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ガンダムNT:S007

原作: 機動戦士ガンダム 作者: よしふみ
目次

ACT071    『腐れ縁』




「……例の情報屋から買った情報を頼みに、オーストラリアへ密入国したんだよ。そしてシャトルの港に向かった」

『貴様、宇宙に帰るのか?』

 ちょっとだけ、羨ましそうだな。スペースノイドにとっては故郷だもんなぁ……オレからすれば、行くところなんだが。立場が変われば、色々と世界観も変わるもんだ。

「ああ。ヘリウム3を、たんまりと手に入れたんだからな」

『……自軍の備品を売ったか。悪人だな』

 元ジオン公国軍のエース・パイロットらしい。スペースノイドは備品を大事にする。宇宙ってのは、地球以上にモノが無い場所だからな。

 汗の一滴まで、高度な空調技術で再利用しなければならない。本当に、貧乏臭い世界だ。だからこそ、自分たちの資源を敵に渡す行為に、異常に怒るヤツもいる。この男も、そうらしい。

 いや、あるいはオレの落ち度をボロクソに言うのが好きなだけか。親友だもんな!

『薄汚い裏切り者のコソ泥め』

「……バレなきゃいいんだよ。まあ、バレちまったんだが……って、それはいい。問題なのは逃亡先が同じ先客がいるってことだ。しかも、そいつらはジェスタだ」

『ジェスタだと?……連邦の精鋭用のモビルスーツか。いい追っ手がかけられたようだ。お前らの貧乏モビルスーツじゃ殺されるな』

「しかも、6機もいやがるんだ」

『……6機か……お前たちは?』

「オレがジェガン、バカな双子のジェガンが二つ。三つだな」

『死ぬな。おめでとうと言っておこう』

「ハハハ!ブラック・ユーモアを覚えていやがるなあ!!ニューホンコンの男らしいぜ、このクソマフィア!!」

『……オレに何を期待している?』

「……あー。金はないが、金になるものなら宇宙に浮かんでる。そいつで支払うから、ルオ商会のコネを使って、オレたちを援護してくれよ?上手くすれば―――ルオ商会はジェスタを6機手に入れることになるんだ。何なら、オレたちのジェガンも3機くれてもいい。大もうけだぞ」

『……お前たちの機体などゴミだ』

「しかし、ジェスタには微量ながらもガンダリウム合金が使われているのは、知っているだろ?……6機もあれば、それを回収するだけでも……ガンダム一機分ぐらいの、ガンダリウム合金を入手することが可能となる」

 実際に、それぐらい含有されているのかは、ちょっと分からないが―――交渉ってのは、ハッタリも大事だ。こちらのアピール事項は過大に宣伝したっていいだろ。

 商売なんだからな……いや、その前に、今は命もかかっている。このまま乏しい戦力で巻き込まれるべきじゃない状況が、すぐそこにあるわけだ……。

「……いいか、ガンダリウム合金だぞ、ガンダリウム合金!」

『何度も言うな、理解している』

「それは、お前のようなカスタム・マニアには嬉しい素材じゃないか?軽くて、頑丈。何よりも、ガンダムの一部。愛機に使うだけでも、お前は日々を今より15%は楽しく過ごせるんじゃないか?」

 ……沈黙しやがった。だが……通信は切らない。まったく、ツンデレ野郎ちゃんだぜ。

 大尉は勝利を確信している。あのルオ商会のエースさまは、血に飢えた獣だし、どんな美女よりもモビルスーツを愛していやがる。

 かなり危険なヤツだが……シンプルさはあるんだよ。まっすぐで、一本気な……ヒト殺し。

『……どう援護して欲しい?』

「……戦力を貸してくれたなら、オレが部隊を指揮して、ジェスタ隊を仕留める。腕がいいヤツなら……一機でもいればいい。お前が来てくれたら、最高だが」

『オレはニューホンコンを動けん』

「……残念だぜ。他の、腕っこきを寄越せよ」

『……オーストラリアだと言ったな』

「ああ、言った。オレはそこにいる。座標もチェックしてるんだろ。一緒にそのデータも送っているんだからな」

 それぐらいはやってくれているハズだぜ。ジェスタ―――ガンダリウム合金のためなら、ヤツはそれなり以上に真剣になってはくれるはずなんだからな……。

『……そのジェスタは……本当にアフリカから来たのか?』

「……おそらくだろうがな」

『……地上装備か?』

「そう見えるぜ。オレの見立てじゃ、足跡から推察するに、砲戦仕様のジェスタもいる」

『……6機のジェスタか。偶然にしちゃ、出来すぎじゃある……お前たちは、関わらない方がいい事案かもしれんな』

「関わりたくはないが、関わらなければ宇宙が遠ざかる。ルオ商会が絡んでいるような仕事なら、無理やりにでも顔を突っ込んでやってもいいぞ」

『どんな立場だ、お前は?』

「お前の大親友だよ。連邦軍を利用して、何かを企んでいるっていうのなら……ニューホンコンから動けないお前の代わりに、オレがお前の手足になってもいいんだぜ」

『……チッ』

「……舌打ちしたが、通信を切らないところを見ると。お前、オレの戦力を欲しがっているんじゃないか?……オレの実力は知っているだろうし……器用さも知っている。オレたちを雇えよ?……オレたちがお前の代わりに色々と動いてやる。報酬として、ニューホンコンから宇宙に連れて行ってもらえれば、ありがたい。もちろん、偽装したパスポート付きでな」

『……それだけでは、足りないな』

「何をしろってんだよ?」

『……オレの仕事を手伝え。殺すべき相手がいるんだ。そいつを殺し、オレは、オレが生きるに相応しい場所を創りたい』

「……思想家みてえなこと言い出しやがって」


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