ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT195    『闇』





「……ネオ・ジオン……いや、『袖付き』から送られて来た情報で、地球連邦軍は独自のサイコフレームを作り出したということか?」
「そうですよ。我々は提供した技術だけでは、あそこまでの純度のサイコフレームは作り出せませんからね。私たちの基礎的なサイコフレーム技術に、地球連邦軍の莫大な開発予算と豊富な人材……そして、最もサイコフレームにフィードバックすべき情報を有している、ニュータイプと強化人間たちの宝庫、ネオ・ジオンの『袖付き』……それらが組み合わさることで、初めてユニコーンガンダム3号機、フェネクスは完成出来るんですよ。それ以外の手段では、その状況は発生することはございません」
「……なるほどな」
「おそらく、地球連邦軍も何かを渡しているのでしょう、『袖付き』に」
「でしょうね。タダで機密情報をくれるほど、『袖付き』の皆さんだって地球連邦軍と仲良しなはハズはない……オーガスタの戦争犯罪人どもから得た情報も……私たちの知人たちを切り刻んで作った情報も、『袖付き』に提供したのかしらね」
「……それも魅力的な情報ではあるでしょうな。ああ……あくまでも、技術としてです。倫理的には、私だって反対ですよ?フラナガン機関もオーガスタ研究所も……人体実験はすべきじゃない………………しかし、したとすれば、その情報があるのなら、データがあるというのなら……やはり、閲覧したいという好奇心を殺せません」
「そういうのが、人に道を誤らせることになるのかもしれないわね」
 ……そうだからこそ、多くの血が流されて来た。人は何かを得るためには、どうしたって対価を支払う必要が出て来るのだから。その対価は、ときに血なまぐさくなる。私が顔と名前を知っている子供たちの、頭蓋骨を切り裂いて……脳を取り出して、インプラントを埋め込んで、精神を壊して、調整して……アムロ・レイに似たモンスター・パイロットを作ろうとした。
 あまりにも罪深いことだわ。
 でもね。
 でも……そうなのよ。それだけのことをして創り出した技術を、手放すなんて……それこそが罪深い行為のように、私には思えるのよね。サイコフレームの封印?……バカげているわ。開きかけているのよ?……人の技術的限界を超えた、大いなる世界への扉が?……永遠の命が?……生と死の超越が……可能になるのかもしれないというのに。
 逃げる方が罪だと思わないかしらね……?
「…………それで、工場長よ。『袖付き』に、連邦軍は何を提供したと考えているんだ?」
「……シナンジュ。次世代のガンダム候補だった機体ですよ」
「シナンジュ……フルフロンタルの愛機か」
「ええ。相当な強さだったでしょう?」
「……あの機体は、元々、フルフロンタルに強奪されたというハナシだったが……クソ、それ自体が、やらせだったということか」
「教えたのね。シナンジュが乗った輸送機の場所を、『袖付き』のフルフロンタルに対して流してしまった……あとは、フルフロンタルが勝手に強奪してくれる。そうすれば、表面上の体裁は整うわね。『袖付き』に強奪されたっていう。『袖付き』に直接、プレゼントするわけにはいかないものね……賢い取引をするのね、地球連邦軍も」
「頭が痛くなる……ッ。ネオ・ジオンに最高のモビルスーツの一つを提供したということか……」
「ええ。その成果は、私たちから接収したサイコフレーム技術と、νガンダムとユニコーンガンダムのノウハウ。そして、ネオ・ジオンが長年集めて来たニュータイプと強化人間の情報。それらを得たんですよ、地球連邦軍は。その結果が、フェネクスのサイコフレームに反映されていますよ。光速すら出す、常軌を逸したスピード……1号機や2号機以上に、大きな能力を発揮するかもしれません……パイロットのニュータイプとしての能力次第でしょうがね……」
「……危険なハナシだな」
「ええ。サイコフレームは……私の個人的な意見では、研究を続けるべきものだと考えてはいますが、たしかに危険ではありますね。人の意志に反応して、能力を拡張させる機械……それは、リスクが大きな存在じゃありますから」
「……それでも、君は研究したいというわけか」
「まあ、そうですね……どこまで科学技術が発展するのかって、興味があるところなんですよね……まあ、それも、封印しようという流れですけどね。大手を振って研究することは、出来なくなる…………『袖付き』も壊滅していますし、サイコフレームの技術的な進化は停止することになるかもしれません……」
「……何であれ、鹵獲すべき機体であることには変わらない。光速でコロニーにでも突っ込まれてみろ?……何千万人死ぬか分からないような事態にだって、なりかねないぞ」
「……リタは、そこまではしないわよ。するとすれば……もっと別のことだと思うわ」
「……どんなことだというのだ、ミシェル・ルオ?……リタ・ベルナル少尉が、したがっていることとは……?」
「分からない?……リタはね、鳥になりたかったのよ。連邦軍のオモチャにされる場所から抜け出して、自由が得たかった。それぐらい、分からないかしら、連邦軍人」


目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。