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桃太郎物語

ジャンル: ロー・ファンタジー 作者: ハラミ
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 先ほどから桃太郎たちに群がってきている鬼たちの大きさは、せいぜい少し大柄な大人の男性ほどの大きさであった。
 だが、島の奥の本拠地と思われる洞窟から姿を現した鬼はとてもじゃないがそんなのの比ではなく少し小さめの社のお堂くらいの大きさはある大男で、正直踏み潰されただけで息の根が止まりそうな迫力があった。
「何だァてめぇらは一体何者だァ!!」
 耳がちぎれそうなほどに大きな声を出して桃太郎は背中にビリビリと稲妻が流れるのを感じる。
「やーっと敵の大将が出てきやがったな!……おもしれぇ、海賊衆の力見せてやらぁ!」
「ぬっ、それがしをおいて前に出るでないわ!」
 武闘派の犬と猿は敵の大きさに全く動じていないようですかさず前に出ている。
 だが、その親玉の攻撃も凄まじかった。まるで丸太のようなサイズの金棒を犬と猿の間くらいに打ち込めば、その衝撃で犬と猿は避けようとして左右に分かれて倒れ込む。
「がっはっはぁ、他愛もない」
 その巨人鬼は二人が倒れこんだのを見逃さず止めを刺そうとする。
 桃太郎は二人の援護に行こうとするが、ダメだった、敵のあまりの巨大さに足がすくんで前に進めないのだ。
(……くっ!俺はさっきからみんなの足手まといに!)
 っと、そこで桃太郎の前を素早く走っていく者がいる。
「ちょっとちょっとー、これはまずいですよー」
 それは誰であろう雉であるが、彼女は素早く鬼の背後を取ると長い鎖を投げつけてちょうど巨大鬼が振り上げたかな棒の先に五寸のところに巻きつけて、巨大鬼の動きを封じた。
「ふぅー鎖鎌が間に合いましたかぁ……」
 雉が使っているのは鎖鎌という忍者がよく使う道具である。文字通り鎌に鎖が結びつけてあり、鎖の先には重しとなる分銅がついている道具で、鎌で攻撃をしたり、鎖を巻きつけて敵の動きを封じたり、分銅を敵に投げつける飛び道具に使えたりととにかく実用的な上に刀などより持ち運びがしやすい道具である。
 なのだがいかんせん今回は相手が悪かった。
「ふん、こんなのでわしの動きを封じたつもりかぁ?あぁ!?」
 そう言うとその巨大鬼が無理やりその鎖を引っ張ったもので、必死で鎖を掴んでいた雉の小さい体も自然と浮き上がる。
「う、うわぁちょっと何するんですかぁ!」
「はっはっは、どうするかなぁ」
 巨大鬼はそう言うと今度は鎖をブンブンと振り回し回転させる形で振り回し始め、雉の体もまるでおもちゃのように宙を舞う。
「どうじゃ!小娘まいったか!」
「ぐぅ、このままじゃ目回しちゃいますねぇ。脱出です!」
 振り回されながらも雉はなんとか、振り回す回転が弱まったのを見計らって手を離す。それでも屋敷一個分ほど飛ばされて、近くにあった茂みに放り出される。
「ふんっ、雑魚がいくら群れようと同じことよ。こうなればまとめて……」
 巨大鬼は、今しがた吹っ飛んだ雉と、さっき平衡を失って今だにまだふらついている犬と猿を交互に見つつ残酷な笑いを浮かべていた。
「……待て。そいつらには手出し無用!」
 ここでなんとか桃太郎の足が進む。重い足を引きずりながら太刀を引っさげ、巨大鬼の前に立ちふさがり、太刀を巨大鬼の鼻先に向けた。
「あんたはこの桃太郎がきっちり退治する!辞世の句を書いてかかってこい!」
「ふんっ、まったく口だけは弁慶よのぉ。良い、鬼の情けで一瞬で地獄に送ってやるわぁ!」
 向かい合って、走り寄る桃太郎と親玉鬼。

 二人の距離は、一丈、五尺、一尺と近づいていった。
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