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おとぎの国へようこそ!

原作: その他 (原作:薄桜鬼) 作者: 澪音(れいん)
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白雪姫②

小人たちと暮らし始めた白雪姫は掃除に洗濯、縫物や編み物までなんでもこなせたため小人たちは大助かり。朝早くに小人たちは山の鉱山へ行き、夜に戻ってくるため温かい夕飯が用意されているのは小人たちにとっても有難いことでした。
しかし、朝早くから小人たちは出掛けてしまっているため白雪姫は日中ひとりでこの家に一人きりで居なくてはいけません。「戸締りには気をつけろよ」という土方に白雪姫は頷きます。

一方、白雪姫を見つけることが出来ずに城へと帰ってきたお后は鏡の間へとやってきました。

風間「鏡よ、壁の鏡よ、この町で一番美しいのは誰だ?」

隣の森を駆け回り汗だくだったお后は、一刻も早く白雪姫の無事を知ろうと鏡へと唱えます。
そんなお后に鏡は寝転んでいた体勢から若干身体を起こし「もう帰ってきたの?」と言いたげな顔でお后を見てから欠伸をこぼしながら答えます。

沖田「あーはいはい、白雪姫だね。何君、走ってきたの?汗臭いからさっさと部屋から出て行ってくれる?僕ほら潔癖症だからさ」

風間「なに!?白雪姫は無事なのか!今どこにいるのか今すぐに映せ」

お后は白雪姫が無事にしていることを知り鏡に駆け寄ります。
その事に鏡は心底嫌そうな顔をしながらも、お后には忠実でなければなりません。

沖田「は?やだよ、何で君の言う事聞かなきゃならないのさ。今この本読むのに忙しいから後にしてよ」

風間「貴様…白雪姫がここに居る時から、頼めば「今は忙しいから後にしろ」といつになったら俺の言う事を聞くつもりだ?」

1日に10回は「白雪姫は怪我をしていないか?」などと聞いてくるお后に鏡は毎度「今はそういう気分じゃない」「今ちょっと占いが使えない時間なんだよね」「空気読んでくれる?」とさまざまな理由を付けてはお后からの頼みを跳ね除けてきました。
忠実なはずの鏡の反抗的な態度に毎度お后は鏡を割ってやろうとするたびに何かしらの邪魔が入り今の今までそのままになっていました。
鏡はお后の剣幕に立ち上がりお后の方を向くと少し悩んだ様子を見せてから人差し指を一本立て、逆の手を腰に当てました。

沖田「気が向いたら聞いてあげてもいいよ。一生ないだろうけどまあ待っててよ」

風間「…………」

天霧「風間、早まってはいけません。鏡にそんなもの振り上げてどうするつもりです」

風間「うるさい天霧その手を放せ」

沖田「あーあ、あの側近もいつも大変だよねー。豊玉発句集盗んで来たのはいいけど土方さん森の方にいて一向に気付かないし鏡の中暇だなぁ、出掛けちゃおうかな」

ひょいっと鏡の淵から出てきた男はそのまま部屋にひとつだけあった大きな窓から外へと飛び出しました。薄暗い部屋でひと際目立っていた鏡は効力を失ったように黒く濁ります。
お后もそのお供もいなくなった部屋で鏡のその行動を止めるものなど誰もいませんでした。




説得する天霧を押しのけ城内から出たお后は先ほどの鏡の言葉を思い出しました。
猟師の言う通りならば白雪姫は隣町にいるはずで、この町には居ない筈でした。
けれどあの鏡は「この町で一番美しいのは白雪姫のまま」と言ったのです。
何んとか白雪姫を城へと連れ戻したいお后はこの町の外れにある森へひとり向かう事にしました。

お后が森へ入って歩いていると獣道のその先に一軒の小屋がありました。
小屋の周りには色とりどりの花が咲き、カーテンの引かれていない窓辺には、カーテンの役割を果たすように植物たちが置かれていて中の様子は一切分かりません。
近くにあったチャイムを鳴らすと少ししてから中から可愛らしい声が聞こえてきました。

雪村「どちらさまでしょう?」

風間「俺だ。白雪姫探したぞ、城に共に帰ろう」

雪村「わ、私は白雪姫ではありません!」

小人たちにお后には本当に注意するように、如何に危ないやつなのかを力説されていた白雪姫は扉の向こうの人物がお后だとわかると自分が白雪姫ではないと嘘をつきそのままお后が何を尋ねようと「知らない」の一点張りでした。
その日帰ってきた小人たちにその事を話すと小人たちは心優しい白雪姫が怖い思いをしてはしょうがないと家の周りにいくつもの罠を仕掛けました。

次の日また小屋へとやってきたお后は昨日と同じように扉をノックしますが足元へと隠されていた縄を踏みつけ罠が発動し、近くに会った木に真っ逆さまに吊るされてしまいます。
心優しい白雪姫がそんなことをする訳がありません。お后は何とか解こうとしますがなかなか解けずに、お供として連れてきた猟師に縄を切るように頼むと銃で縄を撃ち抜いた猟師にお后は頭から地面へと落ちる羽目に。

風間「貴様、白雪姫を隣町の森へ放したと嘘をついたことは咎めまいとしたが実は敵方じゃあるまいな?」

不知火「そんな事じゃねぇよ。あの時お前に嘘をついたのも今お前を落とそうとしたのもお前の執着に引いたからだ」

天霧「風間、いい加減帰りましょう。巷であなたはストーカーと名高くなっております」

風間「天霧離せ。俺は白雪姫を連れ帰るまでは…」

猟師と側近に引きずられるままに帰っていったお后に、扉のそばで様子を伺っていた白雪姫は安堵のため息を吐き、その日帰ってきた小人たちに礼を言いました。




つづく

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