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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
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ACT078    『NTD』




『元々が、ニュータイプとの戦いを想定した兵装ですからね。ずいぶんとエグい仕様ですよ。隠していた私たちのことを、いじめたくなるかもしれませんが―――』

「―――いじめないよ。私は、寛大なんだ。いい女だからな」

『助かります。では、説明を再開しましょう……NTD搭載モビルスーツが、ニュータイプか強化人間の搭乗したモビルスーツと対峙した時、NTDは自動的に起動します』

「対ニュータイプ用のモードを、搭載機体に強いるというのか」

『それだけじゃありませんね。パイロットにも強いる』

「……なに?」

『パイロットをシステムの一つとして組み込む。パイロットの出す感応波を、NTDは乗っ取り、言わば勝手に操縦用の信号として上書きするんですよ』

「……私の思惑とは関係なく、感応波を……サイコフレームの操縦用の道具にするのか」

『……ええ。パイロットの出す感応波は、NTDが組み上げる攻撃プログラムの送信手段として強制的に使用されます』

「不愉快だな!パイロットを、そんなことに使われては!!」

 まさにパイロットを部品として組み込むという形である。ジュナ・バシュタ少尉は、全てのモビルスーツ・パイロットのために、文句を言っておくことにした。

「モビルスーツに操られるなんてね。私たち、パイロットが、鍛錬したテクニックで操るんだ、モビルスーツってのは!!」

『……はい。ですが……並みのパイロットでは、ニュータイプや強化人間を相手にした時に、勝てませんから』

「……NTDの考えるマニューバの方が、私たちよりも上だと?」

『NTD起動時は、機体がシンプルかつ、それゆえの高速化を起こします。通信速度が感応波ですからね。光速に近く、しかも並列的な情報伝達……まあ、とにかく速く強く動けます。機体の設計の限界を超えるほどに』

「……だからこそ、ニュータイプに迫れると?」

『ヒトの反射速度を超えてしまえば、技術の差なんて克服出来る。とにかく速く動き、攻撃的に攻め立てる。ニュータイプ・パイロットを想定しているんです。こちらが死んでも、あちらが死ねば……悪い結果とは言いがたい』

「……クールな計算だ。見積もられるヤツは、たまったもんじゃないんだぞ」

『ええ。非人道的です。しかし、NTDならば……ジュナ・バシュタ少尉とナラティブガンダムの組み合わせで……アムロ・レイを乗せたνガンダムにも勝るかもしれない。圧倒的な速さと手数なら、NTD発動時のナラティブなら……勝てるかもしれません』

「……私がアムロ・レイに勝てるのなら、兵器としては優秀だって認めてあげるわ。非人道的だってことは、主張するけどな」

『その認識が正しいと思います。これは、悪魔の発明と言えます。超高速機動するモビルスーツに乗っていれば、搭乗者の肉体への負担も大きい……システムに組み込まれ、改変された感応波を出すことを強いられたなら……どれだけ中枢神経系にダメージが及ぶか分からない……』

「…………『フェネクス』にも、搭載されていたんだな?」

『……スゴい勘ですね』

「なるほどな。天使みたいにやさしいリタ・ベルナルの操るモビルスーツが、暴走か。NTDに、精神を破壊されていたってことか……?」

『……可能性はあります。マーサ・ビスト・カーバインからの情報提供によれば、リタ・ベルナルの操るユニコーンガンダム3号機、『フェネクス』は、競合機であるユニコーンガンダム2号機『バンシィ』との演習時に……宙域近くにネオ・ジオンのニュータイプ専門機体と遭遇した』

「ニュータイプ専門機か。強化人間だとしても、NTDは反応した」

『はい。『バンシィ』はNTDを発動し、『フェネクス』の売りであるスピードを超えたようです。『フェネクス』は……連邦軍が独自開発した機体……連邦軍の代表は、敗北を恐れた。そして、『フェネクス』のNTDを強制的に発動……』

「……外部から、発動できるのか?」

『……リタ・ベルナル少尉は、演習時に何らかの異変を感じて、『フェネクス』を抑えていたのかもしれません。ですが、信号は送られ、『フェネクス』のNTDは起動させられ……その能力は解放された。暴走という、サイアクの形で』

「……っ!!……パイロットは、モビルスーツなんていう危ない兵器を、少しはマトモに扱うようにするために、努力しているんだ!!ふざけんな!!」

 激昂をこらえることは出来ず、ジュナはその長い脚を使って、ナラティブガンダムの操縦席に蹴りを入れた……そこにも、NTDが搭載されている。

「クソ!!」

『……少尉、すみませんでした。我々も……コトの詳細を知ったのは、後々です。マーサ・ビスト・カーバインからの情報提供を受けたのも、つい先日です……』

「…………いいさ。『フェネクス』の能力も、リタの能力も、私とナラティブのセットよりは上だ。ミシェルは……私を死なせたくはないんだろうよ」

『はい。それは、確かなことです、ジュナ・バシュタ少尉』

 ブリック・テクラートの誠実な声が聞こえた。ジュナは……怒りを分別することにした。自分が荒れているのは、リタを実験動物にしたクソどものことであり……ここにいるチームに対してではない。

「……それで……NTDの発動が、『フェネクス』の暴走を引き起こした。その認識でいいわけだな」

『マーサ・ビスト・カーバインの言葉を信じれば』

「……NTDの起動を命じたヤツは、ぶっ殺されているわけだ」

『そうです。リタ・ベルナル少尉の操る、『フェネクス』により……殺害されています。マーサ・ビスト・カーバインは、その演習に立ち会っていたようです……』

「……どいつもこいつも。リタの命を……軽んじやがってよ…………リタは、『奇跡の子供』なんだぜ?……コロニー落としを予言して、たくさんのヒトを救ったんだぞ。それなのに……お前……世界ってのは、大人ってのは、こんなことしか、アイツにしてやらないのかよ……っ」


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