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山姥切国広極めたらもう一人増えました

原作: その他 (原作:刀剣乱舞) 作者: レジス
目次

君と仲良くなりたい


私が本丸にお世話になることが決まって翌日になった。
与えられた個室から大広間に行くと後半宴会に突入した面々が倒れ伏しているという状況になっている。
さすがに起こすのも可哀想なので歩いて通り過ぎた。
何をするか、何をしていいのかわからずとりあえず本丸の中を探索する。
すると今の季節は梅雨なのか綺麗な紫陽花が咲いている庭を発見した。
「わぁ」
色とりどりの紫陽花に誘われて庭に降りる。
一歩二歩と歩いたところで地面に異変を感じた。
ミシリと音がして地面を踏み抜いた私はなぜかそこにあった穴に落ちる。
「きゃ?!」
幸いそこまで深くなかったので懸垂の要領で登れそうだ。
よっと声を出して立ちあがるとズキリと足首が痛んだ。
思わず座り込んでしまう。
どうやら落ちた時に痛めてしまったらしい。
「だ、誰か……!」
助けを求めて声を上げる。
しかし今は早朝、近くを通りかかる人なんていないのでは?と不安になった。
足の痛みと不安でじわりと涙が滲む。
自然と体勢が体育座りになった。

「大丈夫か?!」

「?!」
思ってもいないくらい大きな声で声がかけられ肩をビクリとさせる。
上を向けば慌てた様子の山姥切長義がそこにいた。
彼は私が無事な様子を見て安心したように息を吐く。
「なんだ、このくらいの深さなら出てこれるだろう?」
あいつの落とし穴は酷い時はもっと深いからな、そう言いながら手を伸ばしてくれる。
「実は、落ちた時に足を挫いてしまって……」
「何だって?元は俺の写しのくせにどんくさいな」
私が言うと呆れたように彼は穴に降りてきた。
何をするのかと思ったら脇に手を入れられて立ちあがらせたと思ったらそのまま肩に担がれる。
「や、山姥切長義?」
「長い、長義でも本歌でも好きに呼べばいい」
「え、で、でも……」
「いいから黙ってろ」
そう言って山姥切長義は私を担いだままヒラリと落とし穴から脱出してみせた。
すごい身軽だな、と感動していると肩に私を担いだまま歩き出す。
困惑する私に彼は黙ってろともう一度言って廊下を歩いて行く。
そうしてある部屋の前に来て立ち止まる。
部屋には掛札で手入れ部屋と書かれていた。
「手入れ、部屋?」
「怪我をしたのなら直してもらうといい」
「い、いや。足を挫いただけだ。必要はない」
確か手入れにも資材を使うだろう。
こんなバカみたいな理由で資材を消費したくない。
そう思って断ると眉をしかめた山姥切長義に問答無用で部屋の中に押し込まれてしまった。
「主に報告と着替えを取ってくる。大人しく手入れされていろ」
「えぇー……」
山姥切の本歌ってこんな奴なのか。
「よし、じゃあ俺は行くからな」
「あ、待って!」
「何だ?」
「あの、助けてくれてありがとう……長義」
私がお礼を言うと彼は困ったような表情になってそのまま去ってしまった。
手入れ部屋に入ってしまったので観念して現れた手入れの妖精さんに刀を預ける。
妖精さんは丁寧に刀を手入れしていく。
するとどうだろう、しばらくしたら足の痛みが無くなった。
刀剣男士ってなんて便利な体をしているのだろう。
ちょっと羨ましい。
するとバタバタと廊下を走る音が聞こえてきて「あ、来たな」というのが分かる。
「国姫ぇ!!!怪我したって本当?!大丈夫?!」
予想通り祭さんが飛び込んできた。
「あの、すみません。勝手に資材を使ってしまって……」
「そんなの好きなだけ使って!!!国姫の体に傷が残る方が問題だから!!」
ガシ!と肩を掴まれ力説されてしまう。
勢いに押されて頷くと安心したように祭さんは私から離れる。
「はい、長義に言われて着替え持ってきたよー」
「えぇ?!なんかすみません」
「いいのいいの!だって長義ってば女の子の部屋に入りこんで着替え探そうとしてたんだから!怒っておいたから安心して!」
「あ、ありがとうございます?」
といってもまだ見られて困るようなものは何も置いていないのだけど。
着替えを受け取ると私はそれに着替える。
「ちょ、待って!タンマ!」
「?」
慌てたように祭さんが部屋を出て障子を閉めた。
『着替えていいよー』
障子ごしに言われる。
もしかして気をつかってくれたのだろうか。
同じ女の子なんだから気にしなくてもいいのに。
優しい気遣いに感謝しながら私は着替えた。
着替え終わる頃には妖精さんも手入れを終えたのか姿を消していた。
土に汚れてしまった服を持って障子を開けると待ってくれていたらしい祭さんが服を受け取る。
「丁度いいから洗濯場を案内するね」
「あ、お願いします」
トコトコと歩き出した彼女のあとについて歩いて行く。
すると遠くが騒がしいのを感じた。
「あの、なんか騒がしくないですか?」
そう言えば祭さんはああ、と言った。
「駄鳥狩りしてるだけだから大丈夫よ」
「駄鳥……?」
よくわからないけど大丈夫というなら気にしないでもいいのだろう。
祭さんのあとについて廊下を歩いて行くと突然白い塊が屋根から落ちてきた。
「?!」
驚いている私とは違い祭さんは怖い笑顔をしている。
「あれーなんでこんな所にいるのかなー?」

「す、すまんかった!!」

白い塊が喋った。
いや、全身真っ白な服を着た刀剣男士だった。
彼は私に向けて土下座をしている。
どうしたらいいかわからず祭さんを見ると彼女はニコニコしていた。
「えっと、とりあえず頭を上げてください!というか汚れちゃいますから立ってください!!」

「おっと、こんな所にいたんだね」
「げ」
聞き慣れた声がしたと思ったら私の背後に長義が立っていた。
心なしか殺気だっている。
彼は手に持った刀をスラリと抜き放った。
「え」
何が起きているのか分からない私を置いて彼は白い人に向かって走りだす。
「さぁお前の!!死が来たぞ!!!」
「うぉおおああああ?!?!?!」
瞬間立ちあがった白い人は目にもとまらぬ速度で逃げていく。
それを追いかけて山姥切長義も速度を上げて駆けて行ったのだった。
「あれが落とし穴作った犯人と追いつめた長義の図」
「あぁ、あの人が……」
「国姫は怪我したんだからもっと怒っていいんだからね?」
「えっと、はい」
後で聞いたが白い刀剣男士の名前は鶴丸国永。
いたずら好きな男士らしい。
彼は結局あの後捕まったのかてるてる坊主のごとく屋根から干されているのを目撃したのだった。
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