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ずっとずっと

原作: その他 (原作:ハイキュー) 作者: ノムさん
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第6話

「はあ!?日向翔陽がこっちにいる!?」
「そうなんだよね〜奇遇だよね」

聞けば、及川は日向にトスをあげたらしい。しかも、なぜかビーチバレーで。こいつのトスは、もう俺のためにあるものじゃない。日向のため、チームメイトのため、そして自分の未来のため。いろんなものに向けて及川はトスをあげる。どうして俺たちはお互いのためにプレイできなくなったんだろうな。進む道が違いすぎたのかな。思えばあのとき、俺もブラジルに行くだとか、及川が東京や仙台に残るだとか、そういう選択肢だって絶対にあったはずだ。でも、俺たちはそれをないものとして扱った。その時にはもう、及川のトスは俺のためのものじゃなくなって、俺のアタックは及川のためのものじゃなくなっていたんだろう。
なぜ、なんで、なんて言っても何も変わらない。俺たちはもうすれ違ってしまったのだから。過去を振り返っても仕方がない。

「ところでさ、いーわちゃん。明日俺オフなんだけど、どこか行きたいところある?」
「行きたいところかー・・。特にブラジルの観光地とか調べたわけじゃないんだよな」
「岩ちゃんらしいね」
「なんかおすすめあるか?」
「ふぅーん。オッケー。じゃあ、明日はこの及川さんが岩ちゃんのためだけに観光プランを組んであげるね!」

及川は饒舌だ。俺がこうやっていろいろなことを考えている間にも、及川の口は止まらない。やれ明日の天気はどうだの、観光地はどこどこが人気で、どこのお店は行った方がいいだの。それはまるで、気まずさを誤魔化しているようにも見えて。そうか、及川は気まずいのか。俺たちが一緒にいた頃は、気まずさなんて感じたことはなかったと思う。何度も問いかけているが、「どうしてこうなった」。

「最後は海に行きてぇな。ビーチバレーが盛んって話の」
「海?いいね〜!任せて!」
「おぅ」

そこで俺と及川のこの関係に決着をつける。何があっても、俺は及川との関係になんらかのケジメをつけないといけない。そのためにここまで来た。このまま引きずっていてもいいことなんて一つもない。彼女にも失礼なことだし、もちろん俺にとっても、及川にとっても、よくないことだろう。その後も饒舌な及川と一緒に、机に向かって観光地を見る。どこもピンとは来なかったけど、及川と巡る新しい場所、というだけで少し魅力的に見えるのだから俺も大概だ。これは本当に及川のことが好きなんだな。そうか。俺はこいつのことが好きなのか。認めてしまえば、ふに落ちた。その気持ちは、まるでずっと俺と一緒にあったかのようだ。まあ実際に初恋のあの瞬間から一緒にいたのかもしれないけど。そう考えたら俺、すごいな。
この日及川と俺は同じベットに横になって寝た。まあ、俺は全然眠れなかったのだけれど。

side及川

気まずい。めちゃくちゃ気まずい。
岩ちゃんが俺の部屋にいる。しかも明日はオフで、観光地を二人で巡ることになってしまった。なってしまったっていうのもおかしいな。俺が誘ったんだから。岩ちゃんはどうやら観光地を全然調べていないようで、二人で頭を付き合わせてあーでもない、こーでもないと話す。あの頃に戻ったようで少しだけ嬉しいような懐かしいようなーーー、そんな感情だ。
というか冷静に考えて欲しいのだけど、好きな人と一緒の部屋で、同じベットで眠るなんて、そんなことは普通にやばい。しかも絶対に手を出せない相手で、その時の気まずさたるや。俺の忍耐力よ、頼むから持ってくれ。この時のために鍛えてきたんじゃないか、って思う。
しかも、どうやら最後は海を見たいらしい。それ自体は全然いいんだけど、さっきトスを打ちたいって言ってたーーーかどうか定かではない状態で、少しばかりそわそわしてしまう。海にはコートがたくさんあるから、俺が岩ちゃんにトスをあげる、という話になってもなんらおかしくはないはずだ。うん。おかしくない。
結局明日はコルコバードの丘とサンパウロに行くことになった。まるでデート見たい。二人で。カップルに見られたりするのかな。ワクワクしていつもより饒舌になってしまってるかもしれない。あの頃は二人で出かけるなんて普通のことだった。学校の行き帰りも、休日も、ずっと一緒にいたのだから、それがおかしなことだなんて認識はなかった。日常のワンシーンでしかなかったのだ。でも、今は違う。俺は岩ちゃんのことが好きで、明確な恋愛感情を抱いている。自覚もある。それに、今の俺たちの日常には、「二人で出かける」ということは含まれていない。つまり非日常なのだ。これはどこから見てもデートなのではないだろうか。うわ、そう考えたらまたそわそわしてしまう。変に思われてないかな。鈍感な岩ちゃんのことだから、気付いてないかな。あー、そういうところも好きだな。めちゃくちゃ好きだ。可愛いって思う。
同じベットに入ってきた岩ちゃんのことを意識しないことなんてできずに、俺は全然眠れなかった。
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