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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT087    『ジェガン対ジェスタ    その2』




『た、大尉の卑怯ショットガンを躱しやがったーッッッ!!?』

『う、嘘だろ、アレに反応しやがったのかよおおッッッ!!?』

 双子どもが間違った認識を叫んでいやがるな……卑怯ショットガン?

 ……オレが繊細なタイプの上司だったら傷ついてしまっているところだ。卑怯なのではない、クールなショットガンなんだよ!!

 大尉は操縦システムにマニューバを打ち込みながら、ジェガンを踊らせる。相手の方が高性能機だ。まともに戦うと、すぐに追い込まれてしまうぞ。焦らず急げ、ヤツはもう体勢を整えていやがるぜ。

 ジェスタが沈む。灰色の塗装をした、特殊部隊仕様のジェスタが……。

 背中に飛行用のパックを背負っていやがるのに、淀みなく格闘戦に移行しようとしていやがるな―――コイツの相手は、双子どもに任せるのは難しいぜッ!!

 襲いかかって来る上位機種に対して、大尉もまた突撃していく!!

 ……分かってる。コイツのパイロットは、機体性能の差でオレを圧倒しようと考えていて、その方針を間違えちゃいねえ。

 オレのジェガンもコッソリとあちこちを改造しちゃいるが、素材の面からしてもあちらさんのが完全に上なんだよ。

 重量、推進力、ガンダリウム合金。ニュータイプ専門機との戦いも想定されて設計されたような機体には、何もかも劣る。

 ほーら見ろ。あんな崩れて動きで、こちらのショットガンを避けちまいやがったのに、スラスターじゃなく、脚を使うだけで無理やりに制御を取り戻していやがる。

 獣みたいな動き。地球連邦軍らしく、地上育ちか、このパイロットはよッ!!

 ビームサーベルが振り落とされて来る。

 大尉の指が素早く動き、愛機にトリッキーな行動を選択させる。ライフルを使って、ビームサーベルを振り落としてくる右腕を打ち据えていた。

 今だから可能だった防御動作である。

 高性能機らしく、いい反応をジェスタは実行していたが、いくらなんでもバランスは崩れる。

 基本的な重量とパワーで負けていたとしても、不安定な動きならば―――弱者でも、強者に競り合うことは出来るのだ。

『……なんだとッ!?』

 相手の声が聞こえた。『お肌の接触回線』だ。宇宙のモビルスーツ・パイロットどもが好む、ホモ臭い仕様の秘密回線。

 隠れるのが上手なモビルスーツが、仲間同士でコソコソと話し合うための通信網。機対同士を接触させていると、その情報交換を装甲の振動で行えるんだよ。オープンチャンネルでな。

 若い声ではなく、ベテランの声だった。マジメそうな男の声だ。オレとは気が合いそうにねえなあ。大尉は苦笑しながらも、愛機を踊らせる。

 スラスターを片側だけ使いながら、脚をつま先立ちにする。ジェガンが踊り、ジェスタに対して投げを放つ。

 ジェスタが宙に舞い、そのままオーストラリアの赤い荒野に落下していく。

『チャンスだぜー!!』

『バルカンで穴だらけにしてやる!!』

 投げられたジェスタに対して、双子の機体が頭部搭載型のバルカン砲を唸らせていた!!大尉は舌打ちする。

「……どうせやるなら、オレを巻き込むぐらいの火力でやりやがれ!!バカ・ツインズがああああッッッ!!!」

 バカってのは、これだから困るぜ。普段は考え無しの高火力なのに!?不発弾をバットで殴るようなバカどもなのに!!……どうして、せっかくのチャンスには、繊細な神経を発揮しやがるんだッ!!

 オレごと巻き込めただろうが?……ランチャーもあるし、ショットガンもあるんだ。それなのに……コイツが、どれだけ強いのか分かっちゃいない!!

 ……技量の差は無くとも、機体の性能差はあるんだ。オレの機体は、今のテクニックであちこちがガタガタだ。そうだってのに、あのジェスタ野郎は、まだ器用に動けるんだぞ!!……殺すなら、今だった!!

 ダルルルルルルルルルッ!!

 バルルルルルルルルルッ!!

 双子たちの機体が、盛大な爆音を合唱させながら砲弾の嵐を地上に叩きつけられたばかりのジェスタに浴びせる―――いや、浴びせようとはした。

 しかし、ジェスタは動いていた。飛行用ユニットを、強制的にパージする。その爆風とパイロットが打ち込んでいたマニューバが一つに融け合って、ジェスタは生き物みたいな躍動性を発揮しながら、バルカン砲の攻撃を回避していた。

「エビみたいに跳ねやがるッ!!」

『ななーっ!?』

『なんで、動けるんだよッ!!』

 古強者ってことさ。それに、ガンダリウム合金め。機体にあんな動きをさせても、壊れやしないと来ている……ッ。

 ルオ商会にいるアイツは、機体性能なんて細かいものだと言うがよ?……似た者同士の上位機種と下位機種では、こうも差が出るぜ。

 ズルいったらない。あっちには出来て、こっちには出来ないことが山ほどありやがるんだからな!!

 ……こっちの脚の動きは30%ぐらい死んでいる。ジェスタは重たい。そして、パイロットも器用だ。投げられながらも、力を使い、こちらの機体に重量をかけて来やがったんだぜ……。

 いい動きしやがる……いい機体だ。ガンダムもどきの能力はありやがるぜ!!乗り手も超一流と来ている!!ああ、厄介な敵だな、双子の一人ぐらい、殺されちまうかもしれん!!


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