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fate もしもモードレッドが喚ばれたら

原作: Fate 作者: MM
目次

初戦、互いに力量は見せず

 膨大な魔力が編み込まれていく。英霊達の至った座から一側面を降ろす奇跡。
 魔術回路がその存在と接続されている。熱い。流れ出ていく力と、その先に繋がっている存在を――自身の英霊を意識しながら。

 倒れ見上げる彼を見定めるように、ただ忠義を示すだけの騎士の如く。悪魔にも似た異形の双角が特徴的な兜。禍々しさすら帯びた漆黒の騎士鎧が印象的だ。

 重厚な防具は陰を帯びていて、この英霊の一面を強く顕現しているのだと。繋がりから直感させられた。
 反英雄、即ち反英霊。輝かしい英雄に挑んだ逸話を持つ者達の性質だ。

 目の前の騎士もまた、そうした性質を宿しているのだろう。更に読み取ろうとするが、朧気にぼやけて見られない。阻害の力か? マスターにすら見せない所を見ると、宝具クラスに特化した力なのだろう。

 声が、静寂へと澄み響く。
「問おう。貴方が私のマスターか」
 どこか貼り付けたような丁寧な口調。穏やかながらも力強さに溢れて、目の前の騎士を理解させる。

 今、問いかけている存在もまた別格だ。人の領域を大きく超えた英霊なのだと分からせてくれた。
「七人目のサーヴァントか。つくづく、持っていやがるな坊主」

 口笛を吹きそうな軽い言葉だった。相当に肝が据わっていよう。
「…どうやら緊迫した場面のようですね」
 なぜだか楽しそうに言葉を紡いでから、迷わずに行動する。目の前の槍兵への剣戟を紡いだ。

「ぐおっ!?」
 ただ一太刀で槍兵をはじき飛ばす膂力は、純粋な筋力にあらず。
 紅色の雷光が、剣士の剣戟を補助しているのだ。息つく間も許さずに、爆発的な加速で追撃した。

 音を引き裂き重たい斬撃が、槍兵の命を狙っていく。美しい白銀の剣は迷いなく。瞬時に間合いを詰めての連撃は、槍兵の反撃を許さない。
「舐めるなよ!!」

 剣の間合いでも劣らない。槍術の冴えも素晴らしい。
 白銀の剣と紅の魔槍がぶつかり合った。しなり軋むように金属音が響く。膨大な魔力のぶつかり合いは、音の壁すら突破している。
 重厚な衝撃の圧力を感じる。側で見守る士郎の肌を叩いた。

 まったくの互角。セイバーが若干圧しているが、ランサーが攻勢を許さない。大した戦闘能力だ。生き抜く力を感じ取った。
 一瞬の間を読んで転じ、今度は槍兵が間合いをとっての仕切り直しだ。

 距離を取られ戦場に間が開く。容易には距離を詰められない。刺突の餌食となるだろう。
「大した逃げ足だな、ランサー」
 からかいを乗せた挑発の言葉を無視して、男が口を開いた。

「…獲物は剣、セイバーのサーヴァントか。となるとあの紅いのはアーチャーだったと」
 その論理で言うならば、青い槍兵はやはりランサーなのだろう。

 挑発にも乗らず静かに笑う姿は、彼の圧倒的な力量を感じさせた。
 まだランサーの切り札は残っている。紅い騎士に死を予感させた一撃を、彼は隠し持っているんだ。
「お前さんで戦争の駒が出揃ったわけだが」

 構えを解いて自然体のまま言葉が続く。
「どうだい? ここら辺で手打ちとしねえか」
 まだ戦争は始まったばかりだ。ここで負傷するのは望ましくない。それは互いに同じ事だろう。何より士郎が困惑している。

 セイバーに有利な提案に聞こえるが、静かに言葉を返す。
「…不都合な制約を取り払いたいと?」

 ランサーの体に紅の制約が見えた。令呪の力だ。
 英霊を従える三画の奇跡の一画が、彼の動きに制約を与えているのだ。全力を出さずにセイバーと戦える時点で、相当な格の英霊なのだろう。
 無論、本気を見せていないのはセイバーも同じなのだがね。

「見えてるならしょうがねえ。やるかい?」
「いえ、良いでしょう。私もマスターと話し合う必要がある」
 続く言葉は嘲笑を感じさせながら、そうして絶対の自信を感じられる。

 要するに、全力を出そうが負けないと断言しているのだ。丁寧な口調に反して、妙に傲慢な雰囲気である。
「逃げるならば見逃してあげますよ」

 ぴきりとランサーの額に血管が浮かんだが、動じず。
「ちっ! 嫌味な奴だぜ。…今度会う時は最後まで殺し合おう」
 軽い跳躍で屋根に乗った。素早い身のこなしは底が知れない。

 切り札以外にもまだまだ力を隠しているのか。やはり、相当な格の英霊らしい。油断は出来ない相手だ。

「またな」
 一瞬のうちに姿を消した。追いつこうと思っても追いつけない。大したスピードである。
「凄まじい俊敏性だ。まともに相手取れば厄介だな」
 傲慢さすら感じるセイバーが言うのだ。相当な能力である。

 呟きを残してから、己の様子を見る士郎に気付いたらしい。
 戦闘時とは一転して、とても穏やかに声をかける。
「無事ですか、マスター」
「その」

 困惑して、完全に状況が理解出来ていなかった。
 無理もない。魔術使いとはいえ…いや。魔術使いだからこそ。

 目の前で起きている奇跡が、人の身に許されたモノではない事実に、深く気付いてしまった。あまりにも常識を越えている

「事情がおありの様だ」
 丁寧で敬意を示す言葉は、なぜだか嘘くさく聞こえたけれども。話は進み。
「話をしませんか?」
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