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原作: その他 (原作:キングオブプリズム) 作者: iou
目次

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窓枠がきしむ。
東京といってもビル風が冷たい。
骨から冷えそうな寒さだ。



冷えた土地だ。


真っ黒な窓の外を見ながらアレクは思った。
この孤独感から逃げるには、何をすればいい?
走ればいいのか?
筋トレか?

何をしても忘れることができない。
こんな気持ちを作りだすのは何だ?




街のネオンを思い返す。





浮かぶのは一人だけだ。
一人だけが俺の胸を締め付けて離さない。






思えば、初恋だったのかもしれないし、
恋と思いたくはないが、
そう呼べば的を得るような胸の高鳴りやショックだったのかもしれない。


愛だとか、恋だとかそうゆうことは知らない。

歌でしか知らなかった。
こんなにも苦しい気持ちになるものなのか。
















「アレク、くん。」





思わず驚きで体が跳ねた。
反射的に扉の方を見ると
如月ルヰが立っていた。

なんだ、色白か。
アレクは思った。


と、同時に
扉の開いた音はしなかったことに気付く。
アレクが問おうとする前に、ルヰが口を開く。





「窓に何かあるの?」


その声は風の音と聞き間違えるくらいの流れるような声だった。
蛍光灯の下にいれば、思わず消えてしまうんじゃないかと思うほどの色の白さだ。


照明もつけていない真っ暗な部屋で、
如月ルヰの肌の白さは、ますます際立った。






「ひとり?」



ルヰは、アレクに質問を続けた。



なんだ、コイツ。
いつもなら、聞く耳持たずで無視をすればいい。
なのに、何故かルヰの会話に返答をしたくなった。


「あ、まぁ、な。」



如月ルヰ。
常々間の抜けない動きをする奴だとは思って居たが、
いきなり入ってきてなんだコイツは。

扉から、アレクのほうへルヰは足を進めた。
アレクはその動きを目で追う。
ルヰは気にせずにアレクの腹筋台へ腰かけた。


「もうすぐクリスマスだね。」
まだまだ話すルヰをもう一度見ると
目線に気付いたのか、アレクを見つけてニッコリと微笑んだ。


「あ?あぁ。」
返答をしなくても会話を続けるルヰに驚きを隠せない。


「君は誰かと約束をしてる?」


「・・・・いや。」

質問攻めにはもちろん、この
“クリスマスに、誰かと約束しているのか”の回答には思わず間が出る。

あわよくば、と願っていた相手のことは、つい数分前にルヰが部屋を訪れる前に考えていたからだ。
しかし、今はもうその希望はない。

自分の感情に気付いてしまいショックだ。
共に過ごしたいと思う人間んが、家族以外に自分にできるなんて。

今晩みたいな日は話し相手が欲しかったのかもしれない。
窓の外を見つめ、室内の気温さにぼうっと現れる明かりと水滴を
見つめながら、脳の片隅で再生したくない昼間の映像を思い出していた。


アイツも、誰かと過ごすのかな。

相手はわかっては、いるが。






如月ルヰは、いつになく活気のないアレクをじっと見ていた。
自分が観察されていることに気付いたアレクは、
こんな時、なんの話題をふったらいいのか。


無言が怖い。

別にこんな相手と無言になっても構わない。

構わない。が、

家族以外の誰かと二人っきりで話すことがなかったアレクにとっては
緊張する時間になった。

何か話さなくてはいけない。


どうしようかと言葉を選んでいると
ルヰが薄い唇を開いた。




「アレク君って、仁科カヅキ君のことが好きなんだっけ?」

アレクは思わず噴き出した。



「は?」


微笑する如月ルヰは月明かりに照らされてとても薄気味悪い。

色白い肌が人間見をますます制御して、
まるで魂がないようだ。

そうだ、人形のようだという表現が正しい。
血がかよっているのか、
感情があるのか、
今までは美しい見てくれに騙されていたのではないかと
見ていて不安になる。



しかし、人形のようなルヰも血が通っているようだ、
小さな口をポソリと開いた。





「僕も、エーデルローズに好きな人がいるんだ。」

「でも、自分の気持ちを伝えるって、なかなか・・・」

ルヰはうつむくと、自分の足をじっと見つめた。





「アレクくんは、恋してる?」




俺も、仁科カヅキに恋をしている前提で話してきてないか?コイツ。
という言葉は飲み込んで、
アレクはうつむくルヰの足元を同じように見つめた。




「僕は好きな人がいてね、」

無言でルヰの視線の先を見ていると言葉は続いた。


悲しい話し、その人には片思いだと言う。

今日もその人の元へ行こうか悩んだが、
自分ばかりが想い、相手が同じ気持ちではないことに少しだけ、疲れてしまった。
と、ルヰは言う。



アレクはぼんやり、恋愛が上手く行っているような人はいるのだろうかと聞きながら考えた
考えていると、仁科カヅキの顔を思い出して、
そして、街明かりの中で見かけたあの微笑みが他人に向けられていたことに、
胸の奥がカーッと熱くなった。


俺はまだまだ子供だったのだろうか。
こうゆう感情は知らなかった。

これが“辛い”という気持ちだ。






「つらい、な。」


アレクはルヰを見た。

整った顔立ち。
こんなやつでも、上手く行かないことがあるのか。
こんなに作られたようになんでも上手く行っていそうなやつが。



不思議だった。







「自分の気持ちを偽ることは、できるもんじゃない・・・
誰かに寄り添ってもらえれば、忘れることができるんだろうか」


「え?」


ルヰの目がまんまるとアレクを見ている。
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