ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

バカとテストと転校生

原作: その他 (原作:バカとテストと召喚獣) 作者: のんの
目次

第一問②

「大丈夫ですよ。それでは二人とも、席に着いてください。これから皆さんに自己紹介をしてもらいますか
ら」



 教室全体から驚いたような声が上がる。そんな中、数少ない平然としている人物の一人、担任の福原先生
が抑揚のない声でそう言った。



「あ、は、はいっ」



 さっき途中入室してきた女子生徒が、逃げるように空いている卓袱台に着く。それに続くように、俺も女
子生徒の近く、ツンツンとたてがみのような髪の毛をした、野性味たっぷりの顔の男子の隣の卓袱台に着い
た。



「では自己紹介を始めましょうか。そうですね。廊下側の人からお願いします」



 福原先生の指名を受け、車座を組んでいた廊下側の生徒の一人が立ち上がり、名前を告げる。



「木下秀吉じゃ。演劇部に所属しておる」



 独特の言葉遣いで話す小柄な少女。小さな顔にクリクリと大きな瞳。なんてかわいらしい子なんだろう。
是非お近づきになりたい。


 でも何でだろう、どこかで会ったことがある気がする。



「――と、いうわけじゃ。今年一年よろしく頼むぞい」



 軽やかに微笑みを作って自己紹介を終える木下さん。か、可愛い……。



「……おい、転校生」


「……んお?」



 俺が木下さんに見惚れていると、不意に声が聞こえた。見ると、隣でふんぞり返っている男子生徒がまる
で品定めをするかの様に俺を見ている。



「なんだい? 男子生徒A」


「……坂本だ。坂本雄二。よろしくな、転校生」



 そう言って男子生徒は、右手を前に差し出した。



「まあ……なんだ。俺は一応このクラスの代表だからな。困ったことがあったら遠慮なく言ってくれ」



 そう言って笑う坂本。見かけによらずいいやつなのかもしれない。



「ああ。よろしくな、坂本」



 それに応えるように、俺は差し出された大きくてゴツゴツとした手を握る。



「雄二で構わないさ。それとな、転校生――」



 熱い友情の握手を交わした後、雄二は野性味満点の八重歯を見せながら、



「――秀吉は男だぞ」


「…………Really?」



 俺の精神をズタズタに切り裂いた。


「…………」



 改めて木下さんを見る。整った顔立ち、透き通る様に美しい肌、男子用の制服。とても男子には見えな…
…ん? 男子用の制服?



「…………Oh」


「わかったか? あいつは男だ」



 ……神様、俺は何を信じればいいんだい? 教えておくれ。



「…………土屋康太」



 気づいたら次の生徒が立ち上がって同じように名前を告げていた。

 口数少なく自己紹介を終える土屋康太と名乗った男子生徒。小柄だけど引き締まってそうな身体をしてい
た。運動神経はよさそうだ。

 それにしても、見渡す限り男ばかりだ。学力最低クラスともなると、女子はほとんどいないんだろうか。



「――です。海外育ちで、日本語は会話はできるけど、読み書きが苦手です」



 と、少し考え事をしてるうちにまた次の人。



「あ、でも英語も苦手です。育ちはドイツだったので。趣味は――」



 このクラスには珍しく女子の声。いや、声だけで判断するな智也! さっき騙されたじゃないか!

 騙されないように気をつけながら、自己紹介をしている生徒を見る。そこには、木下とは違いしっかりと
女子用の制服に身を包んだ、ポニーテールに気の強そうな目が特徴の、



「趣味は吉井明久を殴ることです☆」



 随分とピンポイントかつ危険な趣味を持った女子がいた。



「はろはろー」



 笑顔で一人の男子に手を振る。



「……あぅ。し、島田さん」


「吉井、今年もよろしくね」



 どうやら彼女は島田さんというらしい。そして、今島田さんをまるで天敵のように見ている男子生徒は吉
井というのだろう。かわいそうに、娯楽のためになぐられるなんて。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。