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ずっとずっと

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: ノムさん
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第2話

飛雄が現れた。現れたという表現は少し違うようにも思えるがーーー、とにかく、また俺の前に出現した。実のところ飛雄は当然のように白鳥沢に行って、当然のように牛島にトスをあげ、これまた当然のように俺たちの前に立ちはだかるものだと、そう思っていた。けれど、その予想は裏切られた。飛雄は白鳥沢にはいかず(どうやら推薦が来たわけでもないらしい、一般で受けて落ちたそうだ)、烏野高校に進学した。そして、今まではいなかった相棒を手に入れてしまった。

ーーーなんて事だ。

飛雄の最大の弱点は、飛雄についてこれる人がいなかった事だ。それで北一で問題が起きていたことも、何が起こったのかも俺は知ってる。そして飛雄についてこれるような相棒は一生現れないだろうと予想していた。牛島のように、ついてこれるとはしても個々が独立した才能で、それが掛け合わされて、より強固なチームができる。それが飛雄の道だと、そう思い込んでいた。
だが、あろうことかその相棒は飛雄と並走するどころか、その前を走り続ける。そして、相棒自体に強力な強さはなくとも、飛雄と合わさることで何倍にも何十倍にも膨れ上がる。日向翔陽。最強の囮。俺はこの飛雄と日向くんのペアに恐怖を感じている。悔しいけれどね。

と、いうことでだ。高校生になった飛雄と、日向翔陽の実力を見るために、練習試合をすることにした。どうやら烏野は今まで付き合いがあった高校にもきられ、必死に相手を探しているみたいだった。チャンスだ。最初監督は、「あんな弱小高校と練習試合をする必要なんてない」と思っていたようだが、そこを説得し、なんとか「飛雄をセッターにする」という条件での練習試合を開催できることになった。

まあ、俺が足を捻って最初から試合に出れなかった、ってことだけは計算ミスだったけど。

そして、まさかの。まさかのだよ。俺が会場についた時には、なんと青葉城西が負けていた。あの烏野に、だ。そんなことってあるか?格下だぞーーー飛雄を除けば。

「あーらら。負けてるじゃん」
「及川!もう足の具合はいいのか?」
「大丈夫大丈夫。それよりも・・・」

なるほど、それだけ”あのコンビ”が強力ってことね。

俺がピンチサーバーに入ったけれど、それでも力及ばず、青葉城西は烏野に負けた。なんてことだ。校門のところで少しだけ、彼らにアドバイスを送るようなこともしてしまい、岩ちゃんにはまたボールを投げられた。バレーボールはそういうふうに使うものじゃないよ、岩ちゃん。

そんなこんなで帰り道。まっきーとまっつんと別れ、いつものように岩ちゃんと二人並んで歩く。少し無言が続いてーーーでもこんな無言な空間も居心地がいいーーー、思い出したかのように俺が話しかける。

「なーんて恐れ多いコンビなんだろうね」
「影山と日向か?」
「そうそう。だって、正セッターじゃないとは言え、うちが負けるなんてさ」
「でもあいつらもまだ本調子じゃないぞ。多分な」
「だろうね。まだ歯車が噛み合う前っていう感じがする。ってことは、歯車がピタリと噛み合ったら・・・とんでもないチームになるかもね」
「とんでもないペアを生み出しちまったな」
「ほんとだよ。あーあ。でも、俺たちだって簡単に負けてなんてやらないんだからね」
「当然だろ」
「俺たちも頑張らないとね」
「あぁ。今年こそ牛島を・・・白鳥沢を倒して、俺たちが全国へ行く」

ゴツン。

俺たちは、人生何度目か、そう約束した。

「ところで岩ちゃん」
「あ?なんだよ」
「今日のご飯、揚げ出し豆腐らしいよ」
「ほんとか?!よし!」

普段の俺に対する態度はいつも厳しいけど、実際はそんなことない。二人になると、こうやって他の人には見せない笑顔を見せてくれるし、少し重いあの行動だって、俺を思うが故だってわかってる。いつも俺のことを心配して、大事に思って、それはまるで恋人のようでーーー、って。何を考えてるんだ。俺と岩ちゃんが恋人、だなんて。俺たちは幼なじみだし、それ以前に男同士だし、今は大切な時期だし、それに、岩ちゃんだよ。ゴツくて、お洒落にも程遠くて、垢抜けてなくて、ゴジラが好きで、すぐ暴力振るうし、モテないしーーー、でも、俺には優しくて、たくさん笑ってくれて、無邪気でーーー、可愛い。

ん?可愛い?

いやいやいや、落ち着け及川徹。このゴリラのことを可愛いだなんて、どうかしてる。女の子の方が可愛いし、柔らかいし、いい匂いがするし、暴力も振るわないし。おしゃれにも気を使うし、ゴジラよりも俺を優先してくれるし、キスした時の赤くなる顔なんてすごく可愛い。目の前のゴリラなんかよりも断然ね。
でも、でもさ。岩ちゃんはいいパートナーになるだろうな。いや、俺のパートナーとかじゃなくて。・・でも、俺じゃない誰かにこうやって笑いかける岩ちゃんって、ちょっといやかもしれない。

ああーーー、待って。待って待って。

ねえ。俺、岩ちゃんと恋人になりたいかも。しれない。
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