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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT096    『チーム・プレイ』




『アハハハハハハハハッ!!マジでウケるわー!!』

『バカなヤツだぜ、オレたちに、オレたちの演技なんかに、騙されちまってやがる!!』

『な、なんだと!?しかし……どこから、今の射撃は……ッ!!?』

 ジェスタのパイロットは理解する。今の威力は、ジェスタのものだった……5キロほど先に、今の砲撃を実行したジェスタは存在している。それは地上に倒れ込んだまま、ビーム・ライフルを放ったようだ。

 あの大尉とやらに、やれてしまったジェスタの片割れ……。

『ど、どうなっていやがる……っ!?』

『―――ん?おお、無線が通じたよ』

 双子ではない声を、パイロットは聞いた。ノンビリとした腑抜けた声のハズなのに、何故だか全身が凍りつくような気持ちになる……。

『た、大尉って、お前か……っ!?』

『ああ。そうだ。うちのバカ・ツインズがお世話になったようだな?』

『どうして……なにを、した?』

『ハッキングだよ。古典的な方法だろ?』

『ハッキングだとッ!?……ジェスタの操縦システムを、奪ったというのか!?』

『そうだ。奪った。なかなかの早業だろ?……情報を共有するのって、便利なことだよなあ?……パイロットは死んでいたとしても、機体が動けば問題ない。操縦システムに対して電気信号を送り込めば、こんな芸当だって出来る』

『……ッ!!』

 バシュウウウウウウウウウウウウウウウウウンンンンッッ!!

 大尉がジャックしたジェスタが、ビーム・ライフルを撃ち放つ。双子と対峙しているジェスタは、巧みなステップワークでそのビームを回避する。

『ハハハハ。上手じゃないか。さすがに、エース級のパイロットさんには、二度も通じはしないか。ネタバレしていると、こんなもんだなあ』

『……貴様ッ!!許さないぞッ!!』

『これから死ぬヤツに、許してもらう必要はないぜ』

『何を!?』

 ガグン!!……パイロットは機体が大きく揺れたことを知る。ジェスタの足下に対して、ジェガンが両腕で抱きついていた。

『よう。オレのジェガンの脚を撃ち抜きやがった礼をしに来たぜ?』

『くそ、雑魚のくせに――――――――』

 ズシュウウウウウウウウウウウウンンンッッッ!!!

 双子の片割れが操るジェガンが放った、ビーム・サーベルによる突きが、ジェスタのコックピットを焼きながら突き破っていた。

『―――雑魚?……オレたち、大尉の下でー、あちこちでー、たくさん修羅場くぐって来たんでー……意外と、やる時はやるんだぜー……?』

『そういうこったな』

『……でも、マズいぜー……』

『ん?』

『コイツ、オレが突き刺すのと同時に、自分も突き刺して来やがった……核エンジンは外れてるけど、ちょっと爆発しそうだわー』

『早く脱出しろ。ツインズのもう一つのコクピットに飛び込んで、ホモっぽく抱き合っていやがれ』

『ホモじゃねーし!!」

 そう言いながらも、ジェガンから双子の一人が飛び降りていた。脇腹を逆手で貫くビーム・サーベルを見ながら……兄弟の待つ、ジェガンの開放されたコクピットへと飛び降りていた。

「へへへ!!エアバーックっ!!」

 そのかけ声と共に、コクピットにいる双子の片割れは、愛用のショットガンでコクピットの一部を射撃した。

 その瞬間、パイロットを守るための大型エアバッグが膨らみ、飛び降りてきていた自分の分身みたいなバカを受け止めていた。

『いい動きだ。やはり、常日頃から、アクション映画の真似事をして遊んでおくべきだな!せっかく、軍隊にいるんだから』

「そうすねー」

「ハッチしめるぜ」

 双子どもがいるコクピットが隔壁を閉鎖した次の瞬間、ジェガンは巨大な爆炎へと変化しながら、戦場に飛び散っていた―――。

『……無事だな?』

『は、はい。無事っすわー。ちょっと、ビビるほどには爆発してましたけどね。オレのジェガンが……勿体ねえ……』

『生きていたんだし、まあ、いいかなって思えなくもない。片脚を撃ち抜かれた時は、死ぬんだろうなって思ったもん』

『メメントモリってヤツだな』

『森?……自然保護区か何かっすかー?』

『オーストラリアにもあるんすね、放射能まみれの残念大陸のくせに……?』

『……まったく!!……モビルスーツ操縦の才能が、オレの十分の一ぐらいあって良かったな……お前たち、大人のくせにアホ過ぎるぜ……』

『大尉が悪いんすよー』

『オレたちがしている愚かな行為の半分は、間違いなく大尉の入れ知恵だもんなあ』

『……そこまで、オレは君らを悪の道に招いちゃいないと思うんだがね……?』

 大尉はグチャグチャになった敵兵の死体が転がる、ジェスタのコクピットの中で、首を捻りながら戦場を見ていた。双子どもは、オレのサポートもあり、勝利してしまったが……。

「スワンソンくんは、調子が悪そうだな……」

『だって、彼のこと大尉は殺しかけてたもんすねー』

『あばらが折れてるんでしょう。動くほどに、痛む。ボクシング経験者のオレには分かるっすわ。ああなっちゃうと、持久戦になってしまうと……もうダメでしょうよ』

「……そうだな。オレもそう思うよ。少しだけ、罪悪感がわいちまうなあ……」

 
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