ネット喫茶.com

オリジナル小説や二次創作、エッセイ等、自由に投稿できるサイトです。

メニュー

サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

ヘルプミー

それからすぐ、目の前にあった軍艦はサニー号から離れていき、僅かな時間の間にすの姿を水平線の彼方に消してしまった。
「っ何なんだよ、アイツ!!!」
何もできずにシンを連れていかれた面々は言いようのないそれぞれの苛立ちを表出しており、ルフィもまた暴れまわりそうになる衝動を必死に抑えているようだった。
「シンのやつ、ふざけやがって!!!」
「何でシンに対して怒ってんのよ、アンタは!」
「ナミはムカつかねえのかよ!」
「何によ!?」
「アイツあんな泣きそうな顔して、助けての一言も言わなかった!」
ルフィのその言葉に、思わずナミが目を見開く。
言葉を詰まらせたナミに気付いてもいないのか、ルフィは苛立ちをそのまま言葉に出して続ける。
「行きたくねえってあんな態度に出しておいて、それなのに何であんな奴と一緒に行くんだよ!」
ルフィの言葉は最もだった。
けれどそうした心情も、分からない訳でもなかった。
「・・・守られた、のかしら。」
ふとロビンが言葉を発する。
サンジを軽々と殴り飛ばしたあの男の実力は相当なものなのだろう。
その本当の実力をシンが知っていたとなれば、此方の実力を知らないシンからすれば敵わないと思うのもまた仕方のない事ではないだろうか。
そしてそんな男から、シンは自分達を守ったのだと、ロビンはそう推測を口にした。

そんなロビンの意見を、ふと遮った一つの声。
「そうとも限りませんよ。」
それはいつになく神妙な様子のブルックの声で、その声に反応して一同の視線がブルックに集まる。
「あの男の人『助けた子供に殺されたくはないだろう』と、そう言ってましたよね。」
「言ってたが、それがなんだってんだよブルック。」
「ヨホホ、ウソップさん、可笑しいとおもいませんか?彼は自分にではなくシンさんが私たちを殺すと、そう言ったんですよ。」
「・・・それって、どういう、」
「真意は分かりませんが、何かきな臭いですね。『G-0』支部とは非人道的な組織なのでしょう?シンさんが特殊な悪魔の実の能力者になったのも、何か深い事情があるのではないでしょうか。」
「ちょっと待って、ブルック。シンが能力者だっていう話、ロビンと私がお風呂に入ってる時に聞いた話だから他の人間は知らない筈じゃないかしら?」
「あ・・・」
「っ覗いてんじゃないわよ!」
「ナミさん、痛い!」
「やかましいわ!!」
口を滑らせたブルックはナミに痛めつけられてボロボロに。
けれどその話は的を得ていたように感じ、ナミはすかさずルフィに声を掛けた。
「ルフィ、追う?追わない?」
「追うって、おいおい、ナミ。アイツが自分で決めて行ったんなら、俺たちに連れ戻す権利はねーぞ。」
「自分で決めて?冗談やめてよ、ウソップ。行きたくて行ったんなら、どうしてあんな泣きそうな顔してたのよ。」
「助ける義理はねぇだろ。」
「ゾロ、アンタ・・・悔しくない訳?女の子一人守れなくて、それで引いていいの?」
「っ!?」
反論を全て説き伏せたナミが再度どうする?とルフィに問えば、怒りに燃えたルフィは当然のように声を大にして進路を指さす。
「俺は怒ってんだ、シンに一言言ってやらなきゃ気がすまねえ!ナミ!追うぞ!!」
「はいはい、キャプテン。了解しました。」
進路は軍艦が消えた海の彼方へと決定し、その判断にはもう誰も反論はしなかった。
「ところでよ、ナミ。シンの食べた悪魔の実ってのは一体どんな実なんだ?」
ルフィの指示を受けサニー号が船首をシン達が進んだ方向へと進み始め、一味はそれぞれが戦闘態勢を構える中でふとフランキーがナミに声を掛ける。
ブルックの言った「特殊な悪魔の実」の件を思い出し、その能力についてナミに問いかけるフランキーに、ナミは少し曇った表情を浮かべた。
「あんまり、気分のいいものじゃないわよ。」
「あん?そりゃ一体どういう事だ?」
怪訝そうな表情をするフランキーに、ナミはシンの食べた悪魔の実の能力を聞いたままに教える。
最初はその話を時折頷きながら聞いていたフランキーも、話が中盤になった頃には言葉を失い最終的にはぐっと湧き上がる感情を抑えるかのように強く拳を握っていた。
「死にたくても、死ねねえ・・・?」
絞り出したフランキーのその言葉に、ナミはそうね、と静かに頷く。
それを近くで聞いていた面々も思わず言葉を失う中、ふっとその場を離れたのはゾロとサンジの二人。
「ゾロ!サンジ!」
そこに声を掛けたのは二人の様子に何かを感じたらしいルフィで、その声掛けに一瞬足を止めた二人はしかし振り返る事なく言葉を口にする事もなく再び歩き出した。
「お前ら、まだ暴れんなよ。」
その背にルフィが掛けたのはそんな言葉で。
それに互いに合わせた訳では決してないのであろうが、片腕を上げる事で返事を返したゾロとサンジの二人に、ロビンは苦笑を浮かべた。
「みんな、優しいわね」
「ヨホホ、そうですね。」
二人が何を想ったか、おそらく一味全員が分かったのだろう。
ロビンの声にブルックもまた少し笑いながら返事を返した。
目次

※会員登録するとコメントが書き込める様になります。