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俺と彼女の退屈な日常

ジャンル: 現実世界(恋愛) 作者: 山科
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第17話

 そんな感じで、俺たちはとりあえず近場の喫茶店に入店した。
 ウェイトレスに案内された、6人がけの席。
 通路側から、村上、俺、仙堂院。そしてテーブルを挟んで桐野と宮原が座った。
 その後、メニューを見て、各々がオーダーを告げる。
「っていうかさ、なんで今日集まったんだ?」
 ウェイトレスがオーダーを聞いて立ち去った後、村上が口を開く。
「何を言っているんだ、馬鹿は? そんなの決まっているだろう?」
「いや、決まっているだろう、って言われても……」
「……真白、説明してなかったのか?」
「そういや、忘れてたな」
「そうか、まあ忘れたくなる気持ちも分かる」
 村上を見る桐野。
「私だって、本来ならここに呼ぶのも嫌だったんだ」
「どういうことですかねっ!?」
「あんまり騒ぐなよ村上。迷惑だろ」
 ウェイトレスの視線を感じたので、村上を黙らせる。村上もウェイトレスの視線を察したようで、
「うぐ……っ」
 と、反省したような表情をする。
「まあ、説明してあげるよ」
 桐野がそこまで言ったところで、ウェイトレスが俺たちの頼んだ飲み物を運んできた。
 テキパキと商品名を告げながら、テーブルの上に置いていく。
 ウェイトレスが去った後、桐野は目の前に置かれたアイスコーヒーで喉を潤し、昨日の出来事を話し出す。
 俺や宮原、仙堂院も、もう一度現状確認のために桐野の話に耳を傾ける。
「ふぅん……なるほどねぇ。なあ、恭介」
 大まかな話を聞いた村上は、俺の方に胡散臭い笑顔を浮かべた面を向けた。
「なんで君の周りには、こうも美少女が集まるんですかね? リア充爆発しろよ!」
「はいはい。んで、どうする? 桐野」
「適当にあしらわれたっ!?」
「ふむ……まあ、いくらあの副会長さんが手を貸してくれるからって、あんまりふざけた内容では駄目だろうからね。私たちの部活の目的、つまり非日常を探すことに多少なりとも関係があるようなことをすれば大丈夫だと思う」
「非日常を探す、かぁ~……あたしにはいい案は思いつかないや。ごめんね」
「ワタシもだ。……なあ真白恭介。チョコレートパフェとストロベリーパフェ、どっちを頼めばいいと思う?」
「……今食いたい方を頼めよ」
「うむ! ならワタシは両方頼むぞ!」
 満面の笑みを浮かべながら、仙堂院は近くにいたウェイトレスを呼びとめ、チョコレートパフェとストロベリーパフェを頼んだ。そんなに食えるのか? この小さい身体で。
「非日常を探す……オレにいい案があるぜ!」
「いい案?」
「おう! これはオレのバイブルから得た知識なんだけどな」
 またかよ。
「二手に分かれて不思議探索したらどうだ?」
「……不思議探索?」
 首をかしげながら桐野が訊ねる。
 不思議探索。ライトノベルが好きな人間ならば、一度は目に、もしくは耳にしたことがあるであろう単語。
「そ、不思議探索。簡単に言えば、街中を歩き回るってことなんだけどな」
「ふむ……」
 腕を組み、目を閉じる桐野。どうやら、桐野は何かを考えるときにこのポーズをとるらしい。
 そのまま数十秒考えた後。
「……まあ、それもありかもしれないけど」
 目を開けた桐野は、宮原と仙堂院の方を見る。
 宮原は、
「うん! あたしはそれでいいと思うよ♪」
 と笑顔で。
 仙堂院は、
「ん? んみゅ、わたひほひひほほほふほ」
 と、多分『ワタシもいいと思うぞ』と言ったのだろう。口いっぱいにストロベリーパフェ(桐野が思考している時に来た)を詰め込みながらそう答えた。
「……まあ、書類の書き方によっては、どうとでもなるか。生徒会のトップ二人はこちらの味方だし……ふむ」
 もう一度目を閉じ、ぶつぶつと何かを呟く桐野。
「よし。なら、不思議探索とやらをしてみようか」
「よっしゃ! それでこそ紗奈ちゃんだ!」
「紗奈ちゃんはやめろ。吐くから」
「吐くほど嫌なんですかっ!?」
「ああ」
「軽いセクハラだよね」
「くじゅひゃにゃ(クズだな)」
「最低だな」
「お前ら……っ! もういいよ。ほれ、さっさとグループを決めようぜ」
 村上はそう言って、卓上にある爪楊枝……ではなく、ポケットからトランプを取り出してそこから五枚のカードを抜き、それをシャッフルし始めた。
「お前、なんでトランプなんて持ってんだよ?」
「あん? 紳士だからな」
「変態という名の?」
「違うわっ!」
 念入りにシャッフルした後、その五枚のカードを、裏向きのままテーブルの上に並べる。
「この五枚の中には、ハートのカードが三枚、スペードのカードが二枚ある。みんな、一枚ずつ引いてくれ。おっと、引いたカードは、全員が引くまで見せるなよ」
 桐野から順に、宮原、仙堂院、俺、そして村上の順にカードを一枚ずつ引いていく。
 俺が引いたのは、『スペードの5』だった。ということは、俺と誰かもう一人、二人で不思議探索をするわけか。できることなら、村上以外の人間がいいな。
「よし、引いたな。んじゃ、せーので見せるぞ。せ――」
「「「「せーのっ!!」」」」
 掛け声とともに、村上を除いたみんなが一斉にカードを見せる。
「……お前ら、チームワークばっちりですね」
 村上も、ワンテンポ遅れて、カードを見せた。
 俺はさっき言ったとおりスペード。真っ先に村上のカードを確認すると、村上は『ハートの4』だった。とりあえずは一安心だ。
 そして、宮原、仙堂院はともにハートのカードだった。ということは。
「この組み合わせ、か」
 スペードを引いたのは、桐野だった。
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