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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT194    『技術交流』


「……ウフフ。オーガスタの被害者である私の前で、よく言えたわね」
「……すみません。素直なんですよ。我々は、そういう情報や技術が欲しいからこそ……ジオンにだって技術の交換を行っています」
「素直過ぎるな。オレが地球連邦軍人の制服を着ているのは、コスプレではないんだぞ」
「あはは……ご勘弁を。我々はメーカーですからね。法律で禁じられていない技術協力はお互いがしています……νガンダムのサイコフレームの出所だって、ネオ・ジオンでしらからね」
「どういうこと?敵同士だったはずよね、当時は?」
「さて……シャア・アズナブルがアムロ・レイ大尉のために流してくれたんじゃないでしょうかね」
「何故?」
「より強いモビルスーツに乗って欲しかったとか……もしかしたら、止めて欲しかったんじゃないでしょうかね、加速する自分の野心を……アクシズを地球に落とすなんてことは、やはり常軌を逸している……」
「……そうね。現場にいた人物として、その感想に同意することは出来るかしらね、イアゴ・ハーカナ少佐は?」
「オレに訊くのか?……ニュータイプの考えは、今のアンタの方がよく分かるんじゃないか、ミシェル・ルオ」
「私は専門的なパイロットじゃないもの。オーガスタでも仕込まれてはいたし、筋繊維も強化されてはいる……でも、パイロットとしての時間を過ごしたワケじゃないわ。現場にいた人の直感としては、どうなの?」
「……オレにも分からん。シャア・アズナブル……ジオン・ズム・ダイクンの息子が、どうしてあんな極端な行為に及んだのか……狂っていると言えば、そうなのかもしれないが。地球連邦に絶望しているのは、分かる…………だが、たしかに……あの現場にいた者としては……あんな破壊的な行為が、人類が選ぶべき道だとは、思えなかった。思想家としての意地や、政治的な理由もあったのだろう。それでも……どこか、止めて欲しいと願う要素もあったんじゃないだろうか」
「……なるほどね。自分のライバルに、自分の行いを止めて欲しかった。そういうのって男は理解することが出来るのかしらね?……女としては、それなら最初からやるな……って、なっちゃうけど?」
「手厳しいが、事実ですな。その通り、すべきことでないことは、しないのがイチバンじゃありましょうね……でも、シャア・アズナブルという人は、ニュータイプを……人の進化を信じていた人ですから。地球側につく人々にも、チャンスを与えたんじゃないでしょうか。自分を超えられるほどの力を示せるのなら、それこそが、人の革新を信じるための根拠になったんじゃないか……そんな風に、私は思っていますよ」
「……難しいわね、男のヒトたちの心って」
「まあ、シャア・アズナブルっていう人は、とくに複雑な立場だったでしょうし、不思議な人生を送っていましたよ」
「本人以外には、理解することの出来ない考えもあるってことかしらね……」
 ……そこは、私も同じようなものか。ステファニー・ルオお姉さまを殺してまで、シンギュラリティ・ワン……技術的特異点である、フェネクスを手に入れようとしている。
 『永遠の命』―――死からの解放を願いながら、そんな力を手に入れようと必死なわけだものね…………一般的な視点から私の行動を解釈してもらったら、ただの狂気という結論を得ることになるかもしれないわ。
 まあ、分かってもらえなくてもいいわ。先駆者というか、新たな道を開こうとする人物は孤独なものよね、シャア・アズナブル……貴方の孤独と迷いぐらいは、理解することが出来る。
 私にだって、ステファニー・ルオと姉妹ごっこをすることが出来た可能性がある。一度でも、お姉さまが私に手料理でも作って下さったなら?……私は、安心することが出来たのかもしれない。強化人間ってね、依存性が強くなっちゃうんですって。
 ……ニュータイプも同じかしらね、シャア・アズナブル?
「……まあ。とにかく、我々は技術屋ですからね。貪欲に技術の交換を様々な組織と行っていますよ。テロリストと世間サマが断じる組織と、結果的に取引したことだってあります」
「……テロリスト?……ああ、『袖付き』たちか」
「ええ……でも、言わせてもらえれば、それは地球連邦軍だって同じことですよ」
「どういうことだ?」
「…………あれ?言わない方がいいことですかね、ミシェル・ルオさん?」
「言ってもいいんじゃないの。彼は愛する自分の組織が、裏でどんなことをしているのかも知りたいんじゃないかしらね?」
「……皮肉はやめてくれ、ステファニー・ルオ。オレは……色々と興味がわいているだけのことだ。教えてくれないか?」
「……えーと。タイムリーな話題になっちゃいますけど……ユニコーンガンダム3号機、フェネクス……あの機体が証拠ですよ。アレって、我々も技術を一部は提供・開示しちゃいますけどね……地球連邦軍が独自に開発した機体です。あの機体に使われているサイコフレームは、我々の技術よりも進んでいるんです。そのノウハウってどこから来たか、分かりますよね」

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