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サヨナラだけが人生だ

原作: ONE PIECE 作者: 柚月
目次

ガールズ・ミート

神が残した稀な痕跡
それを人は奇跡と呼ぶ

第4話 ガールズ・ミート

ゾロの声を聞き一同がゾロと子供の眠る部屋へと辿り着いたのはそれからすぐの事。
真っ先に駆け付けたチョッパーがその部屋の扉を蹴破らんばかりの勢いで開けば、その目に映ったのは信じがたい光景。
「ゾロ!!お前、何してんだよ!!!」
そして怒鳴り声を上げたチョッパーの目線の先には、鞘に入ったままの刀を二両手に一本ずつ、合計2本持ちそれをベッドから起き上がった状態の子供の首元にクロスさせる形で押し付けて目を覚ました子供の動きを封じているゾロの姿があった。
「子供だぞ!!?」
「アンタ達何を騒いで・・・ってゾロ!?何してんのよ!!」
ルフィを追いかけてついて来ていたナミも部屋に到着し、その状況を見るとチョッパーに続くようにゾロを怒鳴りつける
「うるせえ!ガキなのは見りゃ分かるに決まってんだろうが!!だがなっ」
語気を強めて続けるチョッパーと、同じく声を荒げるナミに対し、ゾロは視線を子供から外さないままで言葉を返す。
その声色には明らかな緊張と殺気が籠っていて、状況の飲み込めないチョッパーは慌てて二人の側へと駆け寄った。
「何があったんだよ!?」
「チョッパー!迂闊に近付くと・・・っ」
そのチョッパーの行動を慌てて遮るかのようにゾロが声を荒げる。
しかしその声が届く前にチョッパーは既に二人の側へと辿り着いていて、それと同時にゾロによって行動を抑えられていた子供の目線がチョッパーへと移った。
そしてその瞬間には、ゾロの刀を掻い潜ったその子供がチョッパーへと急接近すると握りしめた拳を高らかに振り上げる。
「っ俺たちは!!お前を攻撃なんかしねえから安心しろ!!!」
子供が振り上げた拳は次の瞬間には振り下ろされ始めていたものの、それを見たチョッパーは子供に向けて大声を張り上げてそう言葉を発した。
すると、その言葉に嘘はないと察知したのか振り上げた拳を降ろした子供は脱力したように先ほどまで眠っていたベッドへとへたり込む。
「何なのよ、一体・・・」
その様子に唖然としながらナミが思わず声を漏らせば、続いて部屋に到着するクルー達もまたその現状に目を白黒させるばかり。
その視線の先には表情無くベッドに座る子供の姿があって、一同の視線が集まっているのを感じたのであろうその子は感情のこもっていない子供らしからぬ視線を皆の方へと向けた。
「ここ、は・・・?」
発した声は妙に枯れていて漸く聞き取れる程度。
しかもか細いその声にチョッパーは心配気な表情をしながら子供に近付くと優しく頭を撫でた。
「ここは海賊船だ。海賊って言っても、俺たちはお前に何か危害を加える気なんて全くないからな!」
「海賊、船、」
チョッパーの言葉を繰り返すように呟く子供に対し、言葉が通じるのだと分かったチョッパーは極力優しい声で声を掛け続ける。
「お前、名前は?」
「名前・・・は、シン・・・」
「歳は?」
「わから、ない」
問いかけに帰ってくるのはどこか無機質な返答ばかり。
その違和感に皆が眉を顰める中、刀を腰に戻したゾロが静かに口を開いたのはその時で。
「何で攻撃をした」
眠っていたその子供、シンが目を覚ました時、ゾロはそれに気が付いて声を掛けていた。
待ってろ、すぐに医者を呼ぶから、確かそんな言葉だったという。
しかしそれを聞いた直後のシンの行動は、ゾロにとっても予想外のものであった。
「目覚めた直後にあんな動きは普通は出来ねえ。お前は一体何者で、どうして海に居て、何故攻撃をしてきた。」
目を覚ましたシンは、瞬時に掛けられていた布団を跳ね上げてゾロの視界を奪うと、その隙を突くようにゾロに向かい突撃してきたそうだ。
その真意を問いただすゾロを、普段であれば子供に対しての態度ではないと怒るナミも、間を取り持とうと仲介役を買って出るウソップも、その時は誰も止めようとはしなかった。
どうしてかと問われれば、シンの様子が明らかに普通の子供とは違っていたからであろう。
そう感じてしまう程に、見た目には10歳程度の年端である事が伺えるシンがまるで年相応には見えなかったのだ。
「何者か、は、分からない」
僅かに緊張の走る室内で、シンはゾロの問いに順番に回答するかのように声を響かせる。
「どうして海に居たか、は、」
そしてふと、シンの言葉に僅かに感情が籠ったのを感じたのはその質問に答えようとしている時の事だった。
どこか影を落とした瞳に気が付いたチョッパーが声を掛けようとしたが、それはゾロに制されてしまい。
ゾロの視線はシンを見たまま鋭く細まり、続く言葉をただ待つ。
シンは幾度か口を開こうとしては躊躇うようにまた口を閉ざし、それを幾度か繰り返した後にようやく言葉を発した。
「どうして、どうしてって、」
シンは今までゾロ達に向けていた目線を床に落とすと、それはそれは蚊の鳴くような小さな声で絞り出すように続ける。
「死ぬのを、待ってたの。」
そうして聞こえた回答はそんなもので、思わず空気が固まった。
「な、にを、」
チョッパーは絞り出すように言いながらシンの顔を覗き込んだが、その表情を見て言葉を続ける事ができなかった。

まるで漆黒の闇のような視線が、静かに絶望していた事に気が付いたから。
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