第三節 勇気と告白
私の両親は共に、サーヴァントを持つマスターだった。
父は海外にいたので、私は母と2人暮らしで。
母はキャリアウーマンだったものの、仕事の傍私に構ってくれた優しい人だった。
よく駅で待ち合わせて一緒に帰り、帰りのコンビニでアイスを買うのが日課になっていた。
そんなある日、いつもの待ち合わせの場所で。
携帯をいじりながら母を待っていた。
「リツカ、お待たせ」
「あ!お疲れさ」
顔を上げると、母の隣には見知らぬ男性。
私の中でその男性の記憶はとてもあいまいだ。
男性の姿がはっきりと思い出せない。記憶にモヤがかかっているのだ。
でも、すごい威圧感・・・嫌な印象だったことは明確に覚えている。
「・・・・」
「あ、私の新しいサーヴァントの×××××だよ。今のミッションの都合で、少しの間一緒に済むことになるんだけど、よろしくね。」
「そうなんだ。・・よろしくお願いします。」
「あぁ、しばらくお邪魔するぞ。よろしくな。」
はじめはぎこちないし、慣れない日々が続いた。
そりゃそうだ、お父さんが海外にいるから、サーヴァントとはいえ男性と同居する経験なんてあまりなかったのだから。
そのサーヴァントと私は、慣れてからはよく一緒に話すこともあった。
「リツカは、この世界をどう思う」
「どう思う、か?うーん・・・空がきれいだし、アイスが美味しいし、好きだな。」
「そうか。
私は、この世界は不完全であると思う。ヒトには必ず終わりがある。歴史は間違いを繰り返す。完全な世界こそ、私の求めるもの」
「凄いこと考えてるんだね。
・・・確かに、皆いつかは死んじゃうし、悪いことをしてしまうことも誰しもある。
でも、だからこそ精一杯生きようと思うし、ドラマがあると思う」
「・・・お前はそう思うか」
お母さんとそのサーヴァントは、ちょうど日本で起こっていたサーヴァント絡みの争いを解決すべく、動き回っていたらしい。
家に帰ってくるのは偶に。
でもある日、ちょっと「あれ?」と思うことがあった。
深夜3時。ふと目が覚めて、のどの渇きに水を飲みに行こうとした。
母親の部屋を通ると、声がかすかに聞こえたので。
「お、珍しく帰ってきてる・・にしても遅い時間に・・・」
と思い、ドアに近づいてみる。
〈・・・やめて。あなたはサーヴァントでしょ。マスターの指示を遂行するだけでいい。
余計な感情や個人的な願望はいらないわ〉
喧嘩してる?
お母さんの真剣な声に、ふっと聞き耳を立てた。
ドアに持たれていると、開いていたらしく、体重に任せて部屋に倒れこんでしまった。
「・・・っあ!」
「リツカ!起きてたの!」
「ごめん、水飲もうとしたらつまずいて空いちゃった・・・」
とても苦しい言い訳をする私。驚くお母さんの隣には、サーヴァント。
その時の彼の表情は、まるで私に聞かれていたことを楽しんでいるかのように、
不敵な笑みを浮かべていた。気がする。
それからだ。母の体にあざが増えた。口論はしていないようだったが、
こころなしか母親はどこか上の空の表情をすることが増えた。
そんな日々が続いてすぐ。あの痛ましい事件が起きた。
幼い私は、何が起きたのか全然理解できなかった。
2人の間に何が起きたのか。どんな関係だったのか。
なぜか誰も教えてくれなかった。
私は、母が好きだった。母と父の仕事も、凄いことなんだ。と思い、憧れていた。
マスターを志した私は、魔術を学ぶうち、これまでのマスターのデータベースを閲覧する機会もあった。だがそこには、その事件のことは抹消されていた。
私の記憶にも、もやがかかっている。
今回の特異点は、それを明かすものなんだろう。
覚悟はもう、できている。
ーーーーーーーーーーーーー
「え!!ダヴィンチちゃんの魔術で、あの結界を弱められるの!すごい!!」
「あぁ。私に任せて。私の力と、リツカちゃん、君の魔力をちょっともらえれば、弱められる。
結界を弱めたら、いよいよあの家に潜入するよ。覚悟はいいかい?」
「もちろんです。」
「後衛でサポートさせてもらうぞ」
「えぇ。指揮お願いします!先輩!」
「・・・うん、みんな、今回もよろしくね。」
私の家の前に着く。
ダヴィンチちゃんは結界を弱めてくれた。
2人の力で弱められたのは、この世界におけるキーマンだから、らしい。
敷地内に足を踏み入れる。
あの事件があった日以来だ・・・ここに来るのは。
私はあの事件以来、父と一緒に別の場所に住むことになった。
そうだ、この先にはあの因縁のサーヴァント・・・
恐らく母を殺したサーヴァントがいる。
彼と対峙する前に、私の「事情」を皆に話さなければ。
「みんな、進む前に、話しておかないといけないことがある。」
私はこの特異点にまつわる記憶全て、皆に話した。
ダヴィンチちゃんは少し悲しそうな顔をして、
マシュは所々目を丸くしながら、
アルジュナは感情こそわからないが神妙な面持ちで、
アンデルセンは興味深げな顔で、
それぞれに私の話を聞いてくれた。
思えば一から私のこの過去を人に話したことはなかったから、所々言語化に詰まることもあった。
父は海外にいたので、私は母と2人暮らしで。
母はキャリアウーマンだったものの、仕事の傍私に構ってくれた優しい人だった。
よく駅で待ち合わせて一緒に帰り、帰りのコンビニでアイスを買うのが日課になっていた。
そんなある日、いつもの待ち合わせの場所で。
携帯をいじりながら母を待っていた。
「リツカ、お待たせ」
「あ!お疲れさ」
顔を上げると、母の隣には見知らぬ男性。
私の中でその男性の記憶はとてもあいまいだ。
男性の姿がはっきりと思い出せない。記憶にモヤがかかっているのだ。
でも、すごい威圧感・・・嫌な印象だったことは明確に覚えている。
「・・・・」
「あ、私の新しいサーヴァントの×××××だよ。今のミッションの都合で、少しの間一緒に済むことになるんだけど、よろしくね。」
「そうなんだ。・・よろしくお願いします。」
「あぁ、しばらくお邪魔するぞ。よろしくな。」
はじめはぎこちないし、慣れない日々が続いた。
そりゃそうだ、お父さんが海外にいるから、サーヴァントとはいえ男性と同居する経験なんてあまりなかったのだから。
そのサーヴァントと私は、慣れてからはよく一緒に話すこともあった。
「リツカは、この世界をどう思う」
「どう思う、か?うーん・・・空がきれいだし、アイスが美味しいし、好きだな。」
「そうか。
私は、この世界は不完全であると思う。ヒトには必ず終わりがある。歴史は間違いを繰り返す。完全な世界こそ、私の求めるもの」
「凄いこと考えてるんだね。
・・・確かに、皆いつかは死んじゃうし、悪いことをしてしまうことも誰しもある。
でも、だからこそ精一杯生きようと思うし、ドラマがあると思う」
「・・・お前はそう思うか」
お母さんとそのサーヴァントは、ちょうど日本で起こっていたサーヴァント絡みの争いを解決すべく、動き回っていたらしい。
家に帰ってくるのは偶に。
でもある日、ちょっと「あれ?」と思うことがあった。
深夜3時。ふと目が覚めて、のどの渇きに水を飲みに行こうとした。
母親の部屋を通ると、声がかすかに聞こえたので。
「お、珍しく帰ってきてる・・にしても遅い時間に・・・」
と思い、ドアに近づいてみる。
〈・・・やめて。あなたはサーヴァントでしょ。マスターの指示を遂行するだけでいい。
余計な感情や個人的な願望はいらないわ〉
喧嘩してる?
お母さんの真剣な声に、ふっと聞き耳を立てた。
ドアに持たれていると、開いていたらしく、体重に任せて部屋に倒れこんでしまった。
「・・・っあ!」
「リツカ!起きてたの!」
「ごめん、水飲もうとしたらつまずいて空いちゃった・・・」
とても苦しい言い訳をする私。驚くお母さんの隣には、サーヴァント。
その時の彼の表情は、まるで私に聞かれていたことを楽しんでいるかのように、
不敵な笑みを浮かべていた。気がする。
それからだ。母の体にあざが増えた。口論はしていないようだったが、
こころなしか母親はどこか上の空の表情をすることが増えた。
そんな日々が続いてすぐ。あの痛ましい事件が起きた。
幼い私は、何が起きたのか全然理解できなかった。
2人の間に何が起きたのか。どんな関係だったのか。
なぜか誰も教えてくれなかった。
私は、母が好きだった。母と父の仕事も、凄いことなんだ。と思い、憧れていた。
マスターを志した私は、魔術を学ぶうち、これまでのマスターのデータベースを閲覧する機会もあった。だがそこには、その事件のことは抹消されていた。
私の記憶にも、もやがかかっている。
今回の特異点は、それを明かすものなんだろう。
覚悟はもう、できている。
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「え!!ダヴィンチちゃんの魔術で、あの結界を弱められるの!すごい!!」
「あぁ。私に任せて。私の力と、リツカちゃん、君の魔力をちょっともらえれば、弱められる。
結界を弱めたら、いよいよあの家に潜入するよ。覚悟はいいかい?」
「もちろんです。」
「後衛でサポートさせてもらうぞ」
「えぇ。指揮お願いします!先輩!」
「・・・うん、みんな、今回もよろしくね。」
私の家の前に着く。
ダヴィンチちゃんは結界を弱めてくれた。
2人の力で弱められたのは、この世界におけるキーマンだから、らしい。
敷地内に足を踏み入れる。
あの事件があった日以来だ・・・ここに来るのは。
私はあの事件以来、父と一緒に別の場所に住むことになった。
そうだ、この先にはあの因縁のサーヴァント・・・
恐らく母を殺したサーヴァントがいる。
彼と対峙する前に、私の「事情」を皆に話さなければ。
「みんな、進む前に、話しておかないといけないことがある。」
私はこの特異点にまつわる記憶全て、皆に話した。
ダヴィンチちゃんは少し悲しそうな顔をして、
マシュは所々目を丸くしながら、
アルジュナは感情こそわからないが神妙な面持ちで、
アンデルセンは興味深げな顔で、
それぞれに私の話を聞いてくれた。
思えば一から私のこの過去を人に話したことはなかったから、所々言語化に詰まることもあった。
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