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超時空恋愛音-LOVE Sound-

原作: その他 (原作:マクロスシリーズ) 作者: ういはる
目次

第4話「創造」

この空間に時代という概念は、存在していない。

空も地上も無い”無”の世界。

唯一存在しているのが”音”だけ。歌声はもちろん、
自然に生きる生物そのものの”生”が奏でる鼓動(音)が、こだまする空間。そう、

 この世界を作ったのは、特異点(“世界の音を愛する者”)。

 1人の歌姫を探す旅に出た、銀河を超えたジャンパー「ハヤテ・インメルマン」……

 今、彼の周りに起こる事象が具現化する。

「お待ちしておりました、ハヤテさん。私は、クイーン・ザ・マクロス。リン・ミンメイと呼ばれた者です」
「あのゼントラーディとの共存の道を導いた伝説の歌姫……」
「未来の世界では、私は有名なようですね。この閉鎖的な空間は、世界の歪みが強く反映されます。あなたの
意志の力で、この空間に新しい音を……あなたの世界を創ってください」
「俺の、意思?」

 その時、この閉鎖的空間に音が響いた。ラグナを出発してから求めていた”音”、フレイアの歌声だ。

「そこに、いるのか?」
「あなたの意志の力で、フレイアさんの歌声が聴こえるようになったのです。これによって今、この世界の
アダムとイヴが誕生しました」
「えっ? ミンメイさんもこの世界に存在しているんだよな?」
「私は……」

 元々この世界で、どのような位置で存在すれば良いのか分からなかったミンメイは、ハヤテの疑問から新しい役割を与えられた。

「私にも役が出来ました。リリスとして、この世界に誕生しました」

聖書でアダムの前妻と記されている「リリス」。特異点(神)に罰を与える、という役割なのだろうか?

「お、おぉ……ああ!」

 ハヤテは、ミンメイの言葉で自分の立場を理解し始めた。この何も無い空間に生まれた世界。そう、
聖書でいうならここは楽園(エデン)……

 この世界でこれから起こる事象。ハヤテは、自分の役割に気付き始めた。

(俺、殺されるのか?)
(ハヤテ……)
(教えてくれ、フレイア。俺は、どうすれば良い?)

 自分が存在して良いのか、分からなくなっているハヤテ。フレイア(イヴ)は、エデンを追放され、アダムである自分は、ミンメイ(リリス)に殺される(罰を受ける)。もし、

 ハヤテとフレイアがいなくなったこの世界(エデン)は、どうなるのか。そして、残されるミンメイは、エデンをどう創生していくのか……。

 フレイア、カナメさん、美雲さん、マキナ、レイナ……。
隊長、教官、
 シェリルさん、ランカさん……。
 バサラ、メッサー。

(あんた達に出会えて、良かったぜ。最後に……声を、聴きたかったな)

 ハヤテは、心の中でそう呟いた。
分かるであろうか? ハヤテの意思は、もう1度”みんなに会う”ことを望んでいる。

彼の意思は、
この世界を創造するのだ。

「ハヤテ少尉!」
「!?」
「全く、おまえって奴は……無事で良かったよ」

 ハヤテは、驚いた。突如、目の前に現れたのは、デルタ小隊の仲間「アラド」と「ミラージュ」だった。ハヤテの無事を知ったアラド隊長は、ホッとした表情を見せた。一方ミラージュは、ハヤテとの再会に感動のあまりか、その眼には涙が溜まっていた。

「ハヤハヤ~~~」
「ハヤテの生存を確認……」
「でも、ここは一体どこなのかしら?」
「フフッ。そんなの気にしなくて良いじゃない。私たちの歌は、ラグナに限定されるわけじゃないもの」
「み、みんな……」

 ミラージュに続いて、ワルキューレのメンバーもエデン(目の前)にいた。

「は~い、男の子。元気だった?」
「いろいろ疑問点はありますけど、とにかくハヤテさんが無事で良かったです」
「シェリルさんとランカさんまで……」

 銀河の妖精と超時空シンデレラの2人も現れ、ハヤテは自分の音(意思)を改めて理解した。

「何でここにって言うのは、ナシだぜ?」
「バサラまで! ってことは……?」

 ハヤテは、カナメに目を向けた。だが、残酷なことに

「悪いな。メッサー(アイツ)は、来てねぇ」
「えっ、何でだ?」
「詳しくは分からないがな。おまえさんとドンパチした後、満足そうに別の銀河系へ飛んで行っちまったよ」
(……)
(カナメさん……)

 ハヤテは、申し訳ない気持ちになってカナメから視線をそらした。しかし、彼女はハヤテの視線に気付いていた。そんなハヤテに向けて口を開いた。

「心配してくれてるのかしら、ハヤテ君?」
「あ、いえ、その……何か、申し訳ないっス」
「良いのよ。気にしないで。それよりフレイアは、どうなったのかしら?」
「あぁ。歌声は、聴こえてるんだ。けど、まだ姿は確認できてなくて……」

 ハヤテは、ワルキューレ、銀河の妖精、超時空シンデレラ、バサラに現況を伝えた。旅の途中、
何度もフレイアの歌声は聴こえたけど、会うことは出来なかったと。

ハヤテが状況を説明している時、美雲がミンメイに視線を送っていた。見つめているというより、どちらかというと睨んでいるように見える。

「あら、どうかしましたか? えーと確か「美雲・ギンガメール」さんでしたっけ」
「いえ。ただ、貴方がハヤテをどうするか……気になっただけよ、クイーン・ザ・マクロス……」
「その様子だと、私がこの世界でどういう役か、分かっているようですね」
「いいこと? フレイアはもちろん、ハヤテに危害を与えるつもりなら覚悟することね!」
「……」

 ミンメイが少し寂しそうに見えた。これは、この場にいる全員の感覚だった。
 愛しいパイロットがクルーの女性と結ばれた時から……
 彼女は、孤独だった。

恐らく、そう感じたのはフレイアのフォールド波によるものだろう。フレイアは、歌っている……
今回の事象を収めるため、”祈り”の歌(音)を。

(ハヤテ……美雲さん……)
(大丈夫よ、フレイア。貴方は、ハヤテを信じなさい……まずは、そこからよ!)
(はいっ!)

――キリキリ舞い あなたのために、未来のために
――何度砕け散っても

「俺は! 俺は……フレイア! おまえが好きだぁぁぁ!!」
「ハヤテ!!」

――愛することで、生まれ変わる
――愛されたくて、生きて帰る

 ハヤテの目の前にフレイアの姿が確認できた。彼女は、突進するかのようにハヤテの胸に飛び込んだ。そして、この結果はエデンにも影響を与えた。

何も無かった空間に、ライブステージが設置されていた。
 最初は、この空間にいる全員がフレイアの意思で創られたステージだと思っていた。しかし、
 驚くことに直接関与したのは、フレイアではなくミンメイだった。

「……」

 ミンメイは、何とも言えない感覚に涙を流している。
 エデンの使命から解放された喜びと、みんなに迷惑をかけてしまった不安のような精神的な苦しみ……

(歌いたい。私もみんなと一緒に歌いたい!)

――今、あなたの声が聞こえる……「ここにおいで」と
――淋しさに、負けそうな わたしに

「この曲は!」
「ミンメイさんの「愛・おぼえていますか」やね」
「この優しいチクチクは……好き」

 どうやら歌の前には、”罪”なんか無いようだ。宇宙の理は、壊れたままだ。
でも、ここでは……

――もう、ひとりぼっちじゃない
――あなたがいるから

 “彼女たち”が信じる、彼女たちだけの……

“世界の音を愛する者”がいるから。
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