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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT095    『4対3』




 片脚を撃ち抜かれて歩けるほどに、ジェガンは上出来なモビルスーツではない。

 宇宙空間でならばハナシは違ってくるが、重力を背負うことになる地上では、片脚になってしまえばどうすることも出来ない。

 ジェガンの一体が地上に沈む。

『ハハハハ!!低性能機で、よく逃げ回っていたようだが……さすがに、そう長くはもたなかったな!!お前たちの実力では、どうにもならんよ、ジェスタとの性能差は!!』

『むぎゅ!?』

 ジェスタの一体が、片脚を失ったジェガンを踏みつけた。ライフルの先端を胴体に向けている。人質に取ったつもりなのだろう……。

『……く。だ、大丈夫かよー?』

『い、生きちゃいるけど……っ。この状況……どうにもなりそうにねえ。な、なあ、ジェスタのパイロットさんよ?……お、オレのことを見逃してくれないか?……お、オレたち、こんなことに巻き込まれるような極悪人じゃないんだよ?』

『……はあ?……ジェガン3機を盗んで逃亡した連中がいたという報告がある。本来のオレたちは、そいつらを捕まえて、軍法会議にかけるのが予定だった。もちろん、ジェガンを回収してな。これは、軍の備品だ』

『ホント。その通りです。だからよう、ジェガン返すから、オレと……あそこにいる兄弟のことを見逃してくれねえか?……アンタたちだって、ムダな殺生とか好まないだろ?』

『……殺しは好きじゃなが、任務の失敗はオレたちの評価をガタ落ちさせるんだ。それは好ましくない。オレたちみたいな特殊部隊は……軍のなかでも特殊な立場になる。孤独なのさ。ヨゴレ仕事が多いから、オレたちは他の兵士たちとも仲良くなりにくい』

『じゃ、じゃあ。オレたちがアンタのダチになってやるぜ』

『ククク!……ホントかよ?……いいねえ。面白えぜ、それ……』

『おい。本気かよ?』

『……拘束して引き渡す。殺しはしない。コイツら、ただの雑魚だし……もう一機のほうも、逃げるのを止めている。たしかに、コイツらは兄弟なのかもしれないな』

『ガチでリアルに双子だって!!……同じ母ちゃんが同時に産むタイプの兄弟で、フツーの兄弟よりも仲が良いんだって!!オレのためなら、アイツも言うこと聞く!!刃向かったりしない!!何なら、大尉のして来た悪事の数々を教えるから、司法取引とかして、オレたちをフリーにしてくれってば!!』

『……大尉殿は、一体、どんな悪事をして来たというんだ?……ただのコソ泥だろ?』

『あの大尉が、コソ泥しかしていないワケないだろ!?……お前たち、大尉を何だと思っているんだ!?バケモノなんだぞ?……この数十分で、ジェスタを3機潰してる。整備不良気味のジェガンでだ!!』

 ……その言葉に、ジェスタのパイロットたちは興味を引かれていた。たしかに、あのジェガンはスペシャルだった。バカに強い。いや、機体そのものは弱いが……パイロットはただ者ではなさそうだ。

 2機の同僚たちを潰した。長らくコンビを組んできた連中だというのに、あっけなく下位機種に乗った、たった一人の前に負けてしまった……あり得ないことだ。

 我々は各部隊のエースを引き抜き、エースで構成されている部隊なのだ。それこそが、『ネームレス』のはずなのに……。

『お前たちの大尉とやらは、何者なんだ?』

『……興味が出たなら、教えてやるよ。おい、教えてやれって!!』

『……お、おー。大尉は、アレだ。一年戦争の頃から、戦いまくってるバリバリのベテランだな!!……嘘かホントか知らないけど、200機はモビルスーツを倒してるって言っていたぜ』

『200機だって!?……ほら吹きにも程がある。アムロ・レイじゃあるまいし、そんな戦績のヤツがいるわけがないだろ……?』

『どーかな。大尉は、クズだから。オレたちが仕留めた敵の数も、仲間に売ってたよ』

『はあ?』

『だからー。売るんだよ。出世して、仕事を増やされるよりはさ、他の腕の悪いヤツらをさっさっと出世させた方がいいじゃんかー?……パイロットとして腕が悪くても、出世さえすれば、ほとんどのヤツらが戦場から消えてくれる。オレたち、そっちの方が仕事が楽になるし。つまり、皆のためだ!』

『……本気かよ?』

『いや。そんなことは……さすがに、冗談だろ……?』

『アフリカ戦線がグダグダなの、お前らも知っているんじゃないのー?モラルもクソもねえよ、あんなところにさ』

『……それは、そうだが……』

『まかり通るというのか、撃墜数の売り買いなんてことが……?』

『まかり通るってー。だから、オレたちのジェガンは違法改造を見逃してもらえていたりしたんじゃないか。フツーだったら、整備士がチクるじゃん?……官製品を使わないと、軍隊の上層部が贔屓にしている業者が儲からないからさー!!』

『……何というか、コイツら、ろくでもない日々を送ってきているらしいな……』

『あきれ果てたぜ』

『需要があるんだもんよー、しょうがねえじゃないか?……オレたち、一つも悪くないもん。出世したいヤツが、金で名誉を買うなんて、大昔からの常識だろ?』

『……そうかもしれんが、パイロットとしてのプライドがないのか……?』

『無いね。そんなのにこだわっていたら、死んじまってたよー。オレたち、大尉と一緒だから、損耗率の高い戦場からでも戻れたんだ。今回は、ダメそうだけどよ』

『……悪運も尽きる時が来たんだよ』

『投降しろ。そして……大尉とやらの情報を、軍の上層部がどれだけ高く買ってくれるかに期待するんだな。司法取引次第では、お前たちは監獄の外で暮らせるかもしれんぞ』

『……んー……そうなら、嬉しいんだけど。実際のところ、そうなるもんかね?』

『……状況次第だ。オレたちが軍法会議を仕切るわけじゃないんだからな』

『そうだよ。だが、ムダな抵抗をすればするほど、状況が悪化するということだけは事実だろうな』

『投降すれば……抵抗しなければ、オレとー、兄弟のことをここで殺しはしないってさ、約束することが出来るのか?』

『それに関しては、約束してやってもいい。ムダな殺生は好まん……良心的な申し出だと思えよ。オレたちからすれば、お前たちを殺したっていいんだ。お前の兄弟を殺して、オレたちが二対一でお前を攻めたら、どうなる?』

『さすがに、オレでも死んじまうだろーな……うーん。そうだなぁ……なあ、兄弟。投降することにしちまうか?』

『おお、いいぜ。いくらでも投降しよう。大尉となんて、オサラバだ!!』

『……なら、まずは武器を捨てて、モビルスーツか――――――――』

 ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンッッッ!!!

 ジェガンを踏みつけていたジェスタが、粉微塵に爆散していく。双子たちが、爆笑していた!!


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