裏切りの理由
「ほらほら、酒呑童子君!きなこ餅にお雑煮にお寿司、何でもあるよ」
「い、いいの・・・ですか?こんなにもらって?」
美香のお母さんがいろいろな食べ物を持ってきてくれるが、酒呑童子はそれにちょっと戸惑っていた。ふだんもてなされるなんてことがまったくないのでどう反応すればいいのか分からないのだ。
「いいのよっ、ハンサム君にはお餅をもう一つプレゼントっ」
「あーちょっとお母さん私がいない間に酒呑童子にちょっかい出さないでよね」
戻ってきた美香が怒ったようにいった。
「酒呑童子君は本当にイケメンだからなぁ、まるでモデルさんだ」
「いえ、えっと、恐縮です」
美香のお父さんがちょっとふざけた。軽く酔っている。だが酒呑童子は酔った人間は嫌いではない。
「だが、お母さんに手を出してはだめだぞぉ。この僕が相手だ」
「もう、お父さんまで・・・!」
「はっはっはー」
高笑いした美香の父親。人間が笑う声って、いいよなーっと酒呑童子は思わず考え顔に手をやると、なぜかぬれていた。
「酒呑童子君、どうしたんだね。まさか泣いているのかね?」
「えっ?」
目元をぬぐうと確かに液体。鬼の目にも涙ってやつか。
そうだ、考えてみれば俺はこんな風に心から歓迎されたことがなかった。俺が道を歩けば全員ドアを固く閉め、俺がいなくなるまで決してドアを開けようとせず、俺のほうを見ようともせず。
あれは数百年前、山の中で道に迷った子供を送り届けたとき、そのとき村人は手に手に鍬や鋤の刃を持ってきて、後もう少しで死ぬところだった。
「す、すいません。いきなり泣いたりして」
「い、いや別にいいんだが・・・」
「もしかしてご飯がそんなにおいしくなかったとか?」
「とんでもねーっす!」
酒呑童子がそういうと、美香の両親があははっと笑った。
「ねぇねぇ、酒呑童子。煮豆作ったんだけど食べない?」
美香がそういって煮豆を出すと、酒呑童子は飛び上がって部屋の隅に逃げてぶるぶる震えた。
「わわわ、悪い。まままま、豆は大っ嫌いなんだ」
「あっ、そっか。鬼だからね」
「はははは、早くしまってくれ」
「分かった分かった」
美香はそういうと煮豆を一つ残らず食べてしまった。酒呑童子はそれを見てやっと胸をなでおろした。
→ → → → →
「いやぁ、ごちそうさまでした」
だいぶ敬語の使い方が上手くなった酒呑童子。それを見ている美香とその両親。
「また遊びにいらっしゃいね」
「孫の顔が見れそうだな」
「ちょっとお父さん!」
美香が頬を膨らませた。
「ほんっとお邪魔しました」
酒呑童子は嬉しそうに家の外に出て、思いっきり伸びをした。
「いやー、食った食った」
そういって家を出た酒呑童子だったが、突如背後に気配を感じて振り向いた。
「どうして突然お前がいきなり裏切ったか分かった。そして失望した」
そういって出てきたのは3~4mはある見上げ入道だった。酒呑童子はため息をついた。
「人間嫌いな貴様が人間の小娘にうつつを抜かすとは。お前はのっぺらぼう以下の妖怪のクズだ」
「まるであんたが妖怪のお手本でもあるかのような言い方じゃん」
酒呑童子がそういうと、突然目の前が暗くなり、明るくなる。殴られた激痛が走った。見上げ入道、はっきりいって力自慢の酒呑童子でも見上げ入道は手ごわい相手だ。おまけに体もでかい。
「手を出したな。見上げ入道」
ちょっとすごんで見せるが見上げ入道はひるまない。
「だったらなんだ、人間かぶれに負ける俺ではないぞ」
「鬼に喧嘩を売るってーのがどういうことか、よく分かってないようだな」
負ける気はなかった。手ごわい相手だがここで黙っているのは鬼ではない。
「お前ら鬼はいつもそうなんだよ。いっつも甘いんだ。だから人間ごときに倒される」
「なかなかいうじゃねぇか」
「お前の親父もそうだ。金太郎とか言うのがどんな強かったか知らんが、妖怪の恥さらしだ」
「いい加減にしろ!見上げ入道!」
酒呑童子は金棒を振り上げると思い切り振り下ろして見上げ入道を狙った、が見上げ入道はそれをダンスでもするかのようにかわした。だが、酒呑童子は金棒を投げ捨て、今度は見上げ入道の足に組み付く。
「ううぉりゃああ!!」
酒呑童子が雄たけびを上げると、見上げ入道がその怪力に思わず転んだ。
「い、いいの・・・ですか?こんなにもらって?」
美香のお母さんがいろいろな食べ物を持ってきてくれるが、酒呑童子はそれにちょっと戸惑っていた。ふだんもてなされるなんてことがまったくないのでどう反応すればいいのか分からないのだ。
「いいのよっ、ハンサム君にはお餅をもう一つプレゼントっ」
「あーちょっとお母さん私がいない間に酒呑童子にちょっかい出さないでよね」
戻ってきた美香が怒ったようにいった。
「酒呑童子君は本当にイケメンだからなぁ、まるでモデルさんだ」
「いえ、えっと、恐縮です」
美香のお父さんがちょっとふざけた。軽く酔っている。だが酒呑童子は酔った人間は嫌いではない。
「だが、お母さんに手を出してはだめだぞぉ。この僕が相手だ」
「もう、お父さんまで・・・!」
「はっはっはー」
高笑いした美香の父親。人間が笑う声って、いいよなーっと酒呑童子は思わず考え顔に手をやると、なぜかぬれていた。
「酒呑童子君、どうしたんだね。まさか泣いているのかね?」
「えっ?」
目元をぬぐうと確かに液体。鬼の目にも涙ってやつか。
そうだ、考えてみれば俺はこんな風に心から歓迎されたことがなかった。俺が道を歩けば全員ドアを固く閉め、俺がいなくなるまで決してドアを開けようとせず、俺のほうを見ようともせず。
あれは数百年前、山の中で道に迷った子供を送り届けたとき、そのとき村人は手に手に鍬や鋤の刃を持ってきて、後もう少しで死ぬところだった。
「す、すいません。いきなり泣いたりして」
「い、いや別にいいんだが・・・」
「もしかしてご飯がそんなにおいしくなかったとか?」
「とんでもねーっす!」
酒呑童子がそういうと、美香の両親があははっと笑った。
「ねぇねぇ、酒呑童子。煮豆作ったんだけど食べない?」
美香がそういって煮豆を出すと、酒呑童子は飛び上がって部屋の隅に逃げてぶるぶる震えた。
「わわわ、悪い。まままま、豆は大っ嫌いなんだ」
「あっ、そっか。鬼だからね」
「はははは、早くしまってくれ」
「分かった分かった」
美香はそういうと煮豆を一つ残らず食べてしまった。酒呑童子はそれを見てやっと胸をなでおろした。
→ → → → →
「いやぁ、ごちそうさまでした」
だいぶ敬語の使い方が上手くなった酒呑童子。それを見ている美香とその両親。
「また遊びにいらっしゃいね」
「孫の顔が見れそうだな」
「ちょっとお父さん!」
美香が頬を膨らませた。
「ほんっとお邪魔しました」
酒呑童子は嬉しそうに家の外に出て、思いっきり伸びをした。
「いやー、食った食った」
そういって家を出た酒呑童子だったが、突如背後に気配を感じて振り向いた。
「どうして突然お前がいきなり裏切ったか分かった。そして失望した」
そういって出てきたのは3~4mはある見上げ入道だった。酒呑童子はため息をついた。
「人間嫌いな貴様が人間の小娘にうつつを抜かすとは。お前はのっぺらぼう以下の妖怪のクズだ」
「まるであんたが妖怪のお手本でもあるかのような言い方じゃん」
酒呑童子がそういうと、突然目の前が暗くなり、明るくなる。殴られた激痛が走った。見上げ入道、はっきりいって力自慢の酒呑童子でも見上げ入道は手ごわい相手だ。おまけに体もでかい。
「手を出したな。見上げ入道」
ちょっとすごんで見せるが見上げ入道はひるまない。
「だったらなんだ、人間かぶれに負ける俺ではないぞ」
「鬼に喧嘩を売るってーのがどういうことか、よく分かってないようだな」
負ける気はなかった。手ごわい相手だがここで黙っているのは鬼ではない。
「お前ら鬼はいつもそうなんだよ。いっつも甘いんだ。だから人間ごときに倒される」
「なかなかいうじゃねぇか」
「お前の親父もそうだ。金太郎とか言うのがどんな強かったか知らんが、妖怪の恥さらしだ」
「いい加減にしろ!見上げ入道!」
酒呑童子は金棒を振り上げると思い切り振り下ろして見上げ入道を狙った、が見上げ入道はそれをダンスでもするかのようにかわした。だが、酒呑童子は金棒を投げ捨て、今度は見上げ入道の足に組み付く。
「ううぉりゃああ!!」
酒呑童子が雄たけびを上げると、見上げ入道がその怪力に思わず転んだ。
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