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サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
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フォール・イン・ダークネス

ある人はそれを闇と言い、ある人はそれを夜空だと言う。
違いがあるとすれば、光が有るか無いかの違いだろうか。

第5話 フォール・イン・ダークネス

「寿命が来れば、死ねるから」
だから、誰も居ない、何も起こらない海底で独りずっと居ればいいと思って。

シンが発した言葉を、一体誰が飲み込む事が出来ただろうか。
凡そ子供が発する言葉ではない。更に言えば、“海底”の単語にもそれぞれが引っ掛かりを感じていた。
「なんで攻撃したか、は、」
シンは一味が黙っているのを気にも止めずに、続けてゾロの質問に答えようと口を開く。
その声色には一切の起伏がない為に機械と話しているのではないかと思う様な感覚に陥ったのは言葉に出さずとも皆がそうだったのだろう。
「貴方が、殺気を持って私を見たから。」
しかし、その次いで出た言葉には明らかな感情が籠っていた。
僅かに光さえ孕んだ瞳が見据えたのはゾロの顔で、その表情には思わずゾロでさえたじろいだ程。
「・・・フフ、こんな女の子に殺気を飛ばすだなんて酷い剣士さんね。」
と、その空気を僅かに緩ませる発言がロビンの口から発せられたのはその時だった。
思わず誰もがロビンを見れば、そこには穏やかに笑みを浮かべるロビンが居て、その足は今まさにシンの方へと歩き出そうとしていた。
「ちょっとロビン、何を・・・」
そんなロビンにナミが慌てて声を掛ければ、ロビンは気にする素振りもなくシンに近付いて少し乱れた髪の毛を優しく梳いてやる。
「あら、だってこの子は“自分が何者か分からない、死のうとして海に漂流していて、剣士さんに喧嘩を売られたから買った”だけのただの女の子でしょう?そこまで分かっていたら、何も怖い事なんてないじゃない。」
唖然とする中そう言ったロビンは、同世代よりも恐らく軽いであろう体重のシンを抱き上げる。
その予測不能な行動に目を白黒させるクルー達の間を縫って部屋の戸まで歩いたロビンは、振り返って皆に声を掛けた。
「お風呂、一緒に入って来るわ。ナミも一緒にどう?嵐で体も冷えた事だし。」
「・・・そうね。」
ロビンの笑顔を見てナミもようやく緊張が解けたのか、苦笑を浮かべてロビンに返事を返す。
そしてロビンを追いかけるように部屋の出口へと向かい、ナミが近付いてからロビンとナミ、そしてロビンに抱えられたシンは部屋から出て行った。
「アンタ達、覗くんじゃないわよ?」
そんな捨て台詞を残して姿を消した三人を無言で見送った男たちは、女性が居なくなった狭い部屋でただ茫然と立ち尽くす。

その時、今まで異常な程に黙っていたルフィが声を発した。

「アイツ、悪い奴じゃなさそうだな!しばらく一緒に航海するか!」
「は!?ちょっと待て、俺に攻撃仕掛けてきたんだぞ!?」
「それはゾロが殺気向けたからなんだろ?」
「いやいやいや、ルフィ!ちょっと真面目に考えろよ!怪しさしかねぇじゃねーか!」
「ウソップの言う通りだぜ、ルフィ。あれはただの子供じゃねえだろ。何かきっと酷い生い立ちが・・・くそっ、考えるだけで目からオイルが・・・っ」
「ウソップ、俺が大丈夫だってんだから大丈夫だ!フランキーだって泣く程心配するくらいならいいじゃねーか!」
「ヨホホ、相変わらずルフィさんは懐が深い。私はルフィさんの意見に賛成です。この暗い海で独りぼっちの寂しさは私、よーく知ってますからね。表情に出なくても、きっと辛い思いはしたと思いますよ。・・・さて、話もまとまりそうですし、」
50年を独り海で過ごしたブルックの言葉にゾロ、ウソップ、フランキーの言葉が詰まる。
それを確認したブルックは満足そうに微笑んで、ゆっくりと部屋の出口へと向かおうとする。
「おい、ブルック?どこ行くんだよ。」
「いえいえ、折角なんでお風呂でも行こうかと・・・」
「お前のぞき見する気満々じゃねえか!ガキも居るんだぞ!!わきまえろ!!」
「ウソップさんも一緒に行きますか?」
「行くなっつってんだよ、俺は!!!」
止めるウソップとウソップを引きずるブルック。
飽きれたぜと苦笑を浮かべたフランキーは、とりあえず先ほどの嵐でダメージを負った船の修復を再開すべく甲板へと向かう。
残されたルフィは、納得できないといった表情を浮かべ眉間に皺を寄せたゾロに近付くと、にっと笑ってその顔を見上げた。
「船長命令だ、アイツはしばらく一緒に航海する!ゾロ、分かったか?」
「~っ分かったよ!ただし、おかしな動き見せたら即斬るからな!」
「おう、分かった。」
ちっと舌打ちをしたゾロもまた船室を後にしようと出口へと向かうが、その途中で俯いたまま先ほどから一言も発していなかったチョッパーの頭を被っていたい帽子の上からガシっと握るように押さえる。
「だそうだ。しばらく一緒に居るんだから、アイツの面倒はお前が診ろよ。」
暗に「任せた」という響きの籠ったその言葉に、チョッパーは無言ながらも強く強く頷いた。
その様子を満足気に見ていたルフィは、チョッパーを持ち上げると自分の麦わら帽子を被った頭の上にチョッパーを乗せてゾロの後を追うように部屋の出口へと向かう。
「とりあえずメシだ!サンジにうんめぇメシ作ってもらうぞチョッパー!!!」
一際明るい声でルフィがそう言ったのは、無意識ながらも彼の優しさなんだろう。
その声にチョッパーは「う``ん``・・・!」と濁声で返事を返した。
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