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超時空恋愛音-LOVE Sound-

原作: その他 (原作:マクロスシリーズ) 作者: ういはる
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第3話「宇宙の理」

 西暦2046年

 事は、後に「プロトデビルン」と呼称されることになる生命体が、超長距離移民船団マクロス7に攻撃を開始したことから始まった。彼らは”スピリチア”(人間が持つ生命エネルギー)を吸収し、我々人類に脅威を示した。

 そんな中、1人の男が注目される。彼の名前は「熱気バサラ」。「Fire Bomber」というバンドでボーカルを務めている。彼は、あのゼントラーディを我々人類と共存の道へ導いた「リン・ミンメイ」に憧れ、音楽活動を行っている。

 彼を始めとした「音楽部隊・サウンドフォース」と、マクロス7直属の「ダイアモンドフォース隊」の活躍で”歌”というエネルギーの存在を知った「プロトデビルン」及び、追従関係にあった「バロータ軍」は、スピリチアを無理やり摂取することをやめ、別の銀河系へと去って行った。

「よっと」

 ハヤテは、ゲートキーパーのシェリル・ノームとランカ・リーによって、13年前にデフォールドした。

「事前に調べた情報だと、この時代じゃFire Bomberっていうバンドが人気らしいな。歌って意味じゃ
共通だし、フレイアの居場所が分かるかもしれない」

 期待するハヤテのもとに、空気を読まない絶妙なタイミングで、3通目のメッセージを受信する。内容は、

“ごきげんよう 時空の旅人”
“愛する 女を 追いかけるのは 楽しいですか?”
“西暦2059年で ルンを 感じたようですね”
“私は 世界の音を愛する者 デス”

(何っ? 歌い手じゃなくて、俺宛てのメッセージか!?)

 少し驚いたが、2通目からは、ハヤテのバルキリーがメッセージを受信していたので、その点での驚きは大したものではなかった。そして、もっと驚くことが起きる。

(ん……?)

 コクピット内の計器にマーカーが点付いているのに、ハヤテは気が付いた。

「何か、ある。怪しいな」

 確かめるために近づきたい気持ちはあるが、やはり怪しすぎる。

「発信信号を逆探してみるか」

 実は、フレイア捜索命令を受けてラグナを出発する時、ワルキューレのメンバー「レイナ・プラウラー」から、簡易的なハッキングツールをインストールしてもらっていた。

 カタカタカタ……

「お、成功したみたいだな。さてと」

 ハヤテが検索結果を見てみると突如、スピーカーから歌が聞こえた。それはハヤテがよく知っている声、今1番感じたい声だった。

「フレイアッ!」

 確かにフレイアの声だった。しかし、疑問に残るのがルンを介していないことだ。それでもハヤテは、歌を……フレイアを求めて、発信源へ向かうのだった。しかし、

「待て!」

 発信源へ近づくハヤテを止める男がいる。その男をよく見ると、

「ア、 アンタは……!?」
「全く成長していないな、ハヤテ・インメルマン少尉!」
「メッサー、なのか?」

 ハヤテは、驚きを隠せない。何てったって、西暦2067年で一緒に空中騎士団と戦った仲間だからだ。メッサー自身は、新米パイロットのハヤテを足手まといに思っていたかもしれない。だが、驚くのはそこじゃない。

彼が”生きている”ことだ。「メッサー・イーレフェルト」通称・死神。ハヤテの知る正史では、空中騎士団の白騎士「キース・エアロ・ウィンダミア」との戦いで殉職している。

 何かが、おかしい……
“世界の音を愛する者”と関わってから、通常の知識とズレが起こり始めているのかもしれない。そう、新たな特異点を中心に。

「貴様にフレイアの身柄を渡すわけには、いかんな」
「はぁっ!? そりゃ一体、どーゆうことだよ? てか、生きているなら何で連絡寄こさないんだよ!?
 カナメさんが、どんだけ心配してると思ってるんだ!!」
「貴様ごときが、カナメさんの名を呼ぶな!」
「あっ!?」

 ハヤテは、舌打ち交じりで心の中の言葉を漏らしてしまった。”ヤベッ”と思ったが、あまりにもメッサーの言葉が不服だったため、謝罪の言葉は発しなかった。

「それで。貴様は、俺じゃなくフレイアに会いに来たのだろう? 油を売ってていいのか?」
「ヘッ! アンタに言われなくても、そうするよ。じゃあな」

 ピピピ……

「えっ?」

 ハヤテのバルキリーのコクピットに響いた音。それは、ロックオンされたアラート音だった。

「インメルマン少尉。いや、特異点(“世界の音を愛する者”)の貴様を抹消させてもらう!」
「はぁ? 俺が特異点だって? 冗談よしてくれよ」
「黙れッ! 貴様のせいだ……貴様のせいで俺は!!」
「ど、どうしたんだよ。メッサー!?」

 メッサーの様子がおかしい。21年前に殉職したハズの男が生きていた。それだけではない。ハヤテがデルタ小隊に入隊して間もない頃も、メッサーから実弾演習でロックオンされた過去もあるが、今とその時では”風”の雰囲気が違った。

 そう、この”風”が感じさせるものは、生と死だった。

「おまえが戦場をフラフラ飛び回っていたから!」
「何をッ!!」
「デルタ小隊だけでなく、ワルキューレにも迷惑をかけやがって!」
「くっ……」

 ハヤテとメッサーのドッグファイトが始まった。

「貴様じゃ、フレイアを! それどころか、これから起きる事象に巻き込まれる人類を……貴様では、救えん!!」
「事象だぁ?」
「分からないのか。なら分かるように言ってやる! 惑星ヴォルドールで貴様がフレイアと共鳴した時、
宇宙の理が破壊されたんだ」
「えっ……それって、確かアンタが死んだ後じゃ……?」
「よく考えてみろ。13年後の未来、銀河の妖精「シェリル・ノーム」と超時空シンデレラ「ランカ・リー」は、
 ゲートキーパーになっていただろう?」
「!?」
「それだけじゃない! 既に共存の道を選んだ「バジュラ」が、貴様を襲ってきただろう? インプラント弾を
 撃たれていたみたいだが、その撃ち込んだ者のことを考えてみたか?」
「あ……」

 何者かが、バジュラをコントロールしていたということだ。そして、その時代ごとのキーパーソンは、正史と違う”役”を与えられていることにハヤテは気づいた。

ハヤテは、メッサーの言葉で、荒ぶる気持ちが少し和らいだ。そしてメッサーは、ターゲットロックを解除した。同時に、赤いバルキリーが両者の間に介入してきた。

「戦争なんてくだらないぜ!」
「来たか」

 両者の間に介入してきたのは、Fire Bomberのボーカル「熱気バサラ」だった。相変わらず、メッサーの生死については疑問が残るが、どうやらバサラの世話になっているようだ。

「メッサー! ここは俺に任せな」
「分かった」

 バサラと入れ替わりでメッサーは、シティ7内に帰って行った。ハヤテは、バサラにメッサーについて訊ねてみるが、詳しいことは教えてくれなかった。

「なあ、おまえが特異点ってのは本当なのか?」
「いや、身に覚えがない」
「そっか。ま、せっかく西暦2046に来たんだ。俺の歌を聴いて行ってくれ……おまえの死を歌わせてもらうぜ!」
「えっ?」
「俺の歌を聴けぇぇぇ!!」
(何なんだ、一体……俺は、俺は……何者なんだ?)
(ハヤ、テ……)

 不思議な感覚だった。バサラの歌からフレイアを感じている。バサラの”死”の旋律とフレイアの”生”の旋律がクロスしている。

 そして……
 宇宙の理が更に壊れていく。

 そこに生まれる世界に、
 ハヤテの存在は

 ……許されているのだろうか?
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