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銀河鉄道の夜明け

原作: その他 (原作:銀河鉄道の夜) 作者: 谷垣慶樹
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教会

7.校門
時間は昼に遡って、校門の前では、ザネリが走り去った後に、何人かの生徒がザネリをあざけるような小さな声で笑いました。
ジョバンニは自分はどうしたらいいか困り、走り去るザネリの背中を気の毒そうに、黙って少し笑って見送りました。話の続きを催促されたので、再びカンパネルラと銀河鉄道の旅をした話の続きをみんなに話します。
みんなは、燐光の波を打つ宝石の砂浜や、チョコレートよりも美味しい雁(がん)のお菓子の話を楽しそうに聞いていましたが、昨日、カンパネルラと遊んだマルソたちは真剣に聞いていました。
「どうしたのですか、こんなに集まって。」
そう言って、校長があらわれると、他の生徒が校長に今までのあらすじを話を始めて、校長先生はなるほどっといったような表情で、少し悲しそうに、しかし作り笑いをしながらみんなと一緒にジョバンニの話を聞きました。しばらくすると
「みなさん帰りなさい、校長、私の生徒がすみません。」
そう言って、ジョバンニたちの担任の先生が来ましたが、校長は先生をなだめるように何か こそこそ耳打ちをして、先生も やれやれといった表情で、他に帰る生徒たちのために道を開けるように言い聞かせて、ジョバンニが話し続けるのを許しました。
ジョバンニは話し続け、カンパネルラは最後、そらの孔(あな)を見つけ、みんなの本当の幸いを探しに行き、自分はそこで目が覚めたと話し終えました。そしてジョバンニは最後に
「カンパネルラはもういません。本当はぼくも行きたかったですが、カンパネルラは大きく真っ暗な底が分からない孔へ、恐がらずに行きました。みんなの本当の幸いを探しに。
ぼくはカンパネルラと一緒に行きたかったけれど、ぼくはここでみんなの本当の幸いを探せば、いつまでもカンパネルラと一緒に行けます。みんなも一緒です。みんながみんなの本当の幸いを探せば、みんなはカンパネルラと一緒に行けます。」
ジョバンニがそう言うと、話を聞いていた生徒たちがザワザワ私語を話し合い始め、1人の生徒が
「ジョバンニ、カンパネルラは地獄へ行ったのかい。」
と聞いて、ジョバンニはぎくりとしました。
「わかりません。でも、カンパネルラはどこへ行っても、みんなの本当の幸いを探しています。」
と答えると、またザワザワしました。
「そうだ、カンパネルラはいなくなって親を悲しませている。そういう子どもは地獄へ行くって、おれのおっとさんが言ってたよ。」
誰かがそう言うと、先生は少し怒ったように
「ジョバンニさん、カンパネルラさんが亡くなって悲しいでしょうけれど、これからはカンパネルラさんが地獄へ行ったなどとけっして誰にも話してはいけませんよ。いいですね。」
と言われてしまい、ジョバンニはひどくがっかりしました。
「はい、そうですか。カンパネルラは地獄へ行ったとは言いません。」
ジョバンニはそう言って、帰ろうとすると、ジョバンニの話を聞かないで先に帰っていた生徒が走ってきて
「カンパネルラが見つかったって!大人たちがカンパネルラを引っ張り上げて今、カンパネルラは教会の中にいるってさ!みんなで見に行こうよ!」
と大騒ぎして、みんなは走って教会へ向かいました。ジョバンニも走って教会へ向かいました。

8.教会
「ここには誰もいないよ。今夜、いや明日また来なさい。」
そう言われて、ジョバンニたちは教会の鐘つき番に門前払いされましたが、ジョバンニたちは教会の窓から聖堂を覗くと、誰もいませんでした。
しかし、別棟の扉から、カンパネルラのお父さんが出てきて、ジョバンニたちは驚いて固まってしまいましたが、カンパネルラのお父さんはジョバンニたちをちらりと見て、会釈をして帰りました。その顔は少し青ざめていて、後ろ姿は落ち込んでいたようでした。
扉の中から、僧侶が顔を出して、カンパネルラのお父さんの背中を見送ると、今度はジョバンニたちに気づいて
「やあ君たち、カンパネルラくんのお友だちだね。今、カンパネルラくんをキレイにしているから、もし会いたかったら、明日また来なさい。」
そう言って、僧侶は部屋の中へ戻り、ジョバンニたちも解散しました。

9.活版所と川辺
ジョバンニはまっすぐ家に帰るのがおっくうで、活版所に行きましたら、入り口の計算台にいた人から
「おや、ジョバンニ、もう仕事はやめたんじゃないのか。今朝、お前の親父がジョバンニはもうここに来ないと言っていたぞ。」
と言われて、ジョバンニは驚きました。
「今日は休みましたが、明日また来ます。」
「いや、親がダメと言ったんだ。お前はもうここで働いてはいけないよ。」
そう言われると、ジョバンニはとぼとぼと活版所から出ていきました。
「お父さんはなぜそんなことをしたのだろう。また遠くに出稼ぎに行けば、ぼくもお姉さんも働かなくてはいけないのに。」
そうぶつぶつ つぶやいていると、空は真っ赤な夕焼けになり、ジョバンニは川を見たくなって、次は川で時間をつぶそうと川に行くと、川辺にはカンパネルラのお父さんが座っていました。
ジョバンニはカンパネルラのお父さんの横に座り、何と話しかければいいか分からず、もごもごしていると。
「ジョバンニくん、また会ったね。ここでカンパネルラは見つかったんだ。」
そう言ってまた、カンパネルラのお父さんは静かになりました。
ジョバンニは、先生から銀河鉄道の話を禁止されていましたが、カンパネルラのお父さんにどうしても話したくなって、話しかけました。カンパネルラと旅をした、銀河鉄道の夜のことを。
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