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fate もしもモードレッドが喚ばれたら

原作: Fate 作者: MM
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妖姫の真髄

 臓腑の爛れ堕ちる呪詛の炎、圧死させる湖の水をぶつけられようとも。セイバーの肉体には何の意味も成さない。
「何かしたのか?」

「面倒なスキルを発揮しているじゃないか」
 高ランクの対魔力が全てをシャットアウトして、彼女の鎧に曇りすらつけられず。絶対的な相性差が存在している。

「この程度の抗いしか出来ねえなら、殺しちまうぜ」
「クラスの縛りは面倒だな」
 当然の様に、セイバーはキャスターを殺しきれるだろう。

「はっ! さすがのババアも、英霊になっちまったらこの程度か」
 本来ならばこうも容易くは仕留められなかった。クラスによる相性は、2人の力関係を大きく変動させている。元よりモルガンは加護を受けし超人。魔術だけの女でもないが、魔術師の縛りが力を許さない。

「ふふ、否定はせんよ。セイバークラスの対魔力は面倒だ」
 一切の手札が通用しない。一方的に攻められている。かといって、魔術を捨てて戦えば死ぬ。理不尽な性能だ。

 さすがは最良のクラスと言えよう。
このままでは早々に決着がついてしまうだろう。空間を歪めさせ背後から強襲しても。
「見えてんだよ!!」

 セイバーの直感が不意打ちも許さない。攻守共に隙がないんだ。
 騎士王の血を引きし者である。聖剣の力を度外視したなら、彼女はアーサー王に匹敵する能力を宿している。

 他ならぬキャスターが錬造した生命体である。性能は熟知している。このまま戦っても、確実に負けてしまうだろう。
「直感も良い。さすがは私の人形の最高傑作だ」
 
 アーサー王を凌駕する性能を求めたんだ。この程度は想定済みである。感情面ではまだ脆いが、補って余りある力を宿していた。
「アグラヴェインなどとは違った良さがあろうよ」
 戦闘においては、モードレッドこそ最強に近い。
 
 無論、ガウェインなどの強者がいるがね。どんな手を使ってでも勝利する執念は、彼女だけが持ち得たモノであった。
 己を認められない彼女は、果てもなく勝利を求められる。

「弱音を吐いてどうした? そんなに死にてえなら、とっとと首を差し出せよ」
「ぬかせ。確かに貴様は強かろうよ。しかしここは神殿だ」
 それでも此処は彼女の腹の中だ。

 作成された神殿の支配力は、幾らセイバーでも容易く突破できない。こうしてキャスターが生きているのが何よりの証拠であろう。
 三身であるものの一面。戦乙女の在り方が、セイバーの猛攻を防いでいた。

 かつては敵うはずもなかった超人が、今ではこうまで弱っている。
「呆気ねえ。ババアもこうなったら終りだな」 
 慢心すら感じさせる言葉は真理だが、甘い。
「油断したな?」

 たった一騎でキャスターを討ち取れると思った傲慢さ。その対価は払うことになる。――音もなく空間転移。セイバーに抱きつく形で拘束した。
「テメエ。これが魔術師の筋力か…!?」

 漆黒の鎧が軋み挙げるほどの筋力だ。加護を受けし超人の力は、容易く引きはがせるレベルじゃない。洒落にならない怪力だった。
「物理的な拘束ならば問題はなかろう?」

 セイバーの鎧が軋む程の怪力だ。並の英霊ならば絞め殺されていただろう。
 しかし、彼女は白兵戦において最強のクラス。この距離は剣士のモノであろうよ。

「その程度で…!」
 このまま仕留められると思うな。元より筋力だけならば、セイバーの方が優れているのだから。魔力放出の予兆を感じる。魔術で防ぐも限界が近い。

 だが、そんな事はキャスターも承知の上だ。冷静さを欠いている。目の前の相手にだけ対処していれば、自然と周囲への対応が遅れてしまう。
 普段ならば、こうまで脆くはなかったのだろうがね。
 心の揺れが彼女の直感を遮って、更なる窮地を呼び込むんだ。

「ああだから……伏兵を用意した」
「ごぶっ!?」
 胸から黄金の剣が生えている。一切の予兆を感じなかった。神殿の影響か。直感をすり抜けた一撃だった。

「父、上…?」
 アーサー王だけが扱える絶対なる宝剣――|約束された勝利の剣《エクスカリバー》が、彼女の霊核を刺し貫いているんだ。

 ありえない。どうして。何があった。幾層もの疑問を抱きながら、ここにセイバーが取り込まれていった。
「アコロンよ。よくやった」
 そう喚ばれて現れた英霊は、アサシン。最後の一騎の姿である。

「ま、俺はお前さんに喚ばれた英霊だからな」
 へらへらと笑う金髪の青年。騎士鎧に身を包んだだけの、平凡な男が佇んでいる。両手で握る聖剣の格だけが、彼に似合わなかった。
 彼の静かな言葉に、三身の在り方がまた変動する。

「ふっ。貴方がいないと始まらないじゃない」
 無邪気な乙女みたいに笑っていた。深い好意を感じる。
「そいつは嬉しいがね。対処しないと消えちまうぜ」

「おっと。忘れる所だった」
 自身に許された宝具の力を解放する。
「我が運命の奴隷よ。今一度、貴様の力を頂くとしようか――|策謀渦巻く我が子宮《ブリテン・オブ・モルガーン》」」

 泥の如き影がセイバーを呑み込んで、キャスターの胎内へと取り込ませる。士郎との繋がりを切断されて、彼女は新たな命へと転生していった。
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