Prolog
高校1年の冬。
俺は転校を余儀なくされた。
理由は単純。
喧嘩、暴力、相手が大怪我。この3つのキーワードがすべてを物語っている。
それでも後悔はしていない。
結果として、襲われそうになっていた幼馴染を守れたし、俺も復讐に怯えず新天地でのびのびと過ごす事ができる。
だから大丈夫。
新しい学校でも、俺はやっていける。
「……それ、無理やり言い聞かせているだけじゃないの?」
転校に関する書類を提出した帰り道。
幼馴染である彼女は、校門によりかかりながらそう言った。
「人の思考を読むなよ。ばか」
「読めないわよバカ。予想しただけ。何年幼馴染やってると思ってるの?」
「……16年」
「正解」
くすりと笑う彼女。俺ははぁと嘆息を漏らす。
「ま、転校先でも元気にやりなさい」
「ああ。言われなくとも」
それが、転校前に彼女と交わした最後の言葉。
☆
「それじゃあ、手続きはこれで最後だけども……本当にいいのかい?」
学園の中にありながら、少しばかり高級感が漂う学園長室で、物の怪が擦れた声でそう言った。
この物の怪こそ、この文月学園の学園長、藤堂カヲル先生だ。長い白髪が特徴の、遠目から見ても、近くで見ても醜い化け物の様な人だった。
要するにただの化物。いや、失礼だとは思うけど。
「ええ、それが決まりなんでしょう?」
笑うのを必死に堪えながら、にこやかな笑顔でそう答える。少しでも気を抜くと、この学園の権力者の顔を指差して爆笑してしまいそうだ。
「まあそうなんだがねぇ……お前さんの学力なら、少なくともCクラス程度なら余裕だろうに……」
「そんなことないですよ」
「うーむ……しかし、優秀な人材をあのクラスにぶち込むというのも気が引けるんだが……」
後は判子を押すだけだというのに学園長は一向に動く気配を見せない。
……死んでるんじゃないだろうか。大丈夫だよね?
「……よし、いいだろう。承認しよう」
3分程返事がなく、ただの屍だった学園長はやっとのことで目の前の書類に判子を押した。
「これで手続きは全部完了だ。待たせたね」
「ホントですよ」
「あぁん? 今なんて?」
「いえいえ。お疲れ様でした、と」
「……そうかい。いやいや、お前さんがFクラスに所属するのは当然の結果だと思ってきたよ」
それはどういう意味だろうか。
「ともかく、だ」
コホンと咳払いし、改めてこちらを向くババァ。もとい学園長。
それに習うように、こちらも真面目な顔をする。無論笑わないためにふともも付近を抓るのも忘れない。
「今日からお前さんは、我が文月学園二年F組の生徒だ」
こうして、この俺、竜崎智也の騒がしくも楽しい学園生活が幕を開けた……。
俺は転校を余儀なくされた。
理由は単純。
喧嘩、暴力、相手が大怪我。この3つのキーワードがすべてを物語っている。
それでも後悔はしていない。
結果として、襲われそうになっていた幼馴染を守れたし、俺も復讐に怯えず新天地でのびのびと過ごす事ができる。
だから大丈夫。
新しい学校でも、俺はやっていける。
「……それ、無理やり言い聞かせているだけじゃないの?」
転校に関する書類を提出した帰り道。
幼馴染である彼女は、校門によりかかりながらそう言った。
「人の思考を読むなよ。ばか」
「読めないわよバカ。予想しただけ。何年幼馴染やってると思ってるの?」
「……16年」
「正解」
くすりと笑う彼女。俺ははぁと嘆息を漏らす。
「ま、転校先でも元気にやりなさい」
「ああ。言われなくとも」
それが、転校前に彼女と交わした最後の言葉。
☆
「それじゃあ、手続きはこれで最後だけども……本当にいいのかい?」
学園の中にありながら、少しばかり高級感が漂う学園長室で、物の怪が擦れた声でそう言った。
この物の怪こそ、この文月学園の学園長、藤堂カヲル先生だ。長い白髪が特徴の、遠目から見ても、近くで見ても醜い化け物の様な人だった。
要するにただの化物。いや、失礼だとは思うけど。
「ええ、それが決まりなんでしょう?」
笑うのを必死に堪えながら、にこやかな笑顔でそう答える。少しでも気を抜くと、この学園の権力者の顔を指差して爆笑してしまいそうだ。
「まあそうなんだがねぇ……お前さんの学力なら、少なくともCクラス程度なら余裕だろうに……」
「そんなことないですよ」
「うーむ……しかし、優秀な人材をあのクラスにぶち込むというのも気が引けるんだが……」
後は判子を押すだけだというのに学園長は一向に動く気配を見せない。
……死んでるんじゃないだろうか。大丈夫だよね?
「……よし、いいだろう。承認しよう」
3分程返事がなく、ただの屍だった学園長はやっとのことで目の前の書類に判子を押した。
「これで手続きは全部完了だ。待たせたね」
「ホントですよ」
「あぁん? 今なんて?」
「いえいえ。お疲れ様でした、と」
「……そうかい。いやいや、お前さんがFクラスに所属するのは当然の結果だと思ってきたよ」
それはどういう意味だろうか。
「ともかく、だ」
コホンと咳払いし、改めてこちらを向くババァ。もとい学園長。
それに習うように、こちらも真面目な顔をする。無論笑わないためにふともも付近を抓るのも忘れない。
「今日からお前さんは、我が文月学園二年F組の生徒だ」
こうして、この俺、竜崎智也の騒がしくも楽しい学園生活が幕を開けた……。
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