陰謀
力で倒された見上げ入道。途端に見上げ入道の体は小さくなり、普通の人間サイズに戻った。だが、人間サイズに戻っても2m近くあるのでなかなか威圧感がある。
「さすが鬼の大将、恐るべき力だ」
怪力を目の当たりにした見上げ入道は目を丸くした。
「分かった、お前がそこまで想ってるんならいまさらお前の恋路を邪魔しないようにしよう」
見上げ入道がそういうと酒呑童子は目を輝かせる。
「ほ、本当か?」
「本当だ。お前の正体はあの娘には言わないし、お前らが二人でいる時は俺も現れないようにしよう」
見上げ入道は少し薄ら笑いを浮かべながら続けた。
「本当に警戒をするべきはあの由布由とか言う人間だな」
「由布・・・由?」
酒呑童子が聞き返した。
「美香とか言うあの娘、いつもあの由布由という男と一緒にいる」
「だ、だが・・・由布由には雪女がいるはずじゃないのか?」
「そこが人間の心情の複雑なところよ。俺と違ってお前は昔人間だったんだから分かるだろう?女が一度男に惚れ込んだら死ぬまであきらめないことを」
「・・・」
酒呑童子は黙り込んだ。
「由布由を始末するしかない・・・」
酒呑童子は押し黙った後、まるでうわごとのようにそう言った。その顔は人間の顔ではなく、鬼の真っ赤な顔になっていた。
「いってくる、入道」
「気をつけることだ」
酒呑童子を見送った後、影から雪男が出てきた。
「上手くいったようだな。入道」
「あぁ」
「だが大丈夫か?由布由とか言う人間はいろんな妖怪から守られている。雪女にツララ女にカラス天狗・・・、こないだみたいに失敗するんじゃねぇか?」
すると見上げ入道は手を振った。
「酒呑童子はただの妖怪じゃない、鬼だ」
「鬼・・・か」
雪男が聞き返した。
「あぁ、本気を出した鬼は妖怪が束になってかかろうと勝てない。今回ばっかりは由布由も最後だ」
見上げ入道はそういうと霧のように姿を消した。
→ → → → →
夜、乱暴にドアを開ける音がしたのに最初に気がついたのはおゆきだった。
「だ、誰!」
おゆきがドアの方を見に行く、だが、ドアは開いていたもののあたりに人影はまったくなく、まるでさっきの音が幻だったようだ。
「あれ・・・?」
おゆきが首をかしげたとき、突然ゴツッという鈍い音とともにおゆきは次の瞬間には気絶していた。
「おゆきー、一体どうしたんだ?」
そんなことまったく知りようもない俺はおゆきのほうに声をかける。
「あ、いえ、風でドアが開いてしまったみたいです」
「そうだったのかぁ」
俺はおゆきの声だったのでつい安心してしまっていたが、これは酒呑童子の声真似の声だった。俺は安心して本でも読もうかと思い、本棚へと近づいた。
だが・・・
「え?」
棚の方へ行こうと玄関の前を通ったとき、おゆきが倒れていたのだ。そしてその代わりに酒呑童子が金棒を担いで立っていたのだ。
「しゅ、酒呑童子・・・」
「よぉ、由布由」
酒呑童子はそういうと、目にも止まらない速さで峰を金棒で打った。
「うぐっ・・・!」
「変に抵抗しないほうがいいぜ。いくら鬼でも楽に死なせてやりたいという情けはある」
間違いなく殺される、というか殺.すのが目的で来たのに違いない。酒呑童子が高々と金棒を振り上げた。
「あんたもつくづくついてないね。雪男と鬼の恋敵だなんてね」
そういって酒呑童子が腕を振り下ろそうとした途端、酒呑童子の動きが止まった。酒呑童子の腕に紐・・・にしては太い何かが巻きついていたのだ。
「そこまでだよ、酒呑童子!」
酒呑童子の腕に巻きついているのは首だ。首の先にろくろ首の怒った顔が乗っかっている。
「由布由殿!ただ今助けまするぞ!」
子供のちっこい体つきのカラス天狗が窓から飛んで入ってくると、酒呑童子に錫杖を向ける。俺はようやくほっとした、がそれもつかの間だった。
「誰かと思えばカラスにろくろか。お前らみたいな子供だまし専門のような妖怪なぞ相手にするのも面倒くさい」
「言ってくれるじゃねーか」
玄関から出てきたのはのっぺらぼうだった。顔にちゃんと目や鼻はついている。
「やい、酒呑童子。表に出ろ」
「なんだ?鬼と決闘か?」
「甘ったれた勘違いをするな。嫌われ者の鬼のお前に正当な手段で勝つ必要はない」
酒呑童子は状況を察すると、ふっと笑った。
「構わん。束になってかかって来い。ハンデにもならないがね」
「さすが鬼の大将、恐るべき力だ」
怪力を目の当たりにした見上げ入道は目を丸くした。
「分かった、お前がそこまで想ってるんならいまさらお前の恋路を邪魔しないようにしよう」
見上げ入道がそういうと酒呑童子は目を輝かせる。
「ほ、本当か?」
「本当だ。お前の正体はあの娘には言わないし、お前らが二人でいる時は俺も現れないようにしよう」
見上げ入道は少し薄ら笑いを浮かべながら続けた。
「本当に警戒をするべきはあの由布由とか言う人間だな」
「由布・・・由?」
酒呑童子が聞き返した。
「美香とか言うあの娘、いつもあの由布由という男と一緒にいる」
「だ、だが・・・由布由には雪女がいるはずじゃないのか?」
「そこが人間の心情の複雑なところよ。俺と違ってお前は昔人間だったんだから分かるだろう?女が一度男に惚れ込んだら死ぬまであきらめないことを」
「・・・」
酒呑童子は黙り込んだ。
「由布由を始末するしかない・・・」
酒呑童子は押し黙った後、まるでうわごとのようにそう言った。その顔は人間の顔ではなく、鬼の真っ赤な顔になっていた。
「いってくる、入道」
「気をつけることだ」
酒呑童子を見送った後、影から雪男が出てきた。
「上手くいったようだな。入道」
「あぁ」
「だが大丈夫か?由布由とか言う人間はいろんな妖怪から守られている。雪女にツララ女にカラス天狗・・・、こないだみたいに失敗するんじゃねぇか?」
すると見上げ入道は手を振った。
「酒呑童子はただの妖怪じゃない、鬼だ」
「鬼・・・か」
雪男が聞き返した。
「あぁ、本気を出した鬼は妖怪が束になってかかろうと勝てない。今回ばっかりは由布由も最後だ」
見上げ入道はそういうと霧のように姿を消した。
→ → → → →
夜、乱暴にドアを開ける音がしたのに最初に気がついたのはおゆきだった。
「だ、誰!」
おゆきがドアの方を見に行く、だが、ドアは開いていたもののあたりに人影はまったくなく、まるでさっきの音が幻だったようだ。
「あれ・・・?」
おゆきが首をかしげたとき、突然ゴツッという鈍い音とともにおゆきは次の瞬間には気絶していた。
「おゆきー、一体どうしたんだ?」
そんなことまったく知りようもない俺はおゆきのほうに声をかける。
「あ、いえ、風でドアが開いてしまったみたいです」
「そうだったのかぁ」
俺はおゆきの声だったのでつい安心してしまっていたが、これは酒呑童子の声真似の声だった。俺は安心して本でも読もうかと思い、本棚へと近づいた。
だが・・・
「え?」
棚の方へ行こうと玄関の前を通ったとき、おゆきが倒れていたのだ。そしてその代わりに酒呑童子が金棒を担いで立っていたのだ。
「しゅ、酒呑童子・・・」
「よぉ、由布由」
酒呑童子はそういうと、目にも止まらない速さで峰を金棒で打った。
「うぐっ・・・!」
「変に抵抗しないほうがいいぜ。いくら鬼でも楽に死なせてやりたいという情けはある」
間違いなく殺される、というか殺.すのが目的で来たのに違いない。酒呑童子が高々と金棒を振り上げた。
「あんたもつくづくついてないね。雪男と鬼の恋敵だなんてね」
そういって酒呑童子が腕を振り下ろそうとした途端、酒呑童子の動きが止まった。酒呑童子の腕に紐・・・にしては太い何かが巻きついていたのだ。
「そこまでだよ、酒呑童子!」
酒呑童子の腕に巻きついているのは首だ。首の先にろくろ首の怒った顔が乗っかっている。
「由布由殿!ただ今助けまするぞ!」
子供のちっこい体つきのカラス天狗が窓から飛んで入ってくると、酒呑童子に錫杖を向ける。俺はようやくほっとした、がそれもつかの間だった。
「誰かと思えばカラスにろくろか。お前らみたいな子供だまし専門のような妖怪なぞ相手にするのも面倒くさい」
「言ってくれるじゃねーか」
玄関から出てきたのはのっぺらぼうだった。顔にちゃんと目や鼻はついている。
「やい、酒呑童子。表に出ろ」
「なんだ?鬼と決闘か?」
「甘ったれた勘違いをするな。嫌われ者の鬼のお前に正当な手段で勝つ必要はない」
酒呑童子は状況を察すると、ふっと笑った。
「構わん。束になってかかって来い。ハンデにもならないがね」
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