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粟田口日和

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: 皇洵璃音
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秋田藤四郎の場合2

部屋を出ると、曲がり角を過ぎた辺りの廊下で小夜くんと遭遇しました。運がいいです。
「あ、小夜くん!これから呼びに行こうと思っていたところでした!」
「うん……万屋、行くんだっけ」
「はい!一覧表とお金は貰いましたので、一緒に行きましょう!」
小夜くんが隣で歩きながら、買い物リストを見せます。僕と同じように「結構あるね」との返事がありました。そのための二人体制です。と伝えると、「そっか、なるほどね」と納得してくれました。万屋に行くには、僕たちの本丸の独特のルールがありまして。必ず正装で行くようになってるんです。万屋の店員さんは「私服でいいのに」と言われることがありますが、燭台切さんが言うには「恰好は常に整えておかないとね」とのことなので、身なりはちゃんと整えようという意識から独特のルールが出来たんです。
おそらく他の本丸では違うかもしれません。今度主君に聞いておきますね。
話が逸れましたね、失礼しました。
途中で各自の部屋に戻って着替えた後、正門で小夜くんと待ち合わせしました。また会った時に何を順番に買うか考えていると、近くから聞き覚えのある笑い声が聞こえました。メモから顔を上げて、誰だろうと後ろを見たら毛利藤四郎がいました。
「わっ!いついたんですか?!」
「うふふふ、廊下でばったり二人の会話を聞いてね。見送りに来たよ」
「そうなんですね、ありがとうございます。毛利くんは今日非番ですか?」
「うん、そうだよー」
そんな会話をしていると、小走りで小夜くんが正門に到着しました。
「……ごめん、遅くなった」
「大丈夫ですよ!じゃあ、行きましょう」
「うん……毛利も?」
見送りだよ、と言いかけた瞬間。思いっきり毛利に抱き着かれました。あぁ、始まった。毛利の小さい子大好き病が。少しの間ですが、頬ずりされて僕らを抱き潰すんですよねぇ。
「あぁ、もう可愛いなぁ!頑張ってね!いってらっしゃい!」
「いってらっしゃいって言うなら、離してくださいよー!」
「……オーバーリアクション……」
毛利が満足して解放された頃に、仕切りなおして万屋に出発します。途中の道で、何を買っていくか相談しながら行ったので万屋に着いたら各自買うものを選んで、まとめて清算できました。やはりそれなりに量は多いです。風呂敷に包んでもらい、買ったものを担ぐとちょっとよろけそうになります。たぶん、脇差とかならよろけることはないんだと思いますが、僕らは短刀です。体格的な問題は仕方がありません。二人でふらふらしながら、帰路に着くと正門の掃き掃除をしていた加州さんが迎えてくれました。
「あ、秋田と小夜じゃん。おかえりー、ふらふらしてるけど大丈夫?」
「僕は大丈夫ですが、小夜くんのが重そうで……」
「……加州、一人?」
「近くに安定がいるよ。呼んでこよっか?」
「……お願いします」
「助かります!」
僕と小夜くんの反応を見て、加州さんは「わかった」と一言言うと大声で安定さんを呼んでました。返事は玄関辺りから聞こえてきたので、結構近くにいたようです。加州さんが駆け寄って、事情を話されたらしくて安定さんが駆け足で来てくれました。
「うわー、おっきい。重かったろ、手伝うよ」
「秋田は俺ね。安定は小夜の方よろしく」
オッケー、と軽い返事があった後、加州さんから荷物を持ってもらい背中が軽くなりました。小夜くんも大きくため息をついています。どっちも重かったですもんね。
「なんでこんなに大きいの?なんか機械とかも注文したりしてた?」
小夜くんの荷物を持った安定さんを先頭に、加州さんは大きなその荷物を不思議そうに見ながら運んでくれています。
「はい、薬研兄さんのメモによると木製の器具を依頼していたそうです」
「木製の器具?具体的な名前とか載ってないの?」
「ないですー木製の器具としか書かれていません」
「……薬研の研究って、本当になんなんだろう……」
小夜くんの発言に、僕も苦笑しかできません。よく分からないんですよね、これが。そんな会話をしていると、薬研の研究室(小部屋)に到着しました。
「薬研、ご希望の品だよーあけてー」
安定さんがそう言うと、中から足音が聞こえてきてすぐ襖が開きました。
「お、大和守と加州もいるじゃねぇか。悪い、やっぱりもう一人付けとくべきだったか?」
「大丈夫ですよ、薬研兄さん!玄関先からはお二人に運んでもらいましたので」
「助かった、四人ともありがとな」
僕と小夜くんは顔を合わせて、笑いあいました。任務達成です。その後のことは、安定さんと加州さんが対応してくれたので、残ったお金を届けに長谷部さんのところに届けることにしました。
「小夜くんも付いてきてくれるんですか?」
「……報告、しないとね。予定もないから、大丈夫」
「ありがとうございます!」
長谷部さんのところに行くと、襖越しに声をかけても返事がありませんでした。お休み中か、どこか別のところに行かれているのかもしれません。とりあえず、お金だけでも、と思い開けてみるとこんのすけがいました。
「やや、お二方、長谷部殿にご用事ですかな?」
「はい、残ったお金をお渡ししようと思いまして」
「良い心がけです。長谷部殿は主様に報告書を渡しに行かれました。すぐ戻ってくるとは思いますが……お釣りはその袋ですかな?」
「……うん、こんのすけ、任せていい?」
「もちろんでございます!きちんと責務を果たせたこともお伝えしましょう!」
こんのすけの首に、お釣りが入った袋を下げるとにこっと笑ってくれました。その笑顔につられて、僕らも思わず笑ってしましました。こんのすけの頭を一撫でして、僕らは長谷部さんの部屋を後にしました。
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