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粟田口日和

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: 皇洵璃音
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秋田藤四郎の場合3

一つの大きな任務が終わり、僕と小夜くんは他愛もない話をして部屋に戻る途中でした。
「……そういえば、秋田。この後予定は?」
「ありません。もし長谷部さんがいらっしゃったら、書類作成のお手伝いでもしようかと考えていたところでした」
「いつも書類と睨めっこしているからね、長谷部は……予定がないなら、台所のお手伝いに行こうかと考えてたんだけど、行く?」
炊事場の手伝いはいち兄が当番の時にしかやったことがないので、僕は少々考えました。でも、誰かの手伝いになれればそれは良いことです。僕はすぐに笑顔で答えました。
「ご飯は作ったことないんですが、お邪魔でなければ行きたいです!」
「……きっと大歓迎だよ。行こう」
「はい!」
小夜くん先導で、台所に行くと先にお手伝いに来ていた人がいました。黙々と大量のじゃがいもの皮を剥いているのは、大倶利伽羅さんと乱兄さんです。僕らが顔を出したことに気づいた乱兄さんが声をかけてくれました。
「やっほー、秋田と小夜くん!お手伝いに来たの?」
「はい、何かお手伝いできればと思いまして」
「……人手は足りてる?」
ちらっと大倶利伽羅さんが視線を上げると、一言だけ「いや、まだ欲しい」と言うとすぐに台所担当の燭台切さんを呼んでくれました。コンロの近くから僕らがいる土間のところに顔を出す燭台切さんの手にはお玉がありました。
「なんだい、伽羅ちゃん?」
「秋田と小夜が手伝う。何か加勢することはあるか」
「ありがとう!すごく助かるよ!じゃあ、このにんじんを剥いてくれるかな?」
燭台切さんは言いながら、にんじん入りの籠と大きなボウルを取り出しました。どこから取り出したんだろうと考えていると、大量のにんじんを籠ごと渡された僕はちょっとよろけました。お、多い……。
「秋田、大丈夫?」
「だ、大丈夫ですっ、頑張ろうね小夜くん!」
「うん。二人の傍で剥いていこう」
それからお昼まで剥く作業をして、途中昼休憩としてそうめんを食べました。やっぱり夏場には、そうめんですね。足りない子は各自おやつを食べたりしていたようですが、それより僕らは与えられたお仕事をこなすのみです。
夕食前にはすべて剥き終えて、無事燭台切さんに剥き終わったにんじんを渡せました。同じぐらいのタイミングで、大倶利伽羅さんと乱兄さんもじゃがいもを剥き終えたようです。
「助かったよ!今日の夕食はカレーだよ。楽しみに待っててね」
燭台切さんは剥き終わったにんじんとじゃがいものボウルを軽々と持ち上げていました。さすがは太刀。すごいです。ちなみに週に1回はカレーなのですが、曜日が決まっていまして。毎週金曜日がカレーの日なんだそうです。なんで金曜日なんですか、と聞いたところ歌仙さんが「主の世界の海軍だったか……海の自衛隊さんたちは曜日を忘れないために、金曜日はカレーの日らしいんだ。僕らも時間の感覚がなくなる戦闘が多いからこの制度を取り入れたのさ」と教えてくださいました。その後に素晴らしい制度だねぇ、と頷いておられました。確かに僕らは曜日の感覚とかすぐ忘れそうなので、とてもいいと思いますし、本丸のみんなはカレーが大好きなので、一石二鳥ですね。と伝えておきました。
小夜くんと別れて夕食は朝食と同じく粟田口兄弟は揃って挨拶をして、カレーを食べました。今日は少しだけ辛めに作られているらしく、ぴりっとするカレーでした。美味しかったです!
その後は、各自自由に時間を過ごします。どうやら夕食の後に小夜くんは遠征任務に出たらしいです。もうちょっと話したかったなぁ。
「あーきーた、一緒にお風呂いこうよ!」
「乱兄さん。はい、準備してきますね!」
粟田口兄弟は基本的に一緒に行動することが多いので、今回はお風呂も一緒です。乱兄さんを筆頭に、僕と厚兄さん、前田くん、平野くんの五人でお風呂にいきました。お風呂場は結構広い作りになっているので、夕食後は特に入ってくる人たちが多いです。お互い譲り合いながら体を洗って、湯船につかります。
「ふへー今日はいっぱい頑張った気がしますー」
「そうだね、秋田は薬研の買い出しと夕食の手伝いをしたもんね!」
「おっ、えらいじゃないか秋田。いち兄には報告したのか?」
「まだですー夕食後に報告しようと思ったら、遠征に行っちゃったので」
厚兄さんはそっかそっかー、と軽く流してくれました。お風呂から上がると、寝間着に着替えて粟田口部屋に戻ります。いち兄が帰ってきたら、頑張ったことを報告しなきゃ。そう思いながら、僕は厚兄さんよりも先に布団で寝てしまいました。
その後のお話になるのですが、翌朝いち兄と一緒の畑当番に当たりまして。その時に、昨日はこんなことがあったんだよ、と伝えました。一緒に雑草を取りながら、いち兄はきちんと聞いてくれます。そして、にっこり笑って言ってくれるんです。
「よく頑張ったね。とってもえらいよ」
「えへへ……お手伝いをする非番も楽しいですね!いち兄」
「そうだね、誰かのためになることはとてもいいことだ」
うんうん、と頷いた後。あ、といち兄が何が思いついたようで、片方の手袋を取って僕の頭を撫でてくれました。
「後で燭台切さんに言って、おやつを増やしてもらうようにお願いしておくよ」
「本当ですか、いち兄!」
「私が約束を破ったことは?」
「ないです!わぁ、楽しみだなぁー」
午後3時まであと少し。僕はよりいっそう、草むしりに勤しみました。後は、おやつを食べて、お昼寝してまた畑当番に出て……畑当番ばっかりですね。そんな日でした。
以上、秋田藤四郎でした!

(終)
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