ちひしがれたような、しゅんとした顔になってしまった。

(あ…、悪いこと聞いちゃったのかしら…)
(落ち込んでしまいましたね…。理由は分かりませんが)
(看守ざん達にとって、どうやらこの質問は地雷のようでずね)

しかし、バーティはすぐに表情を和らげ、さらりと質問に答えた。
「家が遠いんです」

人事担当者達は、バーティのこの態度にほっとした。そして、この場を明るい雰囲気にしようと、何気ない話題のつもりで、次のような質問をしたのだが…。
「そ、そうでしたかぁ~。一週間では帰省できない距離なのでしょうか?」
「おうぢまで、何日ぐらいかかるんですか?」

「………。できれば、場所の特定につながるような質問には答えたくないのですが…」
バーティは、今度ははっきりと眉間に皺を寄せていた。

「申し訳ありません…。軽率な質問でした」
「いえ…」
この人達が特殊な事情を抱えた人達であることは分かっていたはずなのに…。人事担当者達は、自分達の浅はかさを恥じて、うなだれた。

バーティも、自分の言動を恥じ入っていた。ペラムが希望していることを持ち出して人事担当者達を説得しようとしていたが、自分が同じことを切望していることを見抜かれて、つい感情的になってしまった。
自分の事情は確かに特殊かもしれないが、過剰に神経質になる必要などないのだ。

面談をする側とされる側の両方が落ち込んでうつむいてしまい、その場の雰囲気が暗く落ち込むかと思われたが、人事担当者達は精神的にタフだった。
担当者1が、バーティが真っ直ぐに向いて話し出した。

「バーティさん、特別室担当の看守がもう一人増えるかもしれないという計画があります。業務の性質上、厳選して採用しないといけないので、すぐに増員できる訳ではありませんが、もしも本当に増員されたら、1週間以上の休暇も可能になるかもしれません」
「は、はい…」
もはや手詰まりだと思い込んでいたバーティにとって、これは思いがけない言葉だった。

「ただ、それでも一月の休暇は実現するかどうか…。2週間でしたら可能かと思いますが」
「……。実は、距離的に最低でも3週間は必要なのですが…」
場所の特定につながる情報かもしれなかったが、バーティは思い切って口に出した。

「分かりました。理由や名前は伏せて、3週間の休暇を希望している人がいるとだけ、上に報告いたします」

この担当者1の言葉に、バーティは目の前が明るくなったような気がした。これは可能性が全くないという訳ではない。

その後、面談はスムーズに進行して、無事に終わった。
午前中の業務が終了した人事担当者達は…。

「ねえねえ~、さっきご両親の家に座敷牢があるって言ってたけどぉ、本当かしら?」
「さあ、どうでしょうね」
「まるっぎり嘘でもなさそうなどごろが怖いですね」
「でぇもぉ~、ちょっと怖いけどぉ、あの人になら閉じこめられちゃってもいいかもぉ~?なんて思っちゃったりしてぇ~。きゃっ」
「さて、次の方の面談まで時間がかなりあるので、ゆっくり昼食を食べられますね」
「地上階の娯楽スペースに行ぎましょう。食事できるどごろがあるはずでず」
「そうですね。インペルダウンの娯楽スペースはこの機会にぜひ見学しておかないと」
「座敷牢ですってぇ~、きゃ~っいや~んっ」
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