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スノー・フェアリー

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: ハラミ
目次

雪女の姉

「いやー、相変わらず人間の料理ってのは変わってるよなぁ」

 ファーストフード店に入った俺とおゆきにのっぺらぼうとカラス天狗の四人。

「パンに肉を挟み、おもむろに口に入れる。これぞシンプルイズベストでございまするな」
「そういやカラス天狗も人間界に来るの初めてだっけか?」

 のっぺらぼうがファーストフード店のハンバーガーを頬張りながらいった。

「これはハンバーグっていうんだよお二人とも。わりかし安いし腹いっぱいになるからよく覚えとくがいいよ」

 のっぺらぼうがにかっと笑った。

「のっぺらぼう様は物知りですねぇ」
「もう俺は半分人間だからなぁ」

 のっぺらぼうがジュースをストローですすった。

「にしてもみんな本当に妖怪なんですか?」

 俺はちょっと驚いた目でテーブルについている数人を見回す。ぱっと見みんな普通の人間に見えるのだが。

「おうよっ、まぁ俺はもうかなり人間かぶれだけど、カラス天狗に雪女は生粋の妖怪だぜ」
「さよう、して由布由殿は妖怪を怖がる人ですかな?」
「んー、まぁ怖いといえば怖いけど・・・」

 俺は周りを見回した。雪女はなんだか妹みたいな感じでニコニコしてるし、カラス天狗は普通の小学生だし、  のっぺらぼうは同い年くらいの友達に見える。これじゃぁ怖がることもないなぁ。そんな様子を見たカラス 天狗が口を開いた。

「もともとそれがしたちは山のほうに住んでおりまする。もし山に人間どもが立ち入れば、脅かしたりして自らの縄張りを守り、人間と妖怪の住む場所を区別する。はずなのですが・・・」
「ですが・・・?」

 俺が首をかしげた。

「あれは確か最初は九尾狐だったな。あのやろうが人化の法っていう妖術を開発したんだ」
「人化の法・・・?」

 俺が聞き返すと、カラス天狗が答えた。

「われわれ妖怪が人間に化けることが出来るという新しい術ですよ」
「そうしたらとたんに山から下りてくる妖怪が増えちまってねぇ。どいつもこいつも旅行気分で降りてくるんだよ。しかも人間の姿で。まぁ俺もそんなうちの一人なんだけどな」

 のっぺらぼうがストローをずずーっと言わせている。ジュースがなくなったのだろうか。

「最近お前ら人間が山の方まで開発してくるから最近人化の法でまた降りてくるやつが増えちまって。何か街中で妖怪に会うってのもあまり珍しいことじゃなくなってきたんだよな」
「お待たせいたしました。チーズバーガーセットをお持ちしましたぁ」

 そういってファーストフードの店員が注文したものを持ってきた。

「あ、ありがとうございます!」

 そういっておゆきがセットを受け取ったとき、店員がいきなり口を押さえた。

「あーぁ!誰かと思ったらおゆきちゃん!おゆきちゃんも山から降りてきたのぉ?」

 店員がいきなり叫んだ。

「えっ?誰ですかぁ・・・?」
「あ、そうか。えーっとちょっと待ってね」

 店員さんは急に辺りを見回し、誰も見ていないのを確認して安心したようだ。
 すると次の瞬間店員の首が伸びた。

「えっ、ええぇぇ!?」

 俺はギョッとしたが、おゆきは顔を輝かせた。

「ろくろ首!」
「いやぁ、びっくりしたわぁ。まさかこんなところで再会できるなんてぇ」

 ろくろ首は雪女を抱き上げた。

「またあえる日を首を長ーくして待ってたのよ!」
「ろくろ首いい加減そのギャグ寒いぞ」

 のっぺらぼうがため息をついていた。

「あらら、のっぺらぼうにカラス天狗までみなさんおそろいで・・・ん?」

 ろくろ首が俺の方を見て目線を止めた。

「んー・・・どちらさまぁ?」
「あ、えーっと・・・」

 ろくろ首がこっちの方に首を伸ばしてきて反則なくらいに近くで俺の顔を見つめてくる・・・。

 ちょ、ちょっと可愛いかも。

「そちらにいらっしゃるのは由布由様です。実は私たち一つ屋根の下で暮らしているのです」
「由布由さんっていうの?見たところ人間のようですわね」

 ろくろ首の首が元のところにすっぽりとはまった。

「妖怪のこととかで困ったことがあったらいつでもこの ろくろ首に相談してね。私いつもここで働いてるから」
「あ、ありがとうございます」
「じゃ、ごゆっくりどうぞぉ」

 ろくろ首がいってしまうと、俺は自分の顔がほてっているのを感じた。

「きれいだよなぁ。ろくろ首は」
「まったくでございまする」

 カラス天狗が暑いお茶をすすった。
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