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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
目次

白雪姫③


※カッコイイ風間さん失踪中注意


次の日も、そのまた次の日も小屋へとやってくるお后に白雪姫はそのたびにゾッとしながらも小人たちが毎度仕掛ける罠に引っ掛かる様子が見えて少しだけ哀れんだ眼になっていました。
落とし穴に落ち、木に吊るされ、近くの川まで打ち上げられ、それでもめげないお后はもはや意地の領域でしょう。それには最初は白雪姫を守るために必死だった小人たちも呆れた思いでせっせと次の日の為に罠を仕掛けていました。

沖田「お后も本当しつこいよねぇ、暇なのかなあの人」

小人たちが罠を仕掛け小屋の中に入ってくると一緒に後ろから着いて来た男、鏡の中から抜け出した者が笑いながら言います。それにびくっと肩を震わせた小人たちは自身の後ろを向いて驚いた顔をしました。

土方「おい、お前はそのお后とやらの傍にいる鏡じゃなかったか?何でここに居る」

沖田「えーだって暇なんだもん。こっちに居たほうがみんな居るし楽しそうだからきちゃった」

土方「ったく…来ちゃった、じゃねぇぞ」

南雲「まったくだね。他人の家に勝手に上がり込むなんてどんなしつけをされていたんだか」

原田「お前はどうしてここで茶を飲んで寛いでるんだ?南雲」

南雲「あのお后の顔見るのに飽きたから。千鶴、お茶おかわり」

沖田「あ、僕も」

永倉「千鶴ちゃんをパシリにするんじゃねぇよ」

スパン、と2人の頭上に落ちてきたハリセンに鏡の妖精も城の兵士もふくれっ面。
しかし小人たちはお城でのお后の所業を話す2人に、2人が急に哀れに思えてきたのかそのまま小屋に共に住むことを許しました。

土方「総司、南雲、一緒に住むからには働いてもらう。一緒に来い」

沖田「えー、本当に土方さんって人使いが荒いよねぇ」

やれやれと肩をすくめる鏡の妖精は土方によって首根っこを掴まれて連れられて行き、残された小人たちと兵士はそれにそれぞれ反応を示しながらも着いていきます。
その際に「お后が来ても開けてはいけないよ」と注意を促して。
その日、お后は「いい加減知恵を使おう」と変装を提案してきた猟師に、その晩、変そうのためのおばあさんの服を夜なべで繕ってくれた天霧にそれを渡されましたがいつもの恰好で森へと向かうと聞きませんでした。それに猟師は呆れ、「また俺らは川で流れてくるあいつを拾うのか?」と隣にいる天霧に聞きましたが、彼は苦笑いを浮かべるばかりでした。
お后は良くも悪くも真っすぐなのです。小細工などいたしません。

森にある小屋の前へとやってきたお后はいつもの通り、扉をノックします。
途中仕掛けられている落とし穴は最早場所を覚えてしまったお后にはなんの障害でもありません。

風間「白雪姫、いい加減城の方へ帰るぞ。いつまで意地を張っているつもりだ?」

そう呼びかけるお后に白雪姫はたいそう困ったように扉を見つめます。
これで一体何度目なのでしょう。困りに困り果て、これ以上小人たちの手を煩わせることに申し訳なさを感じていた白雪姫は意を決して扉を開けました。

雪村「お、お母さま…私は共には帰りません。どうかお母さまだけ城にお帰り下さい。これ以上ここにきて下さっても、私の意志は少しも変わりません」

風間「何故だ、白雪姫。城ならばお前に不自由な思いなどさせないし好きな物を買い与えてやれる。それなのになぜこんな小さな家にこだわるんだ」

雪村「それは…」

白雪姫は心優しい女の子でした、だから正直に言う事を躊躇ってしまったのです。
言葉を濁した白雪姫にお后は手を伸ばし「さあ帰ろう」と白雪姫の細い腕を引っ張った時でした。

「千鶴ちゃんあぶなーい!」

そんな掛け声とともに、一瞬にしてお后は白雪姫の前から消えてしまったのです。
しゅた、と目の前に現れたのは王子様の恰好をした千姫でした。
それに千鶴は目を丸くして「千姫ちゃん!?」と彼女の名前を呼びます。

千姫「なんだか久しぶりに会いたくなってきちゃった!」

千鶴「き、着ちゃったって…」

向かい側の川を見ると、お后が川を漂っているのが見えます。
それを木の棒で突き「生きている!」と天霧に知らせている不知火を見て、白雪姫は何とも言えない気持ちになりました。
誰も彼をお后として扱わないのです。

千姫「明日私のお城でパーティーがあるのよ、ぜひ親友の千鶴ちゃんにも参加してほしくって。一緒に来てくれる?」

小人たちもよく知る千姫です、彼女の訪問とパーティーへの参加はきっと小人たちも受け入れてくれるはず。
白雪姫はそのお誘いに二つ返事で頷いて彼女を家へと招きました。



風間「あの女…よもや俺の邪魔までするとは…」

不知火「風間いい加減諦めろって。これ以上情けない姿晒すのはよくねぇよ」

風間「バカか貴様。水も滴るいい男というだろうが。」

天霧「バカなことを申されますな、わがままばかり言ってないで帰りますよ。風間」

不知火「お母さん?」


次の日迎えに来た千姫と君菊に連れられ隣の国のパーティーへ小人たちと一緒に参加した白雪姫はその後その国へと移住し幸せに暮らしましたとさ。


おしまい
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