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粟田口日和

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: 皇洵璃音
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秋田藤四郎の場合1

きっと、これを読んでいる方は主君でいらっしゃると思います。
本日よりこの日記をしたためることになりました、秋田藤四郎と言います。
とってもドキドキわくわくしながら、書いています。緊張するなぁ。
まずはこの日記を書くことになった経緯をお話ししたいと思います。僕たち藤四郎兄弟を含む短刀の子たちは、本丸のお世話係をされている長谷部さんによる提案で「日誌を付けさせる」ことになったんです。詳しく聞いたところ、主君の部屋から沢山の白紙ノートが発見されたそうで。そのノートがもったいないこともあり、活用法を考えた長谷部さんがそれに至る、ということになったとお聞きしています。
手紙を書くことはあるけど、こうして日々を綴るのはなんだか学生になった気分です。
そうですね、まず僕らの朝からの出来事を書きましょうか。
「おはよう!」
一人、また一人と布団から起きてすぐ挨拶をします。一番朝が早いのは、厚兄さんです。寝るのも早いんですけどね。それはともかく、全員起きてすぐに着替えます。あ、そうそう。一番遅いのは薬研兄さんです。いつも遅くまで僕たちの傷や病気に対応できるようにって、薬を調合しているんです。仕方ないですけど、起きないことには一日は始まりませんよね。最初は優しく呼びかけられるんですけど、最終的には厚兄さんから思いっきり布団をはぎ取られて叩き起こされるんです。スパーン、という音が室内に響きます。それで何を思ったのか、薬研兄さんが叩き返すんですよね。
「やんのか、薬研」
「……やってやろうじゃねぇか、厚……」
お互いガン飛ばし合って、殴り合いの勃発です。最初は僕らもやめるように自制の声を上げるんですけど、二人がかわす速度が速いせいでお互いの拳が当たらないんですよね。それでテンションの上がった僕らは囃し立てるように声援を送るようになって、その騒ぎから正装のいち兄が襖を開けて大声で怒るんです。
「何をやっているんだ、お前たち!薬研、厚!やめなさい!」
ごんっ!という大きな音と共にさっきまでかわし合いをしていた薬研兄さんと厚兄さんは撃沈して朝が始まります。
大広間は、全部の刀剣男士が入れるように広々したテレビ付きのお部屋です。そこで主君の時代のニュースが流れたりするんですよ。テレビを見るのもいいんですが、まず朝ごはんを食べないといけません。大広間を通って、台所に向かうと美味しそうな朝餉が用意されてあります。作ったのは、燭台切さんと歌仙さんです。主にこのお二人が僕らのご飯を用意してくれています。
「おはよう、秋田君。今日は君たちが取ってくれたオクラを使ったご飯だよ」
「オクラは初めて食べます……!ありがとうございます!」
畑当番があるんですけど、そこで収穫できたものが食卓に並ぶことがあるんです。今日はオクラのお惣菜がありますね。美味しそうです。それぞれ食事を貰って、大広間に戻ると僕ら藤四郎兄弟はみんな揃ってから挨拶をします。
「いただきます」
「いただきまーす」
いち兄が最初に挨拶して、僕らが復唱するのがいつもの朝。今日のオクラのお惣菜は、納豆みたいにネバネバしていて不思議な食感でした。美味しかったです。
各自食べ終わると、食器を戻しに行ってからその日のやることを把握しに行きます。
今日は非番だったので、僕が何をしようかなと考えていると薬研兄さんから肩を叩かれました。
「秋田、今日は非番か?」
「はい!そうです。何しようかなって考えていたところで」
「ちょうどいい。暇してる小夜と一緒に万屋行って買ってきてほしいものがあるんだ。頼めるか?」
「分かりました!何を買ってくればいいですか?」
「ちょっと待ってくれ、今すぐメモを……あ、俺っちの研究室に来てくれないか。そこに置いてある」
「はーい」
白衣を翻した薬研兄さんの後ろを付いていくと、粟田口部屋の隣に小さな個室があります。そこで薬研兄さんは研究してるんです。部屋に入ると、乱雑に物が置かれていて、ちょっと危ないところ。気を付けながら部屋に入ると、文机に置かれたメモを渡されました。
数えると結構あります。協力して買ってこないと。
「金は持ってるか?」
「あ、ないです!主君に貰ってきた方がいいですか?」
「主より長谷部の旦那の方がいいだろうな。研究費って言っといてくれ」
「分かりました!」
そう言うと、僕は駆け足で近侍の長谷部さんのところに向かいます。長谷部さんの仕事場は、主君の部屋の隣なので分かりやすいんです。襖を開ける前に、とんとん、とノックします。
「長谷部さん、秋田です。入ってもいいですか?」
「ん?秋田か。いいぞ」
「失礼します」
さっと開けて、さっと閉める。いち兄に教わった通りにしました。中に入ると、薬研兄さんといい勝負するぐらい紙がいっぱいあります。これ全部報告書らしいんですよね。
「何か入り用か?」
「はい、薬研兄さんの研究費が欲しいです」
「あー……新薬の調合だったか……買い出しに行ってくれるのか?悪いな」
「いいえ!ちょうど何するか迷ってたので!」
お金の入った袋を取り出した長谷部さんは、片手でひょいっと僕に渡してくれました。その後に、よく頑張ってるな、と言いながら頭を撫でてもらいました。嬉しいです。
お礼を言った後に、僕は長谷部さんのいる部屋を後にしました。
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