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超時空恋愛音-LOVE Sound-

原作: その他 (原作:マクロスシリーズ) 作者: ういはる
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第2話「ゲートキーパー」

 西暦2059年

 フロンティア移民船団は、航海中「バジュラ」と呼ばれる生命体と遭遇。初めは、我々人類もバジュラ側もお互いの警戒心から敵視し、交戦する度に犠牲を出すこともあった。しかし、

傷付け合う中で分かったバジュラの行動特性を知った人類は、民間軍事プロバイダー「SMS」の協力により、バジュラとの和解に成功。共存する道を歩みだした。

 和解のカギとなった、銀河の妖精「シェリル・ノーム」と超時空シンデレラ「ランカ・リー」は、現在「超銀河ネットワーク」のゲートキーパーを務めている。

「ランカちゃん。少し休んだら?」
「ありがとうございます、シェリルさん。でも私、ここにいた方が落ち着くんです。だってここには……
私の家族がいるんですから」
「フフッ、そうね」

 バジュラにとってもランカは、母親的な存在という認識らしい。ランカ曰く、今のバジュラは楽しそうな笑顔をしてるという。

「!!!」
「えっ?」

 突然、バジュラの様子に異変が起きた。先程までの穏やかな泳ぎではなく、まるで急に”暴れだした”とでも表現をすればいいのか……。バジュラは奇声を上げて、自分たちの心と体で別々の意思が働いている矛盾に混乱している。

「ど、どうしたの、みんな!?」
「ランカちゃん、危ない!」
「!!!」

 遂には、ゲートキーパーであるシェリルとランカにも敵意を見せてきた。一体、何が起こっているのか。それは考えさせる時間を与えずに起きた。

 超銀河ネットワークのゲートが開こうとしている。そう、ゲートを通って姿を現したのは彼だった。

「よっしゃあ。とりあえずデフォールドは、成功だな!
あとは、ここが西暦2059年かどうか確かめなきゃいけない訳だが……」
「!!!」
「うわぁっ!? 何だ、コイツ! でっけぇ虫だな!」
「!!!」
「危ねっ! コイツら、仕掛けてくるのか!? 上等だぜ!!」
「ダメぇぇぇ!!」
「え……女……の子?」

 バジュラがハヤテを敵視している。不意打ちを食らった感じになった訳だが、応戦態勢に入ったハヤテをランカが止める。ハヤテは、武装を解除したがバジュラにその意思は無かった。

「ランカちゃん、あの人が危ないわ!」
「み、みんな、やめて! その人を攻撃しないで!!」
「!!!」

 しかし、バジュラは行動を止めることはなかった。これでは、初めてバジュラと出会った時に逆戻りだ。この張りつめた空気にシェリルとランカは、決意する。

「シェリルさん! 私、歌います!! あの子たち……苦しんでる」
「そうね。じゃあ、ランカちゃん! 久しぶりにデュエットしよっか」
「はいっ!」

 歌でバジュラとコンタクトを取る。それが2人の”使命”。でも、今は少し違う。彼女たちは、”使命”ではなく”生きることの喜び”を……

誰かに言われて歌うのではなく、自分たちの歌(意思)で銀河中に元気を届けたい! バジュラにも分かってほしい。だから、私たちに教えて

――何しに生まれたの?
――何しにここにいる?

「!!!」
(き、効いてない……どうしよう)
(諦めちゃダメよ、ランカちゃん)

 この様子を見ている者がいたら、こう思うだろう。”詰んだ”、と。でも結果は違った。そう、この場にはもう1人いる。

「おい、おまえら。今のままじゃアイツらを止めることは、できない」
「えっ?」
「インプラント弾だ! 俺の無理やりなデフォールドの影響と思わせるように、シナリオを展開してる
奴がいる!!」
「シナリオですって!? 私たちをなめてるのかしら?」

 確かに今、ハヤテが放った言葉は人によっては、馬鹿にされたと思う人も少なくないと思う。実は、ハヤテがこの場にデフォールドした時、例の宛先から2通目のメッセージが送信されていたのだ。

「まさかとは思ったが、アンタたちがシェリル・ノームとランカ・リーだな? 取り急ぎで聞きたいことがある。
“世界の音を愛する者”という人物を知っているか?」
「何よ。インプラント弾をどうするか、じゃないのかしら!?」
「早く答えろ! この生物に撃ち込まれているインプラント弾には、自爆用の爆弾が仕組まれているらしい」
「何ですって!?」

 ハヤテからの衝撃の言葉が放たれた。そして、それとほぼ同時にインプラントを撃ち込まれていたバジュラの群れは、融けるように消滅してしまった。

「えっ……ウソだよね? ねぇ、ウソって言って……」

 ランカは、ショックを隠せない。仲良くなれたバジュラ(本当の家族)を目の前で失ったのだ。シェリルは、ランカの精神的な心配と、あと1つ。ハヤテを鋭く睨めつける。当のハヤテ自身も、申し訳なさそうにその場に崩れた2人にもメッセージを確認してもらった。

“ごきげんよう 銀河の妖精 そして 超時空シンデレラ ”
“バジュラ の 皆さんと仲良く 暮らしていますか?”
“私は 世界の音を愛する者 デス”
“今日は 皆さんに プレゼントを ご用意しました”

「う、うぅ……」
(ランカちゃん……)

――透明な真珠のように、宙に浮く涙
――悲劇だってかまわない、あなたと生きたい

「歌……?」
「この曲は、ランカちゃんの星間飛行」
「この声は!?」

 3人の耳に聞こえているのは、後にランカが”超時空シンデレラ”と呼ばれるキッカケとなった、彼女にとって思い入れのある「星間飛行」だ。しかし、一体誰がどこで歌っているのだろうか?

 この場には、シェリル、ランカ、ハヤテの3人しかいない。シェリルもランカも、とてもじゃないが歌を歌える状態ではない。当然、ハヤテも歌っていない……が

「フレイア……なのか……?」
(ハヤ、テ……)

 微かだがハヤテは、フレイアのルンを感じた。とても悲しそうな声で歌っている彼女に、ハヤテは精一杯に言葉を届ける。

「おまえ、今どこにいるんだよ?」
(多分、西暦……2046年)
「何だよ、多分って。西暦2046年っていうと、”バロータ戦役”あたりか」
(気を、付けて……ハヤ、テ。世界の音を愛する者、それは……)
「えっ?」

 フレイアが、例のメッセージを送信してきた” 世界の音を愛する者”というキーワードを出した途端に、ルンの反応が途切れた。

「フレイア! フレイアーーーッ!!」

 せっかくルンを通じてフレイアと会話が出来たのに……ハヤテは、何とも言えないモヤモヤを抱え込み、落ち込んでしまう。そんな様子を見ていたシェリルとランカは、脱力してるハヤテに向かって言った。

「何をしているの、貴方!?」
「えっ?」
「歌ってた人……きっと、あなたに会いたいって願ってたから。その意思が超銀河ネットワークを通して、
私たちに語りかけることが出来たんだと思う」
「そうね。きっと、ランカちゃんの言う通りだわ!」

 時空を超えてもハヤテは、ルンを感じることができた。その点は、彼にとって微かにだが安心している。しかし、今回のように急にルンの反応が途切れる可能性は、とても高いと思った。

 そんな自分のモヤモヤに負けそうになるハヤテに、彼女たちは

「貴方! 覚悟は、あるのかしら?」
「もしよろしければ、私たちが西暦2046年までのゲートを開きますけど?」
(フレイア……俺は……)

 少し間をおいてハヤテは、答えた。

「ああっ! 頼むぜ!!」
「フフッ、男の子はそうでなくちゃね」
「では、ゲートを開きますね。それと……良ければ、お名前を教えていただけますか?」
「俺の名前か? ハヤテ・インメルマンだ!」
(ハヤテ……この子が、あのハヤテ・インメルマン……)

 シェリルは、名前を聞くと、彼女の中で何か引っかかった。8年後に起きるヴァールシンドローム。シェリルは、今回のフレイア失踪事件をハヤテはもちろん、デルタ小隊やワルキューレ以上に危機感を抱いたのだった。
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