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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT088    『ジェガン対ジェスタ    その3』




 俊敏な動作で宙に愛機を跳ねさせながら、イアゴ・ハーカナ少佐も反撃を開始する。バルカン砲にはバルカンで応えてやるよ!!

 バルルルルルルルルルルルルルッ!!

 狙ったのは、後方に待機していた二機のジェガンに対してだった。性能差がある。

 音が違ったから、正規品のバルカン砲を、あの機体どもは搭載しちゃいないようだが……ジェスタのバルカン搭載スペースの方が基本設計の段階で大きい。オレのバルカン砲の方が、リーチも威力も精度も上だ!!

 ドガガガガガガガガガガガガガガッッ!!

 固まっていた二機のジェガンに対して、ダメージを負わせていく。バルカン砲はいつ撃たれるか分からない。

 威力は高いものじゃないが……シェザール隊仕様の弾丸は、特殊な徹甲弾を使用している。『不死鳥狩り』に備えて、全機に搭載しているのだ。並みの装甲ならば、容易く貫く。

『うわああああああーっ!!』

『くそ、こっちは、爆装しているんだぞっ!?』

「―――だからだよ、ひよっこども」

 二機のジェガンがバルカン砲のダメージと、己の武装が撃ち抜かれることに恐怖を感じる。

 地上軍装備は、火薬式を好む。何故か?……軍のお偉いさんたちが、地上の大気で精度が揺らぐビーム兵装を嫌っていることと―――贔屓にしている業者が、違うからってのが通説だ!!

 イアゴ・ハーカナ少佐はジェスタを前傾姿勢にさせながら、スラスターを使い。牽制射撃に対して、こちらの期待以上も怯んでくれた二機の獲物へと襲撃していく!!

 加速し、左にスライドするというフェイントをマニューバし、ジェガンらのビームライフルを回避する。

 タイミングと軌道を掌握する。ビームサーベルで斬れる、この二体のうち、どちらか一体は仕留められる。

 スワンソンの弔いが出来るというものだッ!!……また、オレよりも先に部下を、オレよりも若い戦友を殺しやがってッ!!

 ―――死ね、まずは、一人、斬り殺してやるぞッ!!

『ひいいいいいいいいーッ!!』

『こ、殺されるううううッ!!』

「そうだ、まずは一人―――――――ッ!!?」

 ドガアアアアアアアアアアンンンンンッッッ!!!

 機体に衝撃が走る。投げつけられた飛行ユニットを、サーベルで斬った瞬間、残存していた燃料が爆発してしまったらしい。

 あのジェガンだ。あの妙に強いジェガンが、オレが分離させた飛行ユニットをけりやがったのか!!フットボールの真似事を、モビルスーツでやるなんてなあッ!!

「器用なマネをしやがるぜッ!!」

『……まあな』

 爆炎の向こうから、ショットガンの弾が飛び込んでくる。しかし、回避のためのマニューバは入力済みだ。

 イアゴ・ハーカナ少佐のジェスタは、フレームの強さに依存した足さばきを用いて、機体に降り注ぐはずだったショットガンの弾を躱した。

 だが、完全にではない。幾つかの破片が、機体に衝撃とダメージを与えている。全方位が見られるハズのモニターの一部が、映像を失う。機体のあちこちに仕込んでいるカメラが幾つか壊されたのだ。

『……器用なのは、お前さんの方だろ?』

「ふん!!……お前は、誰だ!!」

『誰でもないさ。名前なんて、戦闘中には不必要だろ?……オレちゃんは、ヤベー敵ちゃんに名前をお知らせするようなマヌケじゃない』

「さぞや、名のある男か?」

『いいや。無名でも、お前さんより強いパイロットぐらいいるよ』

「……たしかにな。少し、天狗になっていたかもしれん!!」

 ジェスタを加速させる。攻撃ではなく、回避するために。二機のジェスタが、ライフルを撃ちまくっている。

 威力を制限しつつ、弾数を増やしている……?器用な装備だが、壊れやすそうだな。

 オーストラリアの赤い土を削り上げながら、イアゴ・ハーカナ少佐の愛機は回避運動の舞いを遊ぶように展開していた……。

「雑魚ではないが、中の上といったところか。連携は見事だが、お互いに依存するような射撃。仲間に頼り過ぎていては、真の高機動を実践するモビルスーツには、当てることなど叶わんぞ!!」

『……オレも普段から、そんな風に言っているんだがよ。どうにも、このマヌケなツインズは要領が悪くてね』

『そんなこと、言ってねえぞー!!』

『大尉は、嘘つきすぎるだろッ!!』

『ハハハハ。まあ、心のなかでは、いつもカッコいい言葉で、君らを励ましている。そんなカッコいい大人上司なんだけどなあ!!』

 ふざけているのか?……イアゴ・ハーカナ少佐はそう考えるが、すぐに認識をあらためる。冷静さを取り戻させたのかもしれない。

 三機の連携は、さっきよりも落ち着いている。明らかに……動きが良くなった。平常心?……たしかに、部下のことを、よく知っている上司なのかもな。あの二人には、お似合いの上司だ。

 ……どうやら、オレよりも、あのジェガンの大尉は視野が広くて冷静であるようだ。

『……バカども、射撃中止だ!!』

『えーっ!?』

『今、いいカンジになってた!!追い詰められそうだったのに!!』

 文句を言いながらも、大尉殿には従うらしい。3機のジェガンは争いを止めていた。

 その理由は分かる。オレたちは……ムダな戦いをしている場合ではなくなった。この三機のジェガンは、友軍機だ。

「……ルオ商会の手下だな」

『……フリーランスだ。彼らの飼い犬ではないが、自由とマネーを求めて、必死に生き抜こうとしている』

「気づいているな?」

『ああ。ミノフスキー粒子を撒かれたな……双子ども、よく聞け。オレたちは囲まれつつある。6体のジェスタにな。この機体は、オレたちの仲間。ルオ商会の犬だよ』

「……ただの連邦軍人だ。ルオ商会の犬じゃない」

『そうかい。ともかく、どうだっていい。問題は……ムダな戦いで、かなり消耗しちまっているってことだ』


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