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ずっとずっと

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: ノムさん
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第3話

岩ちゃんと恋人になりたい。

岩ちゃんとそういう仲になりたい。

それはつまり、俺は岩ちゃんのことが好き、ってこと。だよね。

そんなことってある・・・のかな。だって、俺たちは男同士だし。今まで二人で部屋にいたことも、泊まったことも、それこそ同じベットで寝たこともあるけど、何か間違いが起きたことなんて一度もない。18年間だよ。その間にずっとこれだけ近くにいて、そんな雰囲気に一度もなった事はない。それに、岩ちゃんもそんな素振りを見せたことだって一度もない。という事は、岩ちゃんは俺にそんな気はないって事で。まあ、当然だけど。自覚した途端に失恋ってことじゃん。伝えることもできずに。
ここは廊下だけど、思わず頭を抱える。昼休みはいつも岩ちゃんのクラスに行ってるから、今日は不思議がってるかもしれないけど、でもどういう顔をして岩ちゃんを見たらいいかわからなくて行けない。あーーもう、どうしたらいいんだ。
いろんな女の子と付き合ってきたけど、彼女たちに抱く気持ちは岩ちゃんに対する気持ちと全然違って・・・、なんかもっと、ホカホカする、というか。岩ちゃんに触れたいっていうのと別に、触れなくてもいいから一緒にいたいし、もっと笑顔が見たいし、知りたい、って思う。
認めちゃえば早いけど、つまりは岩ちゃんに夢中ってこと。ああ、どうしよう・・・。

「おーいーかーわ!」
「え!?な、な、何?どうしたの?マッキー」
「こっちのセリフだぜ。こんな廊下で頭抱えて。どうしたんだよ」
「・・・引かない?」
「俺たちの仲だろ。引かない引かない」

マッキーの目を真っ直ぐ見る。いつもはふざけているけど、その実心優しくて誠実な男だって事は3年間でわかってた。

「俺、岩ちゃんのこと、好きかもしれない」
「え」
「岩ちゃんのこと真っ直ぐ見れない・・・。どうしよう」
「ちょ、ちょっとまってくれ」
「あ・・・ごめん、引いたよね」
「いや引いてねーけど・・・、というか、お前らまだ付き合ってなかったのか」
「え?」
「ずっともう付き合ってるもんだと思ってた。付き合ってないにしろ、まあ両思いというか」
「付き合ってないよ!なんなら昨日気づいたのに!」
「いやー逆にびっくりだわ」
「ちょっと!」
「まあ、岩泉もお前のこと好きだと思うぜ」
「そんなことないよ。だって、俺たち男同士だし、岩ちゃんと俺だよ?」
「そんなこたーわかってるよ。でも、岩泉のお前に対する態度は全然違うぞ」
「うん・・・。それは、わかってるよ」

岩ちゃんにとって、俺が特別なのはわかってるよ。それがそういう意味かどうかは別として。そんな事はずっとわかってる。

side 岩泉

「いーわーいーずーみ」
「なんだ、松川か」
「何〜?ちょっと不機嫌じゃない?」
「及川が来ねえ」
「なるほどねぇ・・・」
「昨日から様子がおかしいんだ」
「そうだっけ?俺と花巻と別れた時は普通だったよね」
「その後、夕飯の話してたらおかしくなった」
「うーん、それはなんでだろうね」
「なんか急にそわそわし始めてよ」

なんなんだろうな。本当に。いつも俺の隣には及川がいたから、心に穴が空いた感じがする。
早く来ねえかな。

「あっ、きたぞ」
「よ〜!松川もいたんだな」
「及川が遅くて岩泉が拗ねてたぞ」
「え、ほんとに?」
「ウルセェ」

これは拗ねてるってことなのか?
でもまあ、及川が無事でよかったと思う。でも、花巻と一緒だったのかよ。

「及川、ちょっと顔赤くねえか?」
「え!?そんなことないけど!?」
「何動揺してんだよ」

変なやつだな。今日のこいつは。それにしても、18年間一緒にいて、一度もこいつのこんな顔は見たことがなかった。改めて見ても、嫌味なくらい整った顔立ちから見せる(しかもそこらの女よりも可愛い)テレ顔は、正直来るものがある。まあ、こいつ男なんだけどな。
ぶっちゃけ、男が惚れても違和感はないくらいに顔が整ってるな。初対面の時、こいつのことを女だと思っていたしーー、これは墓場まで持っていく話だが、及川は俺の初恋の人でもある。めちゃくちゃ可愛くて、女だと思ってた俺は、一目惚れという形でこいつに初恋を捧げてしまったのだった。男だってわかった時はめちゃくちゃ悩んだ。そして、結局こいつを思い続けることをやめてしまったのだった。
それが小学校の頃の話。それから俺たちは”普通の幼なじみ”になった。いや、普通とは少し違うかもしれないが。とにかく、男同士としてあり得なくもないほどの関係に戻った。恋愛感情を持たないように。だが、結局俺は、初恋の人の顔には弱い。そんなもんだろ。顔だけじゃなく、こいつには全体的に弱い。だから過保護にも、少し重たくもなる。でも、そんなもんだろう。
ーーーとにかく、俺はこいつのテレ顔から目が離せなかった。可愛いとか、好きとか、そういう話じゃない。そう、これは今の俺がこいつを好きだとか、そういう話じゃない。昔の俺がこいつのことを好きだった。それだけの話。のはず、だ。
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