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サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

グッバイ・ハピネス

ゾロの言葉に弾かれるかのようにシンを庇うように展開される麦わらの一味の布陣。
誰もが背にシンを隠すように立ちはだかったのは、目の前の軍艦がシンに悪影響を与える何かである事を推測したからだ。
「あれは、海軍の軍艦?」
その状態の中でも冷静に状況を判断するのはロビンで。
色や形からその軍艦が海軍の物であると理解したロビンは、目を細めてその軍艦がどのようなものであるかを探る。
ウソップもまた望遠機能のあるゴーグルをその目に装着して軍艦の情報を探ろうとしていたが、ふと軍艦に書かれた文字が目に入った事でその文字を口にした。
「『G-0』?」
「っ!?ウソップ、今なんて言った!?」
「G-0・・・だよな。あの軍艦、そう書いてある。」
「嘘だろ!?」
「まさか、そんなこと・・・っ」
「どうしたの、フランキー!?ロビンも、あの軍艦の事知ってるの!?」
そのウソップの言葉に反応したのはフランキーとロビンの二人。
それにナミが問いかければ、絶句するフランキーの代わりにロビンが答える。
「海軍『G-0』支部、別名・・・ゴースト」
「ゴースト?」
「5年前に閉鎖された海軍支部の名前だわ。」
「閉鎖?」
「公に出来ないような非道な手段を使うといわれた、海賊の殲滅に特化した海軍の中でも特殊な隊だったの。そのやり方があまりにも非人道的すぎて閉鎖された、と私は聞いているわ。」
「俺もそう聞いた。あの軍艦にゃ、毒ガスやら異常な破壊力の砲台やら、使ったら大問題になる兵器が載ってるってんで昔気になって調べた覚えがある。」
「閉鎖されたって事はもう人員だっていないはずでしょう!?ならどうして目の前にあるのよ!?」
ロビンとフランキーの説明を聞いても謎が深まるばかりのその軍艦の登場。
そんな中、ふと一つの声が響き渡る。
「そんな所で何をしているんだ?早く戻っておいで。」
優しい口調のはずなのに、どこか命令という響きを帯びた声。
その声に不快感を露わにしたサンジとゾロが声のする方を睨みつければ、それは軍艦の船首から聞こえていている事が分かって。
それに気が付いたかのように軍艦の船首の人影が動けば、その雰囲気に殺気を感じ全員戦闘態勢をとる。
「迷惑をかけたようだけど、“それ”はウチのモノなんでね。返して貰えないか?」
声と共に軍艦から飛び降りサニー号の甲板へと降り立ったのは一人の男であり、海軍本部将校の証である白い上着を羽織っているその男は当然海軍の人間なのだろう。
隙を見せない佇まいながらも張り付けたような笑みを浮かべるその男は、ルフィ達になど目もくれる様子もなくゆっくりとシンの方へ歩み寄ってきた。
「帰るぞ、シン。」
その声に、シンの肩がビクリと跳ねる。
けれどそれすら気にする素振りを見せないその男は、手を伸ばしてシンの腕を掴もうとした。

「おい、嫌がってんだろ」
それを阻んだのは、サンジだった。
伸ばされたてを片足で止め、怒りを隠さない鋭い視線で男を睨みつけたサンジは低い声で男に告げた。
「嫌がる?どこが?」
あっけらかんと答える男にサンジの怒りは更に煽られ、足を振りかぶり強烈な蹴りをその男に喰らわせた。
否、喰らわせようと、した。
「海賊風情が良い気になるなよ。」
しかしそれは軽々と交わされると、代わりに重い拳がサンジの脇腹を捕えその衝撃でサンジの体が吹き飛ぶ。
「っサンジ君!!!」
その事態に悲鳴のような声を上げるナミ。
慌ててチョッパーが駆けよれば、蹴られた脇腹を押さえ口から血を伝わせたサンジがなんとか起き上がろうとしていて。
「お前、覚悟できてんだろうな」
その様子を見たルフィが静かに闘志を燃やし、ゾロもまた腰に携えた三本の刀を全て抜き去り戦闘態勢を整える。
男はそれらの様子をため息をついて眺めた後で、細めた視線をシンに向けた。
「死ぬぞ。いいのか?」
言葉はそれだけだった。
それ以上はいらなかった。
シンは自分に背を向け守ろうとしていたロビン達の間を縫って男に近付くと、震える声で言葉を絞り出す。
「関係、ない。何にも、関係ないから、」

帰るから。

その言葉だけで、男は殺気を消した。
そして満足そうに口角を上げるとシンを抱きかかえ、ルフィ達に背を向けるように歩き出した。
「おい、待てよ!!」
それに制止を掛けたのはゾロの声。
しかし男は止まらず、言葉を返す事さえしない。
「ってめぇ・・・!!!」
それに怒りを煽られたゾロの声が更なる怒気を孕めば、その直後響いたのはシンの声。
「っあり、がとう、」
助けてくれて。
「ありが、とう・・・っ」
だけど、
「もう、いいから、」
お願いだから、
「もう、関わらないで・・・!」

説明も言い訳も何もない、ただのお礼と決別の言葉。
切羽詰まったその声を聞けば誰も動けなくなり、構えた武器を下ろして言葉を失う。
「命拾いしたな。貴様らも、殺されたくはないだろう?」

助けた子供に。

男はそう言い残し、軍艦へと戻って行く。
「っシン・・・!」
その姿を止める事も出来ずに、チョッパーが呼んだ名前だけが静かに響いた。
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