剣の少年と愉快な冒険者たち(前編)④
もう一つの部屋、クランの部屋の左隣に向かった。
「ザグルです」
扉をノックした。
「あ~っ、ザグルく~ん? 久しぶり~元気そうだね~よかったよ~入ってよ~」
可愛らしく、のんびりとした女の子の声が中から聞こえた。
声の主の名前はロベリー。一応僧侶である。
ザグルが声をかけても、扉が開かれる様子ではなく、言われた通りザグル自身で開けた。
部屋の中には、緑色の煙が部屋中に充満しており、どうにも毒々しい物だった。
ロベリーを見つける前に、本能的に素早く扉を閉めた。
「あっ、あのさー、入って本当に平気?」
ザグルは本能に従うままに確認する。
「なにが~? 平気だよ~」
間の抜けた、能天気な声だけが聞こえた。
「なんか、危険な緑色が見えたんだけど……?」
「あ~あ、多分、大丈夫だよ~」
「多分? 本当に大丈夫?」
「本当だって~」
「この間みたく、笑いが止まらなくなるとか、腹痛で動けなくなるとか、そんな症状にならない?」
ロベリーは僧侶の仕事よりも、冒険で使えるアイテムを作るのに夢中だった。
と言うか、人、主にザグルを使って実験するのが大好きなマッドサイエンティストだった。
だけど、科学者に転職しないのは、僧侶と言う肩書きがないと格好がつかないからだ。
お陰でザグルは何度痛い目を見たか……。
ルミアが食料の代わりとして、持ってきた彼女が作った食べ物を食べたら、お腹が究極に痛くなった……。
ルミアは確実に知っており、隣で大笑いしていたので、ロベリーの実験台兼ルミアにからかわれたのだ。
それだけではなく、警戒することなく彼女の部屋に入ったら、笑いが止まらなくなり死にそうになった……。
考えてみたら、いや、考え無くとも普通は分かることだが、ルミアのパーティと一緒にいると、ザグルはロクなことが起きなかった。
だから、ルミアの強い誘いがあっても、パーティに入りたくないのだ。
ルミア本人はそれを知っているので、面白いから誘っているのだ。
「大丈夫だよ~多分~」
「多分ってなんだよ!」
「ザグルくん~免疫あるから~」
なんの実験をしていたか全く想像出来なかったし、したくもなかったが、部屋の中には入りたく無いと強く感じた。
だいたい、免疫とは……? 無い人間が入ったら、とんでもない事が起こるのでは……? と、嫌な想像をしてしまった。
「ザグルく~ん。入らないの~?」
扉が開いた。
そこからザグルと同い年の、分厚いメガネをかけた愛らしい年相応の顔に白衣姿の恰好。白衣でなければ、普通の少女が現れた。
彼女こそ、ロベリーである。
「ええ、結構です」
「な~んだ。つまらな~い。これから~、ザグルく~んのために、ハイスペクタクルな~、実験を夜な夜な行おうとしたのに~」
ゆっくりと話してはいたが、内容はとんでもない事を言っていた。
ってか、絶対、ザグルを実験台にする感じでもある。命に関わる問題だった。
「どんな実験だよ! つーか、部屋をそんなにして、平気なのかよ?」
「あ~あ~、大丈夫だよ~あとで~ちゃんと換気するから~」
「換気で済む問題かよ!」
むしろ、解決していないような気がしてならなかった。
生真面目な性格なため、次の人の心配までし始めた。
「な~んだ。詰まらな~い」
等、二、三小言をザグルにぶつけ、おとなしく部屋に戻った。
それで戻ってくれたのだからありがたい話しだった。
ザグルは念のため鍵穴から中を覗くと、緑色の霧と、フラスコ、アルコールランプ、試験管が見えた。
(入らなくって良かった……)
ほっとしていた。明らかに怪しい研究だった。
(しかし、これで、なにを目的としたパーティなんだろうか?)
このパーティの七不思議の一つであった。
ザグルは嫌々クランのいる部屋に戻った。
と、言うか、必然的に戻ってきてしまった。
クランの部屋に戻る前に、ルーベの部屋にもう一度行ったものの、身体が大きいためか、ベッドを二台つなげて既に寝ており、ザグルの寝る場所が無かったのだ。
「やっぱり、戻ってきた」
クランは目の中に星が出来ているくらい、目を輝かせていた。
「たっ、ただいま」
ザグルは苦笑いと、引き気味な態度を取った。
「お帰りなさい」
クランは逆に満面の笑顔でザグルを迎えた。
ザグルは、一連の行動で精神的に疲れ果て、ベッドに向かい横になった。
「もう、寝ちゃうの?」
クランは少しがっかりしている。
「なんか疲れた」
「じゃあ、子守唄でも歌おうか?」
ザグルとは反対に元気だった。
活力源はザグルである。
「勘弁して~」
クランは歌が下手では無かったが、上手いとはとても言えなかった。
だから、聞いたら眠れなくなると思ったのだ。
「そう? 聴きたくなったらいつでも言ってね。私が心を込めて歌うから」
「はい、お願いします」
こういう時は逆らわない方がいいのだ。
と、言うか、睡魔が襲い逆らうことが面倒になっていた。
「な~んだ。つまらない。もっと、遊ぼうよ」
「つまらなくっていいよ。ともかく、オレは寝る」
ザグルが眠りにつくのは、それから一分も経たなかった。
ルミアのパーティとの夜はこうして過ぎていった。
先が思いやられ、不安多し、期待少しの明日はどうなることやら。
そんなザグルの事情とは裏腹に、夜空には満天の星が輝いていた……。
「ザグルです」
扉をノックした。
「あ~っ、ザグルく~ん? 久しぶり~元気そうだね~よかったよ~入ってよ~」
可愛らしく、のんびりとした女の子の声が中から聞こえた。
声の主の名前はロベリー。一応僧侶である。
ザグルが声をかけても、扉が開かれる様子ではなく、言われた通りザグル自身で開けた。
部屋の中には、緑色の煙が部屋中に充満しており、どうにも毒々しい物だった。
ロベリーを見つける前に、本能的に素早く扉を閉めた。
「あっ、あのさー、入って本当に平気?」
ザグルは本能に従うままに確認する。
「なにが~? 平気だよ~」
間の抜けた、能天気な声だけが聞こえた。
「なんか、危険な緑色が見えたんだけど……?」
「あ~あ、多分、大丈夫だよ~」
「多分? 本当に大丈夫?」
「本当だって~」
「この間みたく、笑いが止まらなくなるとか、腹痛で動けなくなるとか、そんな症状にならない?」
ロベリーは僧侶の仕事よりも、冒険で使えるアイテムを作るのに夢中だった。
と言うか、人、主にザグルを使って実験するのが大好きなマッドサイエンティストだった。
だけど、科学者に転職しないのは、僧侶と言う肩書きがないと格好がつかないからだ。
お陰でザグルは何度痛い目を見たか……。
ルミアが食料の代わりとして、持ってきた彼女が作った食べ物を食べたら、お腹が究極に痛くなった……。
ルミアは確実に知っており、隣で大笑いしていたので、ロベリーの実験台兼ルミアにからかわれたのだ。
それだけではなく、警戒することなく彼女の部屋に入ったら、笑いが止まらなくなり死にそうになった……。
考えてみたら、いや、考え無くとも普通は分かることだが、ルミアのパーティと一緒にいると、ザグルはロクなことが起きなかった。
だから、ルミアの強い誘いがあっても、パーティに入りたくないのだ。
ルミア本人はそれを知っているので、面白いから誘っているのだ。
「大丈夫だよ~多分~」
「多分ってなんだよ!」
「ザグルくん~免疫あるから~」
なんの実験をしていたか全く想像出来なかったし、したくもなかったが、部屋の中には入りたく無いと強く感じた。
だいたい、免疫とは……? 無い人間が入ったら、とんでもない事が起こるのでは……? と、嫌な想像をしてしまった。
「ザグルく~ん。入らないの~?」
扉が開いた。
そこからザグルと同い年の、分厚いメガネをかけた愛らしい年相応の顔に白衣姿の恰好。白衣でなければ、普通の少女が現れた。
彼女こそ、ロベリーである。
「ええ、結構です」
「な~んだ。つまらな~い。これから~、ザグルく~んのために、ハイスペクタクルな~、実験を夜な夜な行おうとしたのに~」
ゆっくりと話してはいたが、内容はとんでもない事を言っていた。
ってか、絶対、ザグルを実験台にする感じでもある。命に関わる問題だった。
「どんな実験だよ! つーか、部屋をそんなにして、平気なのかよ?」
「あ~あ~、大丈夫だよ~あとで~ちゃんと換気するから~」
「換気で済む問題かよ!」
むしろ、解決していないような気がしてならなかった。
生真面目な性格なため、次の人の心配までし始めた。
「な~んだ。詰まらな~い」
等、二、三小言をザグルにぶつけ、おとなしく部屋に戻った。
それで戻ってくれたのだからありがたい話しだった。
ザグルは念のため鍵穴から中を覗くと、緑色の霧と、フラスコ、アルコールランプ、試験管が見えた。
(入らなくって良かった……)
ほっとしていた。明らかに怪しい研究だった。
(しかし、これで、なにを目的としたパーティなんだろうか?)
このパーティの七不思議の一つであった。
ザグルは嫌々クランのいる部屋に戻った。
と、言うか、必然的に戻ってきてしまった。
クランの部屋に戻る前に、ルーベの部屋にもう一度行ったものの、身体が大きいためか、ベッドを二台つなげて既に寝ており、ザグルの寝る場所が無かったのだ。
「やっぱり、戻ってきた」
クランは目の中に星が出来ているくらい、目を輝かせていた。
「たっ、ただいま」
ザグルは苦笑いと、引き気味な態度を取った。
「お帰りなさい」
クランは逆に満面の笑顔でザグルを迎えた。
ザグルは、一連の行動で精神的に疲れ果て、ベッドに向かい横になった。
「もう、寝ちゃうの?」
クランは少しがっかりしている。
「なんか疲れた」
「じゃあ、子守唄でも歌おうか?」
ザグルとは反対に元気だった。
活力源はザグルである。
「勘弁して~」
クランは歌が下手では無かったが、上手いとはとても言えなかった。
だから、聞いたら眠れなくなると思ったのだ。
「そう? 聴きたくなったらいつでも言ってね。私が心を込めて歌うから」
「はい、お願いします」
こういう時は逆らわない方がいいのだ。
と、言うか、睡魔が襲い逆らうことが面倒になっていた。
「な~んだ。つまらない。もっと、遊ぼうよ」
「つまらなくっていいよ。ともかく、オレは寝る」
ザグルが眠りにつくのは、それから一分も経たなかった。
ルミアのパーティとの夜はこうして過ぎていった。
先が思いやられ、不安多し、期待少しの明日はどうなることやら。
そんなザグルの事情とは裏腹に、夜空には満天の星が輝いていた……。
※会員登録するとコメントが書き込める様になります。