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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT211    『迷い』


「……フェネクスに組み込まれているNTDのバージョンは、アナハイム・エレクトロニクスに提供させた情報を元に再構築されている。1号機、2号機のユニコーンガンダムたちとは異なり、実験ではなく実戦的な仕様に組み立てているのよ」

「その新世代のNTDは、完全なバーサーク・マシーンなわけか」

「そうなるでしょうね。分かりやすく言えば」

「……リタは……民間人を殺したことを嘆くことが出来ているだろうか」

「……分からないわ。でも……本来のリタの行動じゃない。今までの行動パターンは、もっと抑制的だった。リタの肉体的な生命活動は……もしかしたら止まっているのかもしれない。でも、サイコフレームには、リタの意志が宿り、暴走したがるNTDを止めようとしている」

「……そうだな…………被害が出たのは?」

「学園都市があるコロニー群だ。NTDは軍用の攻撃システムだ。民間人を設定しているという意味は……一年戦争級の大戦を想定しているということだろう。総力戦のつもりで攻撃する……ティターンズのように、スペースノイドを容赦なく排除することも想定したデザインだろう」

「……サイアクだな。そうか…………なるほど、だから……ティターンズに脳改造を受けたリタを使ったのか。ティターンズの仕様と、スペースノイド殲滅用のシステムは、本来ならマッチするだろうからな。相性が良さそうだ…………クソがッ!!」

 イライラを抑えきることの出来ないジュナ・バシュタ少尉が、輸送船の壁を蹴りつけていた。無重力は彼女の不作法に罰を与えて、彼女の体を宙に浮かばせていた。天井まで飛んだあとで、ジュナはその手のひらを使い、再び降りてくる……。

「フワフワとしやがって……ッ」

「無重力なのよ?暴れないコトね。全ての行いは反動つきで貴方に返却されることになるんだからね」

「……分かっている。戦場ではしくじらないようにするさ」

「そうね。そうして。貴方には死んで欲しくないのよ」

「……ああ。知ってるっての。それに、私だって死にたくはないんだ」

「なら、いいのよ……」

「……それで、今、この船はその現場に急行中ってことだな」

「ああ。本来のダマスカス合流ルートからは外れるがな。ダマスカスも、現場に急行している」

「コロニーへの通達はしたのか?」

「……連邦軍の軍事行動だぞ」

「……していないのか!」

「安心なさい。ルオ商会とアナハイム・エレクトロニクスのルートで、警戒するようにと伝えてあるわ……詳細までは教えなかった。コロニーの市民がパニックになって、他のコロニーへと逃げようとしたところで、NTDを刺激するだけよ」

「攻撃は一度だけか」

「今のところは、そうだ。どうあれ……捕獲を試みることになるぞ。あくまでも、リタ・ベルナル少尉の救出を考えるべきだ」

「……リタが、死んでいたとしても。連邦軍には渡さないぞ」

 イアゴ・ハーカナ少佐を睨みつけながら、ジュナ・バシュタ少尉は宣言する。イアゴ・ハーカナ少佐は瞳を閉じる。

「……考え事か、少佐?」

「……まあな。彼女の処遇を、どうすべきなのか、考えている……」

「決まっているわよ。私たちがもらうは、生死に問わず、リタもフェネクスも、私たちルオ商会がもらう」

「ミシェル・ルオ……フェネクスは、連邦軍の機体なんだぞ?」

「だから、何?」

「……連邦軍の試作機モビルスーツを、君たちに渡せると思っているのか?」

「ええ。そういう書類が欲しいなら、そのうちに送り届けるだけのことよ。いいかしら、イアゴ・ハーカナ少佐。貴方の心に問いかけなさい。私たちから、またリタ・ベルナルを奪うの?……彼女を、またモルモットにするだけの連邦軍なんかに、渡すのかしら?」

「…………いや。そうだな……それも、絶対に正しくないことだ……正しいコトをしたいが……フェネクスを君らルオ商会が確保することは、正しいコトなのか、分からないと感じてしまってな」

「連邦軍のモルモットにされるよりは、マシでしょ?……分からないのかしら?」

「……君の野心に、サイコフレームの大いなる力を渡すことも、リスクだと感じる」

「……よりマシなことを選びなさい。それが、世界を良くする方法でしょ?……人には、そういう些細な選択を繰り返すことでしか、世界なんて変えられないのよ」

「選べというのか?」

「必要なら、選びなさいな。地球連邦軍の正義か、貴方の正義か……分かっていると思う

けれど、貴方の正義はね、とっくの昔に、地球連邦軍の掲げている正義から、遠ざかってしまっていうるんだからね」

「軍務には、忠実な男として生きて来たのだがな……」

「不名誉なことじゃないわ。地球連邦軍がクソだってこと、誰よりも知っているでしょ。ティターンズを生んだ組織だわ……連邦政府の腐敗も酷いものよ。この体制は、きっと長くは続かないわ」

「……秩序の基盤ではあった。それが、地球連邦の唯一にして無二の良いところなのだと、オレは認識しているんだがな……」

「ご託はいい」

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