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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT089    『タッグ』




『……か、囲まれたあー!?』

『ほ、ホントだ、いつの間にか、ミノフスキー粒子が撒かれてるぞ!?』

 レーダーが曇る。索敵能力が下がり、少数の方が不利になる。

 しかも、ちょっとした誤解から体力もエネルギーも、装甲までも大きく消費してしまった。サイアクの判断だったな。オレたちは、疑り深くなり過ぎたらしい……。

『……どうにもならんことは、あきらめろ。いいか、双子ども、深呼吸だ。機体の消耗は回復はしないが、せめて乗っているパイロットの心拍数ぐらい整えておけ』

『気休めくさいぜー』

『ほんと、大尉の作戦っていつも、なんかおかしなことになるし』

『ハハハハ。人生、想定外のことが起きたことが楽しいもんだろうがよ……?おい、ジェスタの兄ちゃん』

「……どうした?」

『誤解があったらしいが、ルオ商会チーム同士、仲良く敵と戦うぞ。相手は、ジェスタが六機いる』

「……ジェスタが6機?……オレの、シェザール隊と同じ数か」

『……はー。読めて来たなあ。オレは、勘違いしていたみたいだ。ルオ商会とアンタたちの敵サンも、ルオ商会と地球連邦軍かもしれん』

『何いってんすかー?』

『意味が分からねえ』

『分からんでもいいさ。生き残れたら、ゆっくりと教えてやるし―――死んだら、あの世でニヤニヤしながら教えてやるとするって?』

『死神ー!!』

『悪魔野郎!!』

『ハハハハ。パイロットとしては、勲章みたいな響きのあるあだ名ちゃんだぜ、まったくよう……』

「……お前らは、特殊部隊に包囲されても、これなのか?」

『状況によって自分のペースを変える。器用でマジメなことだが、オレたちみたいなのには向いちゃいねえよ』

『たしかーに!』

『そうだよな!』

「……愉快な連中だな。ルオ商会だか、連邦軍の上層部の内部争いに、オレたちは巻き込まれているようなんだぞ?」

『そうだとしても、することは一つ。皆で恐いジェスタ6機を相手に、がんばりましょうってことだ』

「……そうだな。せめて……スワンソンが生きていてくれたら―――」

『―――オレは、殺す勢いではビームを撃っちゃいねえぞ。収束を粗雑にした、衝撃重視の一撃だ。コクピットを揺さぶって、パイロットを失神させるのが目的の一撃だよ。アンタら、ルオ商会の正規の護衛だし、ガンダリウム合金が入っている。死んではいないんじゃないかな?……多分だけど』

『いいかげんな言葉すねー』

『ヒトを撃ち殺したがどうかなんですよ?』

『いいじゃねえか、生きてるだろうってハナシだ。なあ、叩き起こせよ。戦力になるはずだ。オレの射撃に、少しばかりは反応していた。強いヤツだな』

「……ああ!!」

 スワンソン大尉のジェスタに、イアゴ・ハーカナ少佐は愛機を接近させた。

 そして、その場にしゃがみ込みながら、『お肌の接触回線』を使用する。通信だけじゃない。シェザール隊のシステムは、もっと重要な情報を伝えている。パイロットの生体反応だ。

 少佐の口元はニヤリと歪んでいた。

「……スワンソン、生きているな?」

『……え、ええ……っ。体のあちこちが脱臼でもしたみたいでした。まさか、早撃ちで、しかも、照準補助無しで……あの距離を当てられるなんて……』

「相手が悪かったようだ。地球にも凄腕がいるらしい」

『みたいですね……』

「それで……ハナシは聞いていたか?」

『オープンチャンネルですからね。6機のジェスタに、包囲されている……こっちは、ボロボロの機体も多いし、パイロットも疲れている』

「戦うしかないな。脚が無事なら、逃げるのも有りだが……今は、もう逃げても追いつかれる。それは、不利になるだけだ」

『勝つしかない。そういう状況ってコトですか……』

「そういうことだ。だが、いい腕のパイロットが一人と、そこそこの連中が二人。オレたちを合わせれば、5人。5対6なら……悪くない勝負も展開できる」

『……肋骨が無事な状態で、戦いたかったもんですよ。モルヒネを打ちます。こう痛くちゃ、戦うことも出来ない』

「そうしておけ。ここで死ぬわけにはいかん。痛みを消して、無理やりにでも鋭さを持って動けるようにしておくんだ」

『了解……』

「…………おい、大尉、殿?」

『なんだ?』

「アンタたち、オレの指揮下に入るか?……オレなら、ジェスタの動きと戦術を、誰よりも深く理解しているつもりだぞ」

『……普段から、動かしているわけだからな。悪くない。しかし、そいつは相手さんから見ても同じコトだってのは、忘れるな。おそらくは、アンタたちを仕留めるために、編成されたんだろうからな』

「……ああ。で。どうする?」

『いい提案じゃある。オレたちは、ジェスタを深くは知らない。お前さんが指揮を執ってくれ。オレたちは駒として動いてやる。死にたくないからな……死なせるなよ?』

「……任せておけ。オレほど、ジェスタの強さも、そして弱さも知り尽くしている男は他にはいないはずだぞ!!」


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