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原作: その他 (原作:キングオブプリズム) 作者: iou
目次

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もう、クリスマスだ。
街中にクリスマスソング踊る中、シンへの気持ちが浮足立つ。


いつも落ち合う広場とは違い、改札の音を聞きながら人ごみに紛れて待ち合わせをするこの気持ちを、何度夢見ただろう。

そわそわしてしまう。
時間よりも30分前についてしまったルヰは、目線をきょろきょろとさせて今か今かとシンの姿を待つ。

掌の中で振動する。

『ルヰくん。もうすぐつくよ。』

思わず顔をがほころんだ。時間通りだ。






今日こそは。


人ごみの中をかき分けて彼だけを見つけることができる。
笑顔で走ってくる彼は、
いつもとは違う少し大人びた茶のピーコートを着て笑顔で手を振ってくれる。

その手も、
笑顔も
全てが自分だけに向けられたものだと思うと
途端に胸が熱くなる。

考えずとも、眉を下げてとびきりの笑顔になる。

だめだ、

だめだよ、シン。

好きだよ。

大好きだ。


____________________________



遊園地は綺麗だ。
キラキラしていて、プリズムショーのよう。

ルヰは完全に浮かれていた。

アトラクションを楽しむ人、食べ物をシェアする人、
写真を撮る人、愛を語り合う人、
色々な人たちがいた。
賑わう人々は笑顔で日常のすべての嫌なことを今だけは忘れている様子だった。


それは、ルヰも同じだった。
本来の遂行する任務からは少し離れて、今日のこの時間を楽しんでいる。



行き交う着ぐるみたちは、ルヰとシンのデートをほほえましくも見守っていた。
ルヰが珍しそうにうさぎ

の着ぐるみに近づくと、着ぐるみはルヰに真っ赤な風船を手渡した。
その風船の赤さは、空の青さとは反比例しているのに何故かとてつもなく相性の良いもののように見えた。


ルヰは太陽の光に赤い風船を透かして見せた。
「よかったね、ルヰくん。」


シンに顔を向けようとすると、
どこからともなく突風がふいた。

白い帽子が宙を舞いそうになる。
ルヰは自分の頭を抑えると同時に燃え上がるような真っ赤な風船が手から離れた。


思わず「あっ」と声をあげそうになった。


「ハイ。」

シンは笑顔でルヰに差し出す。


「あ、ありがとう。」



赤い風船はまるで運命の赤い糸のようにルヰの手元に戻ってきた。


「今度は離さないようにするよ。」


太陽の光で赤い風船の中がうっすらと透けて見える。
ルヰはとびきりの笑顔をみせた。


______________________________



夕方になると、帰宅する人もパラパラと増えたが、
その分、夜の遊園地を楽しもうとカップルも増えた。


「観覧車に乗ろう。」


どちらともなく足取りは観覧車へ向かった。



観覧車は遊園地のメリーゴーランドやジェットコースターなどのライトが輝いていた。
赤や青やピンク、黄色や緑のLEDライトはクリスマスカラーに彩られ
恋人たちを祝っているかのようだった。

暗さにマッチする華やかなムードに流されるようにシンの顔を見つめる。


ルヰの瞳に気付くとシンは、笑顔になった。


「隣に、行っても、いい?」


「もちろん。」


シンは笑顔でルヰにこたえる。


「シン・・・」


ル、ルヰくん近いよぉ・・・。なんて照れて赤くなるシンは可愛かった。


「ルヰくんは、プリズムスターになってしたいことって何かあった?」

「僕・・・は・・」

「あ!嫌なら答えなくってもいいんだよ!ごめんね、」


ルヰは口をつぐんだ。
シンに会いに来た。
1000年の時を越えて。

でも、それはプリズムスターになってしたいことではない。
僕は、プリズムスターになる気はなかったんだ。

だって、僕は

「シン、僕は・・・」


ルヰがシンの顔を除きこもうとする


「ルヰ君!聞いてよ!
えー出得るローズに凄い先輩がいるんだ!
僕、憧れちゃって。本当に素敵だなぁ・・・って。」

「え・・?」

まるでルヰの言葉をさえぎる様に、シンが会話を始める。
シンの瞳は何故か少し怯えているようにも見えた。


「えへへ、そうなんだ。
僕が女の子だったら、きっと好きになっちゃうかもって、思ったよ。」


「あ・・・」

笑顔でうれしそうに話してくれるシンに、ルヰの心は痛くなった。

僕はなんて恥ずかしいんだろう。
シンと仲良くなりたい、
こんな下心のどろどろに汚い思いでシンに近づいて、
無理にでもこの世界で一緒にいようとしている。

シンの目は、純真な全くのない穢れのない瞳でキラキラと輝いている。





観覧車も終盤だ。
ルヰはぼんやりと窓の外を見つめる。
あんなにも小さく見えていた地上が今は近くなっている。
シンとの二人の時間はもうこれで終わりと一気に現実に引き戻されたように感じたことが、
ルヰには大きなショックになった。


「もう、終わっちゃうね・・・。」


シンはまた一緒に乗ろうね。とルヰにいう。
その声はBGMのようで、ルヰの心にまでは響かなかった。

今日だった。
今日だったんだ。


シンの手を握る。
シンの手は、一瞬こそ驚いたように跳ねたが、
ルヰの白く冷たい手をぎゅっと握り返す。


小さな時間が、二人の間に流れてた。



「とうちゃくでーす。」

観覧車の最下層まで来た。

スタッフさんに案内されながら
足早にと二人は観覧車から下車する。




ルヰは観覧車に後ろ髪惹かれながらも、
シンのうしろについていく。

その背中を見ていると
九に切ない感情がこみ上げて大きな声を出したくなった。


「シン、のことが・・・っ」

運悪く、その大きな声も人のどよめきに僕の声はかき消された。
パレードだ。



「ルヰくん!パレードが始まるよ!」


風船をくれた着ぐるみたちが、
綺麗なネオンとともにやってくる。

周りは夢のような世界が広がっていて
みんなは現実なんかを忘れているのに。




ルヰはシンに自分の気持ちを伝えることが止められなくなりそうだった。


このまま、一緒にいたらまずい。







「どうしたの?ルヰくん。行こう」

ルヰは、笑顔で手を出すシンに続きが出てこない。
言えない。口が、動かないよ。


今のこの関係を崩してしまうわけにはいかない。




お気に入りの赤い靴に願った想いは、
儚くも散っていったのだ。
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